中井精也のエンジョイ鉄道ライフ「ジョイテツ!」

ゆる鉄探訪 第17回「栃木県の鉄道」

新幹線あり、SLあり、LRT開業も楽しみなエリア!

わたらせ渓谷鐵道は群馬県を走るイメージですが、足尾銅山をふくめた末端区間は栃木県なんです。そのなかでも旅情たっぷりなのが、終着駅の間藤駅付近。周囲には銅山に関連する建造物が多く残り、今は観光路線として有名なこの路線が、かつては鉱山運搬のための鉄道であったことを実感することができます。1980年代にはじめて訪ねたときは、鉱毒で草木が枯れ丸裸だった山々も、美しい新緑で覆われるようになりました。その美しさに、時代の流れを強く感じました。(わたらせ渓谷鐵道 間藤駅付近)
ソニーα1/FE 70-200mm F2.8 GM OSS II/絞り優先オート(152mm・F2.8・1/1,600秒)/ISO 400/WB:日陰 [Google Maps]

僕のオススメの鉄道撮影地をご紹介する「ゆる鉄探訪」。県単位のエリアで、複数の路線をまたいで撮影地をご紹介しています。

栃木県はいわゆる絶景ポイントと呼ばれるような、壮大な風景と鉄道を気軽に撮影できる撮影地は少ない印象ですが、蒸気機関車が走る鉄道が2社もあるなど、鉄ちゃん的には見どころは多くなっています。今後は宇都宮に新たにLRT「ライトライン」が開業するなど、ますます魅力的になりそう。今回は僕が大好きな鉄道撮影地をご紹介しちゃいましょう!

東北新幹線 那須塩原〜新白河

ソニーα9/FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS + 2X Teleconverter/絞り優先オート(564mm・F11・1/2,000秒)/ISO 1600/WB:太陽光

一直線に伸びる東北新幹線をお手軽に撮影できるポイント。跨線橋から金網越しの撮影になりますが、望遠レンズで絞りを開放にすれば、金網越しでもほとんど気になりません。上下方向どちらも撮影でき、この作品は青森方向を向いて、上りの新幹線を撮影したもの。架線柱だらけですが、作例のように顔にかからない構図にすることもできるので、繊細なフレーミングで撮影したいところです。


ソニーα1/FE 85mm F1.4 GM/マニュアル露出(85mm・F1.4・1/20秒)/ISO 12800/WB:オート

この場所は夜の撮影もオススメ。新幹線の強烈なヘッドライトや光る線路が、異次元に迷い込んだような幻想的な世界を見せてくれます。こちらは東京方面を向いて、上り列車を撮影したもの。パンタグラフが激しいスパークを起こし、列車の尾灯が線路を赤く染めて、高規格な新幹線なのに、旅情を感じさせる一枚になりました。

烏山線 滝駅付近

ソニーα1/FE 24-70mm F2.8 GM/絞り優先オート(41mm・F8・1/800秒)/ISO 800/WB:太陽光

日本にさまざまな鉄道撮影地があれど、これだけ立派な滝と列車を撮れるポイントはここしかないでしょう。ここは那珂川に注ぐ江川にかかる「龍門の滝」で、高さ約20m、幅約65mを誇る立派な滝です。滝の上に烏山線の線路が走っていて、大迫力の滝と列車をからめて撮影することができます。滝の左右、さまざまな場所から撮影できますが、夏は線路脇の草が生い茂るため、滝に向かって左岸の高い位置から撮影するのがオススメです。列車と道路が並行しているため、運が悪いとトラックなどが写ってしまうこともあります。

真岡鐵道 北真岡〜西田井

ソニーα7R II/FE 24-70mm F2.8 GM/絞り優先オート(105mmクロップ・F2.8・1/2,500秒)/ISO 200/WB:日陰

「SLもおか号」が走ることで知られる真岡鐵道の、春のハイライトはこちら。見渡す限りの菜の花畑と、桜並木が続く風景は、日本を代表する鉄道名景のひとつと言えるでしょう。

