赤城耕一の「アカギカメラ」
第65回:百花繚乱ミラーレスEOS。アカギはどれを選ぶべきか?
2023年3月5日 09:00
前回のLUMIX S5IIに続いて、今回も2代目、すなわちMark IIのモデルを取り上げます。選んだのはEOS R6 Mark II。だって、初代モデルの登場からさほど時間が経たないうちにモデルチェンジしたわけですから、なんだかLUMIX S5IIと境遇が似ているし。
あまり時間を経ずに後継機が登場すると、初代を購入された方は気が気ではないですよね。「そんなことはない、後継機が登場したことで前モデルは値下がりするから買いやすくなっていい」と考えてしまう人は賢いオトナな人ですから、この先はお読みにならなくても大丈夫です。
もう少々、LUMIX S5IIを話をしておけばですね。筆者の場合は現時点ではなんとか初代からの買い替えを我慢しております。初代のS5のポテンシャルでも筆者の小商い撮影にはさほど問題はないことがわかったからです。S5IIは像面位相差AFを採用し、よりAFのスピードや精度が向上しておりますが、これは動画撮影を完璧にやりますよという方には間違いなくおすすめのモデルです。
筆者の場合は35mmフルサイズでの動画撮影というのは、まだかなりハードルが高いわけです。むしろマイクロフォーサーズフォーマットのLUMIX Gシリーズに像面位相差AFを搭載していただけると、これは静止画でも動画でも強力なカメラになるのでは予想しており、間違いなく導入せねばならない候補となりそうです。したがって現れるのかどうかもわからないキミをもう少し待つことにしました。ええ勝手に待っているだけですから気にされませんように。
すみません、最初から脱線しとりますが本題です。キヤノンEOS R6 Mark IIですね。
まずは外観です。外観のデザインは初代R6と筆者には見分けがつかないくらいであります。Mark IIであることはエンブレムで判断しちゃいます。初代モデルを持っている方はエンブレムにパーマセルテープを貼っておけば、「旧モデルを使っているヤツ」として、EOS仲間に会ってもいじめられることはないと思います。ええ、EOS仲間はそんなこと言いませんね。はい。
ちなみに筆者は前モデルのEOS R6は導入せず、R5を選びました。この理由はですね、画素数の差などではありません。デザインです。何度かこの連載でもお話ししておりますが、筆者はカメラ上部にある「モードダイヤル」が嫌いなんですよ。だから、無理をしてEOS R5にお越しいただいたのですが、まったくもって、画素を余らせ無駄使いしています。
読者の皆さんはこのモードダイヤルを頻繁に切り替えて使うんですか? 筆者だけかもしれませんが、撮影モードって、M(マニュアル)とA(絞り優先AE)とP(プログラムAE)があれば今後の人生も間違いなくやっていける自信があります。プログラムシフトの使い方がわかったのは比較的最近のことだという恥を封印しながらも書いておくことにします。だから、ろくに回しもしないダイヤルが上部の一等地にあるのはイヤなわけです。
そんなことはない、被写体が変わるごとに撮影モードを切り替えているぜ、とか、カメラを自分のものにするにはC(カスタム)モードを使いこなすんだぜ、という人もいらっしゃるかもしれません。そういう方はこの先は読まなくても大丈夫です。筆者はCモードに登録をしても何を設定したか忘れてしまうので役立たないだけです。
最初から飛ばして余計なことを書いていますが、モードダイヤルの位置にシャッタースピードダイヤルを採用している富士フイルムのXシリーズなんか、正直それだけで全機種欲しくなります。もちろんシャッタースピードダイヤルだって普段は回す頻度が低いんですけども。
あ、また脱線しかかりましたけどね。EOS R5はモードダイヤルが表に飛び出していなくて、サブ電子ダイヤル2というコマンドダイヤルがボディ上面とツライチになっており、撮影モードは上部の小さなLCDを見ながらボタンとダイヤル操作で切り替えたりできますよね。これだけで開発者と握手したいくらいです。という理由にて、筆者はEOS R6を選ばなかったわけです。
再び脱線したところでEOS R6 Mark IIの話に戻しますと、先に初代R6と対してデザインが変わらねえんじゃね? 的なことを書きましたが、ボディ左袖に気になるものを見つけました。
EOS R6ではボディ上部左側に電源スイッチがありましたが、この円筒形のスタイルはそのままに、EOS R6 Mark IIでは静止画/動画の切り換えスイッチに変更されています。EOS R5の電源スイッチも同じ位置にありましたので、R6 Mark IIを使用し始めた当初は、このスイッチを電源スイッチと間違えて頻繁に切り替えてしまい、静止画撮影しているつもりが動画撮影に、その逆ということもたびたび起こりました。いや、年寄りですから覚えることができないだけですが、ちょっとだけ暴れそうになりました。けれど我慢しました。このスイッチ位置の変更は、わずか数年でEOSの動画撮影の比重がかなり高まったから、という見方もできるでしょう。
もちろん好ましい変更点もあり、スティック状のマルチコントローラーの形状が変更されて、グリグリ感が向上し、筆者の親指の腹が喜んでおります。これね、感触とか反応など、なかなか数字で示せない部分なのでバカにしたものではないんですぜ。
キーデバイスであるイメージセンサーは変更されてます。R6は35mmフルサイズの約2,010万画素CMOSセンサーでしたが、R6Mark IIでは約2,420万画素CMOSセンサーになり。理屈で言えばより精細になるんでしょうが、筆者には違いがよくわかりません。2,400万画素って、今はスタンダードな画素数という印象なので、これでいいかなとは思います。
