新製品レビュー
FUJIFILM X-Pro2(実写編)
本家の「ACROS」モードなど、より多彩な表現力を搭載
Reported by 大浦タケシ(2016/3/1 08:00)
先般、外観・機能編をお伝えした富士フイルムXシリーズのトップエンド「X-Pro2」。先代「X-Pro1」のコンセプトを踏襲しながらも、キーデバイスおよび操作系に大きく手が入る。イメージセンサーは新開発「X-Trans CMOS III」APS-Cセンサーとし、有効画素数は2,430万。同シリーズとしては初めての2,000万画素越えだ。
「X-Processor Pro」と名付けられた画像処理エンジンも新しく、コマ速は最高8コマ/秒を実現。X-Pro1から進化させた「アドバンストハイブリッドマルチビューファインダー」は236万ドットの有機ELに加え、OVF時には画面右下に小型のEVFを表示させることが可能となった。
さらにAF測距点を直感的に選択できるフォーカスレバーや、フィルムシミュレーションにモノクロの「ACROS」を新たに搭載するなど際立った進化点は多く、機能性および操作性とも飛躍的に向上している。今回は実写編として、そのような本モデルの描写を見ていくことにするが、こちらも大いに期待できそうだ。
遠景で描写チェック
撮影時のカメラの主要な設定は、フィルムシミュレーション:スタンダード(PROVIA)、ホワイトバランス:オート、ダイナミックレンジ設定:100%といずれもデフォルトとしている。使用したレンズは「XF35mmF2 R WR」、絞り値はF8。フォーカシングはAFを使い、AF測距点はビル群の中央付近と重なるものを選択している。撮影時の天候は快晴、大気中の水蒸気は少なくクリアであった。
描写はXシリーズらしい色乗りがよくエッジの効いたメリハリあるものだ。単焦点レンズを用いていることもあるが、シャープネスの高さは圧倒的で文句の無い切れ味である。しかもデジタル処理でエッジをキレキレにしたものと異なり、ナチュラルで違和感の少ないものだ。階調再現性については、ハイライト部およびシャドー部ともよく粘っているように思える。特にハイライト部に関しては、一見白トビしていそうに見えても階調を保持している部分も多い。
作例では若干緑が沈みがちに思えなくもないが、露出や季節的なものによる影響かと思われる。ホワイトバランスも色の偏りなどなくニュートラル。総じて文句ない良好な描写といえるだろう。他メーカーのユーザーのなかには、この描写を見ただけでもXシリーズに興味を抱く人もいるかもしれない。
感度
X-Pro2の感度は、通常でISO200からISO12800まで、拡張でISO100相当のLからISO51200相当のH2まで選択できる。掲載した作例では、L1からH2まで1EVステップで撮影を行っている。なお、高感度ノイズリダクションはデフォルトの「標準」としている。
撮影した画像を見るかぎりISO3200までなら高感度ノイズの発生はさほど気になるレベルはない。カラーノイズ、輝度ノイズともよく抑えている。ただし、解像感についてはISO1600とISO3200を見比べると違いは大きく、後者は恐らく高感度ノイズリダクションの効きが強めになり出したのだろう。そのためX-Pro2本来のキレのよい画像は、ISO1600までと考えてよい。ISO6400以上になるとノイズはあきらかに目立ちはじめ、解像感の低下もより強くなる。H1およびH2はやはり記録用とみなさざるを得ないレベルである。
ノイズの発生とは関係ないが、拡張機能のL1(ISO100相当)とベース感度であるISO200との描写の違いは気になるところである。あくまでも作例を比較した場合であるが、L1のほうが階調の幅が狭く、描写として硬い感じだ。そのことを理解したうえで両感度を使い分けるとよいだろう。もっともベース感度ISO200は、大口径レンズを揃えるシリーズのカメラとしては厳しい。X-Pro2では1/8,000秒となったシャッターの最高速度であるが、明るい屋外で絞りを開きその描写を存分に楽しむには困難なことも少なくない。異論もあるかとは思うが、ベース感度を現状より低くして欲しい。
モノクロ撮影に熱中できる新モード
モノクロフィルムを再現した「ACROS」
フィルムシミュレーションに新たに加わったのが「ACROS(アクロス)」だ。ISO100のモノクロフフィルム「ネオパン100 ACROS」をシミュレートした仕上がりである。メーカーの言葉を借りれば「より滑らかな階調、引き締まった黒、美しい質感再現が特徴。一般的な白黒モードとは一線を画する超高画質な黒白写真表現が可能」ということであるが、実際その言葉に偽りは無い。
ハイライト部からシャドー部までカラー同様よく粘り、豊かな階調再現性を誇る。コントラストなどパラメータの調整も可能としているので、より自分好みに仕上がりを追い込むこともできる。本家本元のネオパン100 ACROSは現行品なので、フィルムカメラを所有しているのであれば、X-Pro2のACROSと撮りくらべてみるのも面白そうである。モノクロ写真を存分に楽しみたいユーザーは注目しておきたいフィルムシミュレーションといえる。
粒状感を演出できるグレイン・エフェクト
「グレイン・エフェクト」は、フィルムの持つ粒状感を再現する機能である。どのフィルムシミュレーションでも使用できるが、特に前述のACROSではモノクロフィルムの風合いにより近づいたように思え効果的。粒状感は「強」と「弱」、2段階から表現意図などに応じて効果が設定できる。
ちなみにACROSのコントラストのパラメータを上げ、グレイン・エフェクトの効果を強にすると、粒子の粗い荒れた風合いの写真がつくりだせる。また、カラーのフィルムシミュレーションでも試してみたが、こちらの雰囲気もよりフィルムライクだ。JPEGフォーマットのみに効果の施せる機能であるが、RAWフォーマットの場合ではカメラ内でRAW現像を行えば再現可能なので、興味のある向きは積極的に使ってみるとよい。
まとめ
色乗りがよくキレのある絵づくりは大いに写真を撮る気にさせるものである。モノクロフィルムをシミュレートしたACROSや、粒状感を付加できるグレイン・エフェクトの搭載などより多彩な表現が楽しめるようになったことも見過ごせない。もちろん操作性の向上も、このカメラをより魅力的なものにしていると述べてよいだろう。Xシリーズの写りのよい単焦点レンズとともに、このカメラで徹底して撮影を楽しんでみたいと思うのは私ばかりではあるまい。
作品集
ピントの合っている部分のエッジのキレは上々。微妙な質感描写も文句のないものである。正確なフレーミングを行いたい場合は、やはりEVFが使いやすい。
明暗差が極端なシーンだが、ハイライト部からシャドー部までよく粘っているように思える。仕上がりは彩度を抑えた「ASTIA」だが、このようなシーンにも適しているように思える。
OVFではシャッターチャンスを見逃したくない撮影で、EVFは正確なアングルでの撮影の場合と使い分けられるのはやはり便利。作例はEVFで撮影を行っている。
OVFでの撮影。小型のEVFが画面右下に表示されるのでピントの状態をリアルタイムに把握でき、失敗を防いでくれる。「Velvia」での撮影のため、秤の赤い針が印象的な画像となった。
ボケの状態を確認したい場合はやっぱりEVFが便利である。シャッター音が比較的静かなのもX-Pro2の特徴で、優れたスナップシューターとして活躍してくれそうである。
赤い和傘と敷布が印象的なシーン。敢えて落ち着いた色調となる「ASTIA」を選択し、控えめで落ち着いた仕上がりを狙ってみた。