桜と菜の花を両立させようと、上下半々の構図にすることで、列車が真ん中に来てしまう「日の丸構図」に近くなりがち。ここでは桜並木よりも菜の花をメインとして、SLを左上に置く構図にしてみました。

真岡鐵道 天矢場〜茂木

ニコンDf/AF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VR/絞り優先オート(22mm・F4・1/320秒)/ISO 200/WB:晴天日陰

真岡鐵道の終着駅である茂木駅の近くにある「道の駅もてぎ」と、併設する「十石河川公園」付近では、桜並木や花壇、鯉のぼりなど、さまざまな季節に撮影を楽しむことができます。SLの通過時には道の駅の利用客が大勢見物するため、サービスで煙を出すことが多いのも嬉しいところ。ここでも花壇をもっと入れたくなる衝動を抑えて(笑)、列車が構図の真ん中ラインにこないように気をつけました。こういうシーンではどうしても構図内に人が入ってしまうもの。あまり神経質にならずに、魅力的な被写体と捉えて、どんどん画面に入れちゃいましょう。

東武日光線 下小代〜板荷

ソニーα1/FE 16-35mm F2.8 GM/絞り優先オート(35mm・F9・1/500秒)/ISO 1600/WB:日陰

ふだん通勤で使っている電車も、ずっと乗り続けていれば、こんな風光明媚な風景の中を走るんです。ここは東武日光線の山間を走る区間。行川橋りょう付近は撮影しやすい築堤になっており、手前の田んぼを入れた構図にすると、季節感たっぷりの鉄道風景写真にすることができます。東武鉄道の新型特急「スペーシアX」がデビューしたら、ぜひ狙いたいポイントですね。

東武鬼怒川線 大谷向〜大桑

ソニーα1/FE 16-35mm F2.8 GM/絞り優先オート(26mm・F8・1/500秒)/ISO 1600/WB:日陰

こちらは東武鉄道が運行するSL観光列車、「SL大樹」号の撮影に最適なポイント。「倉ケ崎SL花畑」と名付けられた観光スポットになっており、季節ごとに咲くお花とSLをからめて撮影できます。

注目すべきは、電柱の位置。この写真を見ると、SLの手前に電柱がかかっていませんよね。実は東武鬼怒川線のほかの区間は、電車を走らせるための架線を支える電柱が「門型」になっており、どうしても列車の手前に建つ電柱がSLにかかってしまうんです。でもここだけはなんとSLの見物客のために、東武鉄道がわざわざ車両に電柱がかからない片側タイプに変更!さすが大手私鉄、東武鉄道!

SLの乗務員さんたちも、鉄道ファンやギャラリーに笑顔で手を振ってくれたり、汽笛や煙をサービスしてくれたりととにかく親切で、おもてなしの心をひしひしと感じ、嬉しくなります。


ソニーα1/FE 24mm F1.4 GM/マニュアル露出(24mm・F1.6・1/500秒)/ISO 12800/WB:太陽光

さらに冬期には青色LEDによるライトアップが施され、幻想的な風景になります。SLの運行を地元の活性化につなげようと、花畑の整備やライトアップをする地元の人たちや企業の大変な努力と、毎日のようにSLを運行する東武鉄道のおもてなしの心があいまって、日光・鬼怒川エリアはますます魅力的な観光地になった気がします。ぜひ全国のローカル線のモデルケースになってほしいなぁと、実感しました。

東武鬼怒川線 新高徳〜小佐越

ソニーα7R V/FE 24-70mm F2.8 GM II/絞り優先オート(25mm・F8・1/640秒)/ISO 640/WB:太陽光

こちらはSL大樹をアップで撮影する定番ポイント。登り坂になっているので、煙も期待できます。国道121号の歩道から、安全に撮影できるのも嬉しいところです。

冒頭に「絶景が少ない」な〜んて書きましたが、こうしてみると勇壮な滝や、菜の花と桜並木のコラボレーション、幻想的な夜汽車の風景など、栃木県でしか撮影できないような絶景がたくさんありましたね。LRTが開業したら、ますます魅力的になる栃木県の鉄道、もう目が離せません。

