熱田護の「500GP-Plus」

第12回:2020年最終戦アブダビGP(後編)

EOS-1D X Mark III EF400mm F2.8L III USM+EF2× III(F13・1/500秒)ISO 800

今回は2020年の最終戦アブダビGPの後半です。アブダビはWアブダビ ヤス アイランドホテルというフォトジェニックなアイコンと共に、夕陽が撮れるサーキットとして大好きなコースとして前回紹介しました。

実は夕陽が沈んでいき、斜光になった時間帯、その光と走行するマシンの角度が反射角になるところがあって、複雑な形のフォーミュラカーの造形を美しく浮き彫りにしてくれます。毎年のように撮るのですが、ほとんど雲も出ないようなアブダビでも夕陽の強さに強弱があり、狙った強さに輝いてくれるかどうかは微妙に違います。

今回は中の上くらいかな?

EOS-1D X Mark III EF400mm F2.8L Ⅲ(F2.8・1/3,200秒)ISO 100

レース後に行われたテストで走行したフェルナンド・アロンソ選手。2021年に復帰するための練習ですね。見事にトップタイムを叩き出して、その存在感を示してくれました!

この場所は、本番のレースの3日間の走行時間では、この光では撮影できません。それもあって、この時間はここで撮るということを日本にいるときから決めていました。後ろが黒く落ちているのは、大きなグランドスタンドで、太陽がちょうど真上にあります。ここから5分もすると、太陽がグランドスタンドの後ろに落ちて光らなくなってしまいます。

そのギリギリのタイミングでアロンソ選手が走ってきてくれて、本当に良かった!

EOS-1D X Mark III EF400mm F2.8L Ⅲ+EF2× III(F8・1/800秒)ISO 640

F1マシンの後ろ姿は、どの年代も大好きです。でも、実際には雑誌などではあまり使ってくれないんですよね。

それでも僕は、好きな写真を撮りたいからそのサーキットに通っているので、割り切る時は割り切って、好きなように撮ることにしています。

EOS-1D X Mark III EF85mm F1.4L USM(F10・1/2,500秒)ISO 2000

この場所には、レース走行時に行こうと決めていました。なぜなら、後ろのお客さんは日曜日が一番多いだろうと考えたから。でも見ての通り、大切で綺麗な太陽はどんどん沈んでいきます。

1コーナーでスタートと2ラップほど撮り、ダッシュしてここまで来ました。ゼイゼイしながら金網に開いている穴を覗いてみると、太陽が沈むギリギリです!

そこで、僕が大好きな85mmの単焦点を付けて挑みました。この場所は車速がとっても速い右コーナー。しかも左からやってくるマシンは直前まで全く見えません。

流し撮りをしてしまうと、後ろにいるお客さんのシルエットが溶けてしまうので、速いシャッタースピードを切らねばなりません。おそらく時速200km以上は出ていると思います。そんな状況で選んだ設定は正解だったと思います。シャッター速度は1/2,500秒でも背景がわずかにブレています。ピントはマニュアルで置きピン、F10くらいの被写界深度が欲しかったので感度をISO 2000に設定しました。ちなみに太陽は3ラップくらいで沈んでしまいました。

EOS-1D X Mark III EF85mm F1.4L USM(F1.4・1/800秒)ISO 100

スタート前に行われる国歌斉唱の待ち時間。ジョージ・ラッセル選手(左)とシャルル・ルクレール選手が談笑していました。

今後のF1を牽引することになるであろう、才能溢れる2人の若きドライバー。

EOS-1D X Mark III EF11-24mm F4L USM(F5.6・1/640秒)ISO 2500

最終戦の恒例行事になりつつある、チェッカー後のドーナツターン。メルセデスの2人がやってくれました。圧倒的な速さを発揮してチャンピオンを獲得したハミルトン選手。

今回優勝したフェルスタッペン選手は、このドーナツには参加せず普通にパルクフェルメに入ってしまって、ちょっとがっかりでした。

EOS-1D X Mark III EF35mm F1.4L USM(F2・1/640秒)ISO 100

2021年シーズン、いよいよ待ちに待った日本人ドライバーが誕生します! 角田裕毅選手は20歳です! アルファタウリチームからの参戦。PU(エンジン)はもちろんホンダです。

期待は大いに持てると思います。ぜひ、日本人として応援をお願いします。

EOS-1D X Mark III EF400mm F2.8L III USM(F20・1/60秒)ISO 100

角田選手は昨年のF2選手権に参戦していて、年間ランキング3位になりました。F2参戦初年度で大活躍した結果、FIAルーキー・オブ・ザ・イヤー、アンソニー・ユベール・アワード、ピレリ・F2ドライバー・オブ・ザ・イヤーと大きな賞を獲得。レース界から大きな期待も寄せられています。

F1での活躍が今から楽しみです!

EOS-1D X Mark III EF85mm F1.4L USM(F1.4・1/2,500秒)ISO 200

テストにはもう一人、日本人ドライバーが出ていました。名前は佐藤万璃音選手。角田選手とも小さな時からゴーカートで戦っていた仲で、今シーズンもF2選手権に参戦予定です。こちらも活躍に期待したいですね。

EOS-1D X Mark III EF85mm F1.4L USM(F8・1/2,500秒)ISO 200

アブダビGPのスタートシーン。グランドスタンドにお客さんはいません。

無観客でのレースが大半だった昨シーズンのF1。発表されている今年のスケジュールでは、全23レースとなっています。しかし、世界的に新型コロナウイルスの勢いが衰えている印象はなく、今シーズンが一体どのような形態で開催されるのか依然不透明です。僕の取材スケジュールも、昨年と同じく確定できない状況です。

角田選手のデビューイヤー、そしてホンダ参戦のラストイヤー。F1の写真を撮りに行きたいです!

本当に、本当に、行きたい!

熱田護

(あつた まもる)1963年、三重県鈴鹿市生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業。85年ヴェガ インターナショナルに入社。坪内隆直氏に師事し、2輪世界GPを転戦。92年よりフリーランスとしてF1をはじめとするモータースポーツや市販車の撮影を行う。 広告のほか、雑誌「カーグラフィック」(カーグラフィック社)、「Number」(文藝春秋)、「デジタルカメラマガジン」(インプレス)などに作品を発表している。2019年にF1取材500戦をまとめた写真集『500GP』(インプレス)を発行。日本レース写真家協会(JRPA)会員、日本スポーツ写真協会(JSPA)会員。