ただね、気になるのは本機よりも画素数の多いEOS一眼レフのEOS 5D Mark IVよりも解像性能がいいんだぜ的なアナウンスがキヤノンからあることですね、そうなんですか? 両者のユーザーの方、見分けつきます? 画像処理エンジンがDIGIC Xになったので、それとの組み合わせで画質が向上したってことですよね。
当然のようにR6 Mark IIはボディ内手ブレ補正機構を搭載しています。例によって、レンズもIS(手ブレ補正機構)搭載のものを組み合わせると協調制御で補正され、一部のレンズにおいては最大でシャッター速度8段分の手ブレ補正効果を得ることができるわけです。
筆者なんか、これだけでも最新のEOS R8より何としても頑張ってお金を貯めてR6 Mark IIを選ぶべきではないかと考えるわけです。お値段はたしかに違いますが、R8はボディ内手ブレ補正が内蔵されていませんからねえ。これがどうしても引っかかります。
いや、正直に申し上げると、ボディ内手ブレ補正が必要な理由はですね、毎度お話をしておりますが、筆者は貧しいため多種のRFレンズをいまだに購入できておらず、手元に長年使用してきたEFマウントレンズゴロゴロとございまして、これらのレンズをなんとかEOS Rシリーズにおいても活用したいということなのであります。
ボディ内手ブレ補正だけでも効果はかなり期待はできますからねえ。本当はIS内蔵のEFレンズでも、軽くファームアップで協調補正できるようにできるんじゃないのかあ。ちがいますか? キヤノンの優秀なエンジニアの方? あ、いけません、また余計なことを書いてしまいました。
じゃあ使い心地はどうなのさ、ということで例のごとくEOS R6 Mark IIを街に持ち出しましたよ。AFは被写体検出機能があります。「人物」「動物優先」「乗り物優先」という目的のジャンルの被写体を検出するモードだけでなく、これら全てのジャンルから対応する被写体を自動で検出する「自動」もあります。
もうね、困りましたね。測距点も自動選択のフルオートで撮影すると、おい、なぜキミはオレがフォーカスを合わせたいところがわかるのか? というくらいの精度で、こちらが考える理想的な箇所を選んできます。
うーむ。これはちょっとやりすぎなんじゃないかというくらいなんですわ。マルチコントローラーでAFポイントをグリグリ動かさなくてもいいんじゃねえのと思うくらいなんです。さっきの感触の話はどこに行ったんだよって。もちろん、モノゴトには完璧ということはないので、ぜんぶの撮影条件でOKなのかよと言われると困るんですけどね。
これまで仕事現場で周囲のスタッフがいる時にはわざと難しい顔をして、フォーカスを決めてきたのに、ラクして撮影しちゃってることがバレてしまうと威厳が損なわれそうです。嘘です。もともと威厳なんてないのですが、こういう優れたカメラであることがわかれば、撮影時に周辺のスタッフに向けてのパフォーマンスが効かなくなるだけで、最悪の場合、本職のカメラマンに頼まなくてもなんとかなるぜ的な状況を作り出してしまい、またしても仕事が減る可能性があります。
これらのAF性能の向上は前回取り上げたLUMIX S5IIと同様に、動画撮影時のアドバンテージを高めるということにも強く繋がるので、先の電源スイッチの位置関係の変更などからも見てとれる通り、動画撮影に比重が置かれているカメラと考えた方がわかりやすいのではないかと思います。
で、結局、アカギはどうするのだ? EOS R6 Mark IIを導入するのかよ? と言われると困るなあ。
発表されたばかりのEOS R8ですが、立ち位置的にEOS RPをベースにしていることもあり、筆者はこのデザインは嫌いではなくて、むしろR6 Mark IIよりも好みです。RPの色違いのモデルが出た時も導入を悩んだくらいですからねえ。ボディ上部のダイヤル配置もほぼ同じで好みです。ええ、つまらないことにこだわります。
ただボディ内手ブレ補正が非搭載なので。EFレンズのヘビーユーザーである筆者としてはR8が導入の候補からは落ちます。
さらにタイミングが悪いなあと思うのは、筆者がずっと愛用していた一眼レフのEOS Kissシリーズに代わって、RシリーズのエントリーモデルとしてEOS R50が近々に登場することです。フォーマットはAPS-Cですが、筆者にはフォーマットのこだわりがありません。
R50は現時点では少し触ったくらいなのですが、これはお仕事カメラについて小型軽量至上主義である筆者のハートを射抜きました。筆者の好きな白い色もあるし。モードダイヤルも許される位置関係です。連続撮影時のバッファに余裕があれば、アサインメントにも使えるはず。AFもこれまで培った機能がブラッシュアップされているでしょうし。さすがにボディ内手ブレ補正を入れろとまでは申しませんよ。
EOS R6 Mark IIは確かに仕事に使う道具としては理想的というか、このカメラで撮影をしくじる場面って、ほとんどないんじゃね? というくらいのスキのなさを感じるわけです。仕事がもっとあれば間違いなくお越しいただいてますね、モードダイヤルのデザインを我慢してでも。
それにしてもさすがのキヤノンです。まだ「フラッグシップ」機は登場していないけど、ハイエンドからエントリーまで、ラインアップにツッコミどころがありません。
ただ、なんと言いましょうか、キヤノンのRシリーズはハイエンド機よりもミドルクラスとかエントリー機の方に色気を感じるのです。ミドルクラスにも所有する楽しみを強く感じさせてくれよ、という希望もあります。
それにしてもカメラの選択に悩むほど種類があるって、システムの充実と将来的な発展に希望が持てるからこそ言えることで、ここにキヤノンの、EOSシリーズの底力を感じ取ることができるわけです。