中井精也のエンジョイ鉄道ライフ「ジョイテツ!」

ゆる鉄探訪 第2回「わたらせ渓谷鐵道」

駅舎もフォトジェニック! 景観豊かな路線の見どころ紹介

栃木県に入り原向駅の先の鉄橋を渡ると、景色は足尾銅山の風景に一変します。鉱山施設や炭鉱住宅も健在で、まるでタイムスリップしたかのよう。ただ、列車と炭鉱の雰囲気をからめて撮影できる場所は少なく、この場所は終点の炭鉱跡が広がる間藤駅を見下ろせる貴重なポイントです。この写真は左側の新緑を主題にしていますが、カメラを右に振ると足尾銅山の面影を色濃く残す街並みや鉱山跡を入れた構図で撮影することもできます。
ソニーα1 FE 70-200mm F2.8 GM OSS II(152mm)絞り優先オート(F2.8、1/1,600秒)ISO 400 WB:日陰 [Google Maps]

僕が大好きなゆる鉄路線をご紹介する「ゆる鉄探訪」。路線の撮影ポイントや見どころのほか、僕がその路線で撮影したBEST SHOTもご紹介します。

第2回は群馬県と栃木県を走る、わたらせ渓谷鐵道。両毛線の桐生駅から間藤駅に至る44.1kmの第三セクター路線で、もともとは足尾銅山で産出された鉱石輸送のために建設された国鉄足尾線でした。

渡良瀬川上流の深い渓谷に分け入ってゆく車窓風景は絶景で、駅舎などに国鉄時代の面影が色濃く残されているため、被写体や風景のバラエティーに富んだ、フォトジェニックな路線なのです。

ライカSL APO-VARIO-ELMARIT-SL F2.8-4/90-280mm(201mm)マニュアル露出(F3.5、1/1,250秒)ISO 200 WB:曇天

最初にご紹介するのは、ボリュームたっぷりの桜並木と列車を撮影できるポイント。高低差のある桜並木の間に線路があるので、4月上旬に桜が満開になると、さまざまな構図で狙うことができます。まずは下側の桜だけに絞って、画面いっぱいに桜を入れた構図で。あえてかなり遠くに列車を配置することで、桜の存在感を強調してみました。

ソニーα9 FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS(200mm)絞り優先オート(F5.6、1/320秒)ISO 400 WB:日陰

ほぼ同じ場所から、上下に桜並木を入れて近景を撮影したもの。このボリューム感、凄いでしょ? よく見ると、画面右下に電柱が写ってしまっていますが、実はこれがポイント。この電柱を無理矢理カットすると、列車が大きくなりすぎるうえに、桜のボリューム感がそがれてしまうんですね。つまりこの電柱は、この風景の魅力を伝えるための「必要悪」なんですね。この必要悪を許せるかどうかは、ケースバイケースの判断になりますが、その判断が的確にできるかどうかが、構図づくりの極意のひとつなのかもしれません。

ソニーα9 FE 24-70mm F2.8 GM(31mm)絞り優先オート(F2.8、1/16,000秒)ISO 1600 WB:日陰

こちらは上神梅駅。足尾線開通当時に建設された木造駅舎は、なんと1912年(大正元年)製。110年前の駅舎が現存しているだけでも凄いのに、窓枠がアルミサッシなどに改築されておらず、ほぼほぼ当時の面影を残しているのは驚きです。とにかくフォトジェニックなこの駅。列車が来ない時間でも撮影できますので、ぜひ立ち寄ってみてね。

ソニーα9 FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS(259mm)マニュアル露出(F5.6、0.4秒)ISO 12800 WB:太陽光

わたらせ渓谷鐵道には桜の名所がたくさんありますが、この中野駅の桜並木もその一つ。国道から少し奥まったところに駅があるのと、構図が限られてしまうこともあり、知る人ぞ知る名所的な存在ですが、なかなかのボリュームを誇っています。

こちらは日没後に撮影したカット。ブルーモーメントに青く染まる桜に、去りゆく列車のテールライトを添えて、旅情たっぷりの作品に仕上げてみました。ちなみに駅に温泉があることで有名な水沼駅にも、駅構内に桜並木があります。

ソニーα1 FE 70-200mm F2.8 GM OSS II(70mm)マニュアル露出(F4、1/4,000秒)ISO 800 WB:太陽光
ニコンDf AF-S NIKKOR 70-200mm f/4G ED VR(100mm)絞り優先オート(F4.5、1/400秒)ISO 500 WB:晴天

