特集

2016年「私はこれを買いました!」(第1回)

伊藤浩一・澤村徹・秋山薫・大浦タケシ

2016年を締めくくるにあたり、本誌のレビュー系記事にご寄稿いただいた皆様および本誌編集者に、今年新品で購入したデジタルカメラ、レンズのうち、特に思い入れのある製品について語っていただきました。(順不同、敬称略)

オールドレンズユーザーに垂涎の手ブレ補正機構 さらなるレンズ沼へ

ソニーα7 II/伊藤浩一

ソニーα7を購入したのが、発売日の2013年11月15日。3年間使い倒している間に、増えていったオールドレンズは、約160本。

3年間でこんなにレンズが増えてしまったのは、α7ムック本の発売イベントで、写真家の大浦タケシさんと澤村徹さんの「α7でオールドレンズ活用」の講演を聞いてしまったのが運の尽き(失礼!)。楽しい世界を紹介していただいたお2人には感謝しております。

α7は、性能的に特に不満は無かったのですが、翌年の2014年12月5日にリリースされたα7 IIは、ボディ内手ブレ補正というオールドレンズユーザーには垂涎の機能を搭載したため、買い替えをしたいとずっと思っていました。

中古価格もなかなか下がらず悩んでいたところ、いつも利用している中野のフジヤカメラ店にて、「中古よりも新規購入の方が安くなりますよ」と言われて、すぐに購入を決断してしまいました。α7 II新規購入時の下取りキャンペーンを行っており、下取りを利用すれば、中古より安い価格になっていたのです。

2年前に発売されたα7 IIではありますが、オールドレンズのベースボディとしては、最高に使いやすくなりました。F値が暗めのレンズで、シャッター速度を遅くして撮影しても手ブレが抑えられるため、レンズの選択肢が増えてしまう、という嬉しい悲鳴も。さらなるレンズ沼に突入している今日この頃です。

いとうこういち:モバイル情報ブロガー。ブログ「伊藤浩一のWindows Phone応援団」を主宰。ソニーα7を使い始めてオールドレンズに目覚める。デジカメWatchでは、iPhoneとオールドレンズ活用オリンパスAIR関連記事を掲載。

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開放で柔らかく、絞ってキリリ。2度美味しいレンズ

木下光学研究所Kistar 35mm F1.4/澤村徹

Kistar 35mm F1.4は現代の技術を駆使し、あえてオールドレンズテイストを追求した個性派レンズだ。日頃からオールドレンズを使っている身なので、迷わず手に入れた。

開放は滲みをともなう柔らかさがあり、絞るとしっかりとシャープに写る。特に開放F1.4からF2.8にかけての緩急の付き方が大胆だ。1段絞るだけで、それまでふんわりとしていた描写が一気に引き締まる。オールドレンズ好きなら心惹かれる描写だろう。

メーカーによると、この緩急を付けるために非球面レンズを採用したという。オールドレンズテイストとは言え、使える技術を惜しみなく投入しているところが粋だ。

実際に使ってみると、コンパクトさが気に入った。大口径35mmのわりに小ぶりで、ちょっとしたスナップにも気軽に持ち出せる。オールドレンズファンならば、35mm F1.4というスペックからヤシコンのDistagon T* 35mm F1.4を想起するだろう。あのレンズは極めて優秀だが、大口径ポートレートレンズのように大きく、持ち出すのがつい億劫になってしまう。そうした経験があるだけに、Kistar 35mm F1.4のコンパクトサイズは実にありがたい。

描写について、あえてオールドレンズ通っぽく語ってみよう。開放の柔らかさは初期型ズミルックス35mm F1.4、F4以降のシャープさはヤシコンのDistagon T* 35mm F1.4、と言うとさすがに褒めすぎか!? しかし、体感としてはまさにそんな感じなのだ。キャラクターのちがう2本のレンズを1本で味わう、そうした撮影を楽しめるレンズである。

さわむらてつ:写真家・ライター。生まれて初めて、年に2回も海外に撮りに出かけた。澤村史上、稀に見る豪勢な1年だ。来年も海外へ撮りに行けるように、たくさん原稿を書かないと。もしくは、レンズ購入を控えないと。Webサイトはhttp://metalmickey.jp

