熱田護の「500GP-Plus」
第5回:2004年 佐藤琢磨選手とシューマッハ選手
2020年9月1日 06:00
世界の3大モーターレースというのがあります。F1のモナコGP、WECのル・マン24時間レース、そしてインディアナポリス500マイルレース(通称、インディ500)。前回は佐藤琢磨選手について書きましたが、なんとその佐藤琢磨選手がインディ500で優勝しました!
今回で2回目、もちろんそのインディ500で勝ったことのある日本人は佐藤琢磨選手しかいません! もうこれこそ快挙です! くどいですけど、もう信じられないような偉業です。
僕個人的には、国民栄誉賞と人間国宝を同時にあげたいくらいです。琢磨選手は、43歳。現役最年長です。おじさんの希望、星、目標。世界中のプロドライバーが夢見て、苦労して3大レースに参加しているチームのシートを手に入れたとしても、各カテゴリー、1年、1人ずつしか勝てないわけです。しかも道具を使うスポーツなので、勝てる体制の整ったトップチームで走らなければなりません。
用意周到に準備をして、ライバルに睨みを利かせ、チームとの連携を完璧に取りレースに挑み、さらに運も味方につけて最大の集中力を保ったままチェッカーを目指し、やっと手に入れる事ができる栄冠です。そんな事を2度も達成できるドライバーが日本人だという奇跡に感謝したいし、心の底から嬉しい。本当にたいしたもんです。
ミハエル・シューマッハ選手
2004年のシーズンは、このミハエル・シューマッハ選手の圧倒的な速さに誰も追従できなかった年。全18戦のうち13戦の優勝という圧勝。5年連続、7度目のチャンピオン獲得。
連戦連勝、またシューマッハだ……。というようなレースが続いていました。どんなスポーツでもそうかもしれませんが、スーパースターの才能を存分にみてみたいという憧れは誰しもが抱きます。
しかし、偉大な才能を持った選手がそのカテゴリーで1人だった場合、人気を独り占めし勝ち続けた結果、その競技自体にマンネリ感が徐々に大きくなって「最近のF1はつまらないなあ……」という声が聞こえてくるのです。
人というのは身勝手なものですが、切磋琢磨し誰が勝つかわからないようなレースを見てみたいと思うのは僕も同じ。理想を言えば、そんな偉大な才能を持った選手がもう1人いて、この当時のフェラーリと同等の速さを持ったマシンに乗っていたら、これほど面白いことはないのですが、そんな奇跡のようなことは起こらないものですね。
マシンを降り、ヘルメットを取り、すぐさまエンジニアとマシンの挙動について話し合う。勝利に向けて、どこまでも妥協なく追求する姿勢がチームを動かし、その結果自分のマシンが速くなる。ドライバーの仕事はただ速く走るだけでなく、その情熱をチーム全体に行き渡らせて強くすること。
ブラジル、インテルラゴス・サーキットの最終コーナー。はるか向こうにあるコーナーをバックに少し流し撮り。
ベルギーGP、スパ・フランコルシャン。シューマッハ選手の実家にもっとも近いサーキットで、このコースを得意としていて楽しみにもしていました。この年も優勝し、記者会見の後にピットビルの3Fにあるプレスルームを出ると、眼下には大勢のファンがシューマッハ選手が出てくるのを待っている状況。
きっと、ここに立つに違いないと予想し、長い間待ち続け、予想通り目の前に立ってくれた。でもストロボのチャージが遅く、良いタイミングで発光しなかったカットを、画像の破綻しないギリギリの感じで補正してみました。
シューマッハ選手の両手。話している時の手の動きは、ファインダーで見ると、とても速い。
フェラーリの赤いテントの下にある、ブリヂストンタイヤとBBSホイール。両方日本のメーカー。懐かしいなあ。