熱田護の「500GP-Plus」
第3回:1992年 セナ、ベルガー、ハッキネン、ハーバート
2020年8月1日 09:00
アイルトン・セナ選手。
今でも絶大な人気のドライバーで、彼をきっかけにF1を見るようになったというファンも多いと思います。僕も、撮影のフィールドをオートバイからF1に移し、彼の雰囲気とスピードに惚れ込んでセナ選手中心の撮影を開始したのが、全戦取材のはじまりとなる1992年でした。
この写真は、今回ポジフィルムのスリーブの中から発掘しました。マシンから降りたばかりで、顎に無線機のケーブルの跡が残っています。
セッションスタート前、コックピットでステアリングに手を添えるセナ選手。
モナコGP、マンセル選手との接戦を制して劇的な優勝を遂げたセナ選手。僕は初モナコで、表彰台への道に迷って出遅れ、息を切らしてだどり着いたらこの光景でした。一緒にいるのは、弟のレオナルド・セナさん。
ハンガリーGPのパドック、マクラーレンチームのホスピタリティーに姿をみせたセナ選手。
ちょうど日が差していて、そのシチュエーションに興奮して連写していたら、僕のシャッター音が耳に入ったらしく、びっくりしたような表情で目が合いました。打ち合わせを邪魔してすみません……。確か、フィルム3本くらい撮影したと思います。
バックミラーに映るその目はいつも真剣で、少し神経質にも見える表情が多かった記憶があります。
汗を含んだヘルメットを乾かしている場面。今こんなことをしたら、あっという間に盗まれるかも……。
ハンガリーGPの表彰台。左のナイジェル・マンセル選手は、圧倒的な速さを見せつけてこの年に9勝。このハンガリーで初タイトルを手にしました。セナ選手は3勝でランキング4位。右のゲルハルト・ベルガー選手は2勝、ランキングは5位でした。
表彰台の写真は報道的な要素が大きいけれど、こうして昔を振り返る時には表情も含めて「いいなぁ」と思えるものです。
"スローシャッターで流し撮り"という手法を取るのは今も昔も変わらないけれど、その場所でどんな流れ方をするのか、露出も含めた結果は、日本に帰国してフィルムが現像から上がってくるまで分からないわけです。
ですから、レンズと被写体との距離とシャッタースピードで「多分こんなブレになる」というトライアンドエラーを繰り返して、自分の中に蓄積したデータを引っ張り出しつつ、最後は勘で撮影をするしかなかったんですね。
レース後のベルガー選手のマクラーレン・ホンダ。白いはずのノーズが真っ黒に。
長いレースの中で、前を走るマシンから出たオイルで汚れます。走り終えたという証で、いいじゃないですか! 近年では、オイルを消費するような内燃機関ではレギュレーション違反となってしまいます……。
「緑の中を走り抜けていく、真っ赤なマクラーレン」
百恵ちゃんのプレイバック Part 2を歌いながら撮っていたかは覚えてませんが、そんな気持ちにさせてくれる写真です。
今はなき、名門ロータスチーム。ミカ・ハッキネン選手のフル参戦1年目。
イギリスの小さなサーキットで行われたコマーシャル撮影での1コマ。ドライバーは、ジョニー・ハーバート選手。カメラカーからクレーンで小さな箱に乗り込み、横に出してもらって並走撮影。真下を近距離で走るというミラクル。
僕が乗っている箱は上下左右にビュンビュン揺れて撮りやすくはなかったけれど、トライできたのは良かった!かな。
イギリスGP、シルバーストーン・サーキット。
以前使っていたガレージは天井に明かり取り用の小窓があって、奥にいるドライバーに上から光が当たっています。
スネッタートン・サーキットでのコマーシャル撮影の時、夕方、ガードレールわきで寝ながら撮影したカット。冬の寒い時期だったので、路面の陽炎の影響もなくクリアな空気で撮れたのが良かった。
8月3日追記:記事初出時に「ジョニー・ハーバード選手」と記載していましたが、「ジョニー・ハーバート選手」に改めました。