熱田護の「500GP-Plus」
第2回:1992年 ジャン・アレジと日本人ドライバー
2020年7月15日 06:00
F1デビュー4年目、フェラーリに移籍して2年目。フランスGPのセッション後、うまく走らないマシンに苛立つアレジ選手に、ニキ・ラウダさんが言葉をかける場面。選手が上半身裸になるということも時代を感じさせます。
カナダ・モントリオールのジル・ビルヌーブ・サーキットは、公園の中にあって雰囲気が良い。広角レンズ&スローシャッターで流し撮りをする面白さを発見したのが、このカット。翌年からはもっとスローシャッターにして、木抜けスロー流し撮りの完成度を徐々に高めていきました。
初めてのモナコグランプリ。夢のような景色の中、F1が走るというコース脇は、歩けば歩くだけ絵になるポイントの連続。真俯瞰で走行する姿を狙える場所はトンネルの出口にありました。このコースの最高速で現れるマシンにレンズの振りを合わせるのは、難しすぎて、楽しすぎる!
ベルギーGPにて、若きアレジ選手。絵になるドライバーというのは、それだけでありがたい存在。
手前の赤い前ボケは、ガレージ前に置いてあるマシンのカウルの赤。"フェラーリレッド"と呼ばれるけれど、その赤は毎年のように微妙に変化しています。
光というのは、国によって、季節によって、気候によって変化します。1996年までは、このポルトガルのエストリル・サーキットでF1の開催がありました。
ここの光は、宝石のようにキラキラと透明度が高く、透き通っている。厚い雲の中から必ず現れると信じて待った1枚。
走行後、水をがぶ飲みする鈴木亜久里選手。耐火アンダーウェアではなくTシャツなのが男らしい。この当時は、ガレージの中で写真を撮るのも比較的自由でした。
絵になる男というのは、それだけで写真に力が出ます。
東芝、マルボロ、フットワーク、takaQというスポンサーの顔ぶれは懐かしいし、レーシングスーツに刺繍やワッペンを施していたのもいいですよね。今は印刷だから……。
ドライバーがマシンに乗り込む所作は、カメラマンにとっても大事な時間。その一挙手一投足は、全てが絵になります。
1992年からF1のフル参戦を開始した片山右京選手。鈴木亜久里選手がクールでカッコよくて近寄り難い感じなのに対して、右京選手は僕と同じ歳というのもあるし、フレンドリーで冗談を言い合えるような感じ。
ハンガリーGPの予備予選は早朝でした。斜光で狙える美味しい時間、大好きな時間。
モナコGP、トンネル前のポルティエ・コーナー。今はこの位置から撮れないし、その先の海は埋め立てられて違う景色になっています。
伝統のコースも、背景やコースレイアウトが時代によってどんどん変化します。好きな場所があったら、その時に必ず納得のいく写真を残せるようにしなければ、後悔することになってしまう。
イモラ・サーキットの夕陽は綺麗でした。
イタリアという国、パスタは超絶美味しいし、景色や建物も素晴らしいし、女子は可愛い。しかし、泥棒はウジャウジャいます。カメラマンにとってカメラ機材は命の次に重要。毎年のように、セキュリティがしっかりとしていそうなプレスルームでカメラの盗難が起こるのは、イタリア……。是非ご注意ください!