ここは線路を超える道路から手軽に撮影できるポイント。渡良瀬川の絶景と列車をからめて撮影することができます。一枚目のカットは桐生方向を望んで、二枚目は間藤方向を撮影した作品です。川沿いギリギリのところを走る、わたらせ渓谷鐵道らしい風景を、簡単に撮れるオススメの場所と言えるでしょう。隣の神戸駅で上下列車がすれ違うことが多いので、2カットを効率よく撮影できるのも魅力です。最近は線路際の草が伸びているので、草が生い茂る夏は避けたほうが良いかもしれません。

ソニーα9 FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS(198mm)絞り優先オート(F5.6、1/640秒)ISO 400 WB:太陽光

さきほどの橋の上から見た風景を、さらに高い位置から俯瞰撮影するポイント。この桜は廃校になった小学校の桜で、まだ木造駅舎も健在。作例のように、建物を入れた構図にするのもいいでしょう。国道の歩道から安全に撮影できるほか、すぐ近くに駐車スペースもあるので安心です。

ソニーα9 FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS(107mm)絞り優先オート(F5、1/320秒)ISO 200 WB:太陽光

神戸駅と書いて、「こうべ」ではなく「ごうど」と読む難読駅。駅のまわりに桜やハナモモの並木があり、さまざまな構図で撮影を楽しむことができます。駅には古い車両を使った食堂があるほか、満開の時期に合わせてお祭りも開催されるため、たくさんの人で賑わいます。お祭りはコロナ禍で中止になることもありますので、確認のうえ訪ねてくださいね。

ソニーα1 FE 70-200mm F2.8 GM OSS II(135mm)絞り優先オート(F7.1、1/2,500秒)ISO 800 WB:日陰

渡良瀬川を渡る鉄橋と列車を撮影できるポイント。草木ダムに近い位置なので、川幅も広く、ダイナミックな川の風景を狙えます。運がいいと水鏡になり、幻想的な風景になることもあるそうなので、穏やかな日に狙ってみるのもいいかもしれません。

ソニーα1 FE 135mm F1.8 GM (135mm)マニュアル露出(F1.8、1/3秒)ISO 6400 WB:蛍光灯

わたらせ渓谷鐵道のベストショットはこちら。最初にご紹介した大間々〜上神梅の桜並木で、夜に撮影した作品です。ここはライトアップなどはされないのですが、列車のヘッドライトが幻想的に桜を浮かび上がらせてくれました。あえて列車が見えないギリギリのタイミングを選ぶことで、桜の存在感を強調するとともに、期待感を演出してみました!

中井精也からのお知らせ

ゆる鉄画廊NOMAD広島

鉄道写真家中井精也の作品を展示・販売するギャラリー&ショップ「ゆる鉄画廊NOMAD」が広島のエディオン蔦屋家電にて開催されます。中国地方にゆかりのある路線、特に広電など広島の鉄道を中心に展示いたします。

その他にも、NOMADでしか買えないグッズや書籍などを販売いたします。入場無料です。さらに開催期間中は、スペシャルトークショーや写真教室も開催!ご参加お待ちしております!

期間:2022年3月15日(火)〜21日(月)
会場:広島エディオン蔦屋家電2F
時間:10時〜20時(最終日のみ17時閉業)

【開催情報】ゆる鉄画廊NOMAD広島
https://ameblo.jp/seiya-nakai/entry-12728422308.html

ゆる鉄画廊NOMAD公式HP
https://garou.ichitetsu.com/

中井精也

1967年、東京生まれ。鉄道の車両だけにこだわらず、鉄道にかかわるすべてのものを被写体として独自の視点で鉄道を撮影し、「1日1鉄!」や「ゆる鉄」など新しい鉄道写真のジャンルを生み出した。2004年春から毎日1枚必ず鉄道写真を撮影するブログ「1日1鉄!」を継続中。広告、雑誌写真の撮影のほか、講演やテレビ出演など幅広く活動している。全国を旅しながら自身の作品を販売する「ゆる鉄画廊NOMAD」を展開中。テレビレギュラー番組に「中井精也のてつたび!/NHK BSプレミアム」、「ヒルナンデス!/日本テレビ系列」、「にっぽん鉄道写真の旅/BS-TBS」などがある。https://ameblo.jp/seiya-nakai/