岡嶋和幸の「あとで買う」

【1周年記念レビュー】アナログな操作感が魅力のチェキカメラ。富士フイルム「instax mini Evo」

フィルム選びとフォトフレームも楽しむ

2021年5月1日にスタートした本連載ですが、365日休まず更新し無事に1周年を迎えることができました。ネットショップのカートの中にある「あとで買う」を、私はヨドバシ・ドット・コムの「お気に入り商品」やAmazonの「欲しい物リスト」のように、“お買い物リスト”的な使い方もしています。未購入のものだけでなく、リピート購入しているものや、誰かにおすすめしたいものなどいろいろな製品が入っています。

1年を通して本連載で取り上げたものは、すでに愛用しているものが3分の1、取り上げたあとで購入したものが3分の1、まだ購入していない、あるいは購入を見送ったものが残りの3分の1でした。まだ購入していないものの中から欲しいものを1点、皆勤賞として編集部からいただけることになりました。どれにするか迷ったのですが、今一番欲しいものは238点目の富士フイルム「instax mini Evo」です。5カ月遅れのクリスマスプレゼントをありがとうございます。

ハイブリッドタイプで“経済的”なチェキカメラ

デジタルカメラマガジンの連載で14機種のインスタントカメラを使い比べたとき、なかなか上手く撮れなくて大変でした。原因は主に露出なのですが、インスタントフィルムが足りなくなって追加購入したほどです。10枚入りのチェキフィルムだと、販売価格はミニフォーマットが750円前後、スクエアフォーマットは1,000円前後、ワイドフォーマットは1,500円前後です。1枚あたり75〜150円の計算になります。

富士フイルムのinstaxシリーズは失敗が少ない印象ですが、シャッターボタンを押すとすぐにプリントが出てくるアナログタイプより、ハイブリッドタイプの方が有利です。ハイブリッドタイプのラインアップはミニフォーマット対応の2機種だけですが、チェキプリンターを内蔵したデジタルカメラといった感じで、上手く撮れた写真、お気に入りの写真だけを選んで後からプリントできるので経済的です。

装填されているフィルムがモノクロームだと、カラーで撮ってもモノクロ写真になります。撮影だけでなく、いつでもどこでもプリントを楽しめるハイブリッドタイプのinstaxシリーズ。カメラやスマートフォンの中のお気に入りの写真を、外出先で誰かにプレゼントするなどの使い方もできます

ハイブリッドタイプの従来機「instax mini LiPlay」でその魅力を知ったわけですが、デザインがあまり好みではないため購入には至りませんでした。その後登場したのが「instax mini Evo」です。クラシックカメラのような美しいデザインなので欲しくなりました。発売後すぐに人気機種となり入手しづらい状況が続いていますが、今回晴れてユーザーとなりました。

アナログな操作感が良い感じ

実機は見た目の高級感や大きさのわりに手に取るとすごく軽くてびっくりしました。とはいえ安っぽい感じはなく、ダイヤルやレバーを回したときの感触も悪くないです。撮影やプリントが楽しくなるこのアナログ感は良いです。

レンズダイヤルとフィルムダイヤルにはそれぞれ10種類のエフェクトが用意されていて、両方を組み合わせることで100通りの効果が得られます。このカメラの一番の面白さでもあるのですが、RAW現像やフォトレタッチなど後処理で仕上げる習慣が染み付いていて、フィールドでは絵の変化を楽しむ発想や余裕もなく、レンズエフェクトとフィルムエフェクトはどちらもノーマルで撮ってしまいました。プリントするときにエフェクトを選べると、撮影後の楽しみも広がってうれしいと思いました。

スマートフォンアプリが用意されていて、Bluetoothでinstax mini Evoとの接続が可能です。プリントした画像をチェキフィルム風にデータ化してスマートフォンに保存できるので、SNSで共有するなどWeb上でも楽しめます。反対にスマートフォンに保存されている画像を送ってプリントすることも可能です。スマートフォン用のチェキプリンターは単体でも販売されていますが、instax mini Evoは撮影だけでなくプリントする楽しみも味わえて、ハイブリッドタイプとしての魅力を実感しました。

アプリの画面。「DIRECT PRINT」でプリントする画像を選択します。編集画面では拡大縮小、回転の他、フィルターでモノトーンやセピアにしたり、明るさ、コントラスト、彩度の調整もできます。画面上にフィルムの残り枚数が「4/10」と表示されています
アプリのプレビュー画面では、使用するチェキフィルムのフレームまでは反映されません。プリントボタンを押すとデータが送信されプリントが始まります。ボタンを押してからプリントが完全に送り出されるまでの時間は約20秒。その後ゆっくりと時間をかけて像が浮かび上がってきます
再生メニューの「プリント画像転送」にプリント済みのチェキフィルム風の画像が表示されます。必要な画像を選んで転送すると「TRANSFERRED IMAGES」に表示されます。縦長の画像なので、正方形で背景色を付けるなどSNSにアップするための編集を行ったり、ここからもう一度プリントすることも可能です

お気に入りの写真を、フォトフレームに

お気に入りのチェキフィルムは「コンタクトシート」と「モノクローム」、そして新しく登場した「ストーングレー」です。1枚ずつフィルムを変えられないので、あらかじめこの写真はこのフィルムと決めておいて、10枚連続してプリントするといった計画性も大事です。

コンタクトシート。一番好きなチェキフィルムで、ブラックのフレームは画面が引き締まって色が映えます。ベタ焼き風の文字も雰囲気があって素敵な感じです。モノクロ版も欲しいです
モノクローム。柔らかく滑らかなモノトーンが好印象です。コントラストは控えめな感じです。次はレンズエフェクトの「ビネット」との組み合わせも試してみようと思います
ストーングレー。メタリックシルバーのフレームは、質感が1枚1枚違っていて味があります。個性が強めなのでプリントする写真を選ぶ感じですが、とても格好良い雰囲気に仕上がります

347点目のチェキフィルム「コンタクトシート」のときに、Amazonベーシックのinstax用フォトフレームを紹介しました。今回は私の写真集『風と土』の収録作品から8点を選び、スマートフォン経由でプリントしてみたのですが、オリジナルとは違った味のある仕上がりです。

興味がある人には現物を見てもらいたいので、東京・小伝馬町にあるアイアイエーギャラリーで「岡嶋クラス会 Vol.12」という写真展が開催中なのですが、そこでフォトスクールの生徒さんの作品と一緒に展示してあります(https://iiagallery.com/exhibition/okajima12/)。私は個展があるので東京・目黒のジャムフォトギャラリーにいるのですが、どちらも気軽に遊びに来ていただければと思います。

1967年、福岡県生まれ。東京写真専門学校卒業。スタジオアシスタント、写真家助手を経てフリーランスとなる。作品発表のほか、セミナー講師やフォトコンテスト審査員など活動の範囲は多岐にわたる。写真集「風と土」(インプレス)など、著書多数。主な写真展に「ディングルの光と風」(富士フイルムフォトサロン)、「潮彩」(ペンタックスフォーラム)、「学校へ行こう! ミャンマー・インレー湖の子どもたち」(キヤノンギャラリー)、「九十九里」(エプソンイメージングギャラリー エプサイト)、「風と土」(ソニーイメージングギャラリー)、「海のほとり」(エプサイトギャラリー)などがある。