デジカメドレスアップ主義:昭和のレジェンドレンズが甦る

解像感の高さとシャッター音にしびれた

パナソニックLUMIX GX7 Mark II/秋山薫

編集者には「小さくて精密感のあるカメラ」を好む人が多いようだ。いっぽう、筆者は大柄な機材が好きだった。それが、ここ数年は各種センサーサイズのカメラを試用する機会が多く、小ぶりなカメラもいいな、と思うようになってきた。

そのなかで印象的だったのが、パナソニックLUMIX GX7 Mark II。LEICA DG SUMMILUX 15mm / F1.7 ASPH.の付属する「単焦点ライカDGレンズキット」がとてもカッコよく思えた。

GX7 Mark IIはイメージセンサーがローパスフィルターレス化され、対応レンズ使用時に手ブレ補正機構「Dual I.S」が使用でき、4Kフォト機能やフォトスタイル「L.モノクローム」への対応がなされたモデル。「フォーカス合成」も可能だし、AF性能も向上した。

そして、シャッター機構が低衝撃化を図るために電磁駆動方式に改良された。筆者が気に入っているのは、解像感の高さとこの静かなシャッターの感触だ。バルナックライカと同じくらいのサイズにこれらの機能が詰め込まれているのも痛快だ。

こうしてGX7 Mark IIは筆者の仕事道具に加わった。ちょっとしたブツ撮りもLUMIX G 42.5mm / F1.7 ASPH. / POWER O.I.S.でこなせるし、ボケもきれいだ。

筆者も「小さくて精密感のあるカメラ」のよさにも開眼して、編集者としてもステップアップできたのではないか(妄想)。GX7 Mark IIにはいろいろな場面で活躍してもらうつもりだ。

あきやまかおる:Kindle電子書籍「ぼろフォト解決シリーズ」というカメラ本を多数編集、撮影、執筆しています。いろいろなカメラとレンズに触っているうちに、どの機種もみんな好きになってしまうところが、もっかの幸せな悩みです。

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操作性が洗練され購入 稼働率ナンバー1に

FUJIFILM X-T2/大浦タケシ

今年手に入れたカメラは2つ。FUJIFILM X-T2とキヤノンEOS 5D Mark IV。同じ日に発売されて泡吹いたけど、お店の金利ゼロの言葉に思わず乗っかってしまい、どちらも発売当日手に入れてしまった。もう暫くはカメラ買えません。

今回の“コレ買い”は、X-T2の話をしたいと思う。実は富士フイルムのXシリーズは過去FUJIFILM X100とFUJIFILM X-Pro1を所有したことがあり、どちらも今回同様発売日に手に入れるという熱の入れようであった。

もちろん写りは期待通りの素晴らしいものだったが、まったく馴染めなかったのが、操作性。ユーザーの意向を無視したかのような内容にいずれも大いにガッカリさせられ、遂には早々に手放してしまったのである。

月日が経ち、今年2月このデジカメ Watch編集部からFUJIFILM X-Pro2のレビューを依頼された。数年ぶりに触ったX-Proシリーズであるが、操作性は飛躍的に洗練したものとなり、これならイケると確信。しかし、自分にはハイブリッドビューファインダーよりも光軸上にEVFを備えるFUJIFILM X-T1のほうが撮影スタイルに合っているように思えていたので、同モデルの後継、つまりX-T2の登場を持つことにしたのである。

X-T2は、今や所有するもののなかでもっとも稼働率の高いカメラとなっている。特に取材系の撮影では、これまで35mmフルサイズのデジイチを使っていたが、ほぼ100%取って代わったと言ってよい。

さらに私的な撮影でも持ち出すことが多くなっている。現在カールツァイスも含め6本のXマウントレンズを所有するが、密かに狙っているのが、XF56mmF1.2 R APD。このレンズとX-T2の組み合わせでしっとりとしたポートレート撮ってみたいなぁと妄想している。

おおうらたけし:このところ、2000年前半に発売されたデジタルカメラの中古を集めている。画素数は心細く、液晶モニターもCFのサイズほどしかないが、色々と興味を引く部分は多い。掲載した写真のX-T2の周りを囲んだFinePix S1 Pro、同S2 Pro、同S3 Proもそんな成り行きで手に入れたもの。時折持ち出し、スローな撮影を楽しんでいる。

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(第2回に続きます)