中井精也からのお知らせ

ゆる鉄画廊NOMAD開催情報

・第25回ゆる鉄画廊NOMAD栃木もてぎ

鉄道写真家中井精也の写真作品を展示販売するギャラリー&ショップ「ゆる鉄画廊NOMAD」。今回は、7月14日(金)〜17日(月)に、栃木県茂木町にある茂木町まちなか文化会館「ふみの森もてぎ」にてゆる鉄画廊NOMAD栃木もてぎを開催いたします。

期間中は毎日、中井精也は在廊いたします。今回のゆる鉄探訪でご紹介した栃木県にゆかりのある鉄道風景や開催地である茂木町に関連のある鉄道風景を中心に中井精也の代表作までたくさん展示いたします。ぜひ来てね♡

詳細が決まりましたら、1日1鉄!ブログでご案内いたします。

<日時>
7月14日(金):13時〜18時
7月15日(土):10時〜18時
7月16日(日):10時〜18時
7月17日(月・祝):10時〜16時

会場:ふみの森もてぎ
〒321-3531
栃木県芳賀郡茂木町大字茂木1720番地1

<1日1鉄!ブログ>
https://ameblo.jp/seiya-nakai/

<ゆる鉄画廊NOMADホームページ>
https://garou.ichitetsu.com/

<ふみの森もてぎ>
https://fuminomori.jp/

今後のNOMAD案内

・ゆる鉄画廊NOMAD京都亀岡
8月10日(木)〜13日(日)予定
会場:道の駅亀岡ガレリア
※翌日9/14(月)に写真教室開催予定

・ゆる鉄画廊NOMAD清里
9月2日(土)、3日(日)予定
会場:清里フォトアートミュージアム

・ゆる鉄画廊NOMAD金沢
9月8日(金)〜10日(日)予定
会場:Gallery souvin
※翌日9月11日(月)に写真教室開催予定

これ以外にも、様々な場所でNOMADを計画しておりますので、詳細が決まりましたらご案内いたします。皆様の街へ「ゆる鉄画廊NOMAD」は出張いたしますので、近くに来た際には、ぜひお越しくださいね。

今だけ!「第7弾ゆる鉄画廊コンビニエンス」

大好評の月限定作品の販売が開始しました! 今回は最新作品の他に、スイスや中国など海外の機関限定作品もあります。絶景風景を中心にセレクトしました。ぜひぜひ♡ この機会にぜひプリント・額装してお部屋に飾ってね。これまでの絵柄は、通常通りプリントできます。期間限定は、今回登場した10枚です。絵柄は今後も増えていく予定です。

ゆる鉄画廊コンビニエンスは、eプリントサービスにて、全国のコンビニに設置してあるマルチコピー機で鉄道写真家中井精也の作品をプリントできるサービスです。プリント絵柄や操作方法に関しては、リンクからご覧ください。

<eプリントサービス>
https://www.e-printservice.net/content_detail/yurutetsugarou

写真紙L版:400円
写真紙2L版:800円

※ねこ鉄はランダムプリントになります。
※一部店舗ではご利用できない場合があります。
※2L判プリントはセブン-イレブンでは取り扱いがございません。

中井精也

1967年、東京生まれ。鉄道の車両だけにこだわらず、鉄道にかかわるすべてのものを被写体として独自の視点で鉄道を撮影し、「1日1鉄!」や「ゆる鉄」など新しい鉄道写真のジャンルを生み出した。2004年春から毎日1枚必ず鉄道写真を撮影するブログ「1日1鉄!」を継続中。広告、雑誌写真の撮影のほか、講演やテレビ出演など幅広く活動している。全国を旅しながら自身の作品を販売する「ゆる鉄画廊NOMAD」を展開中。テレビレギュラー番組に「中井精也のてつたび!/NHK BSプレミアム」、「ヒルナンデス!/日本テレビ系列」、「にっぽん鉄道写真の旅/BS-TBS」などがある。https://ameblo.jp/seiya-nakai/