特集

2015年「私はこれを買いました!」(第3回)

小山安博・澤村徹・曽根原昇・永山昌克

2015年を締めくくるにあたり、本誌のレビュー系記事にご寄稿いただいた皆様および本誌編集者に、今年新品で購入したデジタルカメラ、レンズのうち、特に思い入れのある製品について語っていただきました。(50音順、敬称略、全4回)

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全天球カメラでは抜きんでた存在

RICOH THETA S/小山安博

2015年に登場したカメラで個人的に注目したのは、普通のカメラではなかった。それがリコーの「THETA S」。全天球画像が撮影できるカメラはいくつかあるが、コンパクトで扱いやすいTHETAは、一歩抜きんでていると思う。

この全天球画像、単にパソコンやスマートフォンで見るだけでなく、いわゆるVR環境で使うと面白い。最近はスマートフォンとセットでのVR環境が整ってきていて、ハコスコのようなお手軽なものから、Gear VRのような高度なものまで色々とある。THETA Sは、個人レベルで作成できる全天球画像撮影の本命カメラと言ってもいいと思う。

THETA S自体は2代目のTHETA m15の上位機種として登場しており、何より高画質化されたことが大きい。THETA m15は欲しいとは思いつつ、画質面で二の足を踏んでいたのだが、IFA 2015で画質を見て、これはもう買うしかないと思って購入した。

実のところ、諸事情があって予約して発売直後に購入とはいかなかったのだが、その結果、なかなか買えなくて苦労した。もともとの出荷数が少ないのに加えて、発売直後の人気もあったのだろう。すぐに完売してしまったからだ。リコーイメージングの直販サイトをチェックして次回入荷日を把握して、それに合わせて家電量販店に行って、「今日2台だけ入荷したばかり」という商品を、ようやくゲットしたのだった。

そしてやはり全天球画像は面白い。単体でシャッターを押せば一発で撮れるし、全天球が撮影されているので、いつもは写ることのない自分も撮れる。高画質化によって拡大しても見やすいし、スマートフォンと繋げれば、露出やISO感度など撮影設定を変更できるようになっているので、結構色んなシーンに対応できる。

使ってみて想像以上に良かったのが動画。1ボタンで静止画と動画の切り替えができるようになり、気軽に動画が撮れるようになった上に、全天球の動画は単純に面白い。あまり長時間撮影すると容量が大きくなり、スマートフォンへの転送が難しくなってくるので、ほどほどが良さそう。

スマートフォンに転送すると、あとは専用アプリでグリグリ360度回転させて閲覧すれば楽しいし、パソコンでも専用ソフトが用意されているので、そちらでも360度画像をグリグリと楽しめる。みんなで見ても楽しいし、撮影したときに気付かなかった背後の状況など、後で色々とわかるのも面白い。新しい写真の楽しみ方だと思う。

スマートフォンに転送した画像はGoogleフォトアプリでバックアップを取っているが、Googleは全天球画像の対応に積極的で、GoogleフォトアプリでもTHETAの画像がそのまま全天球画像として閲覧できる。

これを利用すれば、Chromecastで全天球画像をテレビに表示して閲覧できるのでは、と思ったのだが、Googleフォトアプリからだと、全天球画像をテレビに表示することはできなかった。パソコンのChromeブラウザからならテレビに表示することは可能だったが、これは専用サイト「theta360.com」でも同じなので、あまり意味はない。

そのtheta360.comは、撮影した全天球画像を人に見せたいときに活用するが、アップロードの一手間がある。これも、Googleフォトの自動バックアップ機能ですべての画像がGoogleフォトにアップロードされているので、共有機能を使ってすぐに他人に見せられる。theta360.comの方が動作は快適なので、例えば1日分をまとめて見せたいときと、その都度SNSに掲載したいとき、といった使い分けをすると良さそうだ。

というわけで便利で楽しいカメラなのだが、写真というのが「時間と空間を切り取るもの」という性質上、360度全体を記録してしまうTHETA Sは、撮影の基本を忘れてしまいそうになって、少し後ろめたいような気持ちになってしまう。「瞬間を切り取る」と考えれば、THETA Sもれっきとした写真ではあるが、やはり、普段は普通のカメラと併用するのが一番適切だと思う。

ひとまず最近は、昨年1番の買い物だった「LUMIX DMC-CM1」に加えてTHETA Sもいつも持ち歩いて、さらに楽しいカメラ生活が送れるようになった気がしている。

こやまやすひろ:フリーランスライター。来年はフォトキナイヤーということで、新しい、意欲的なカメラの登場に期待する年末。またそのために貯金を始めなければなりません。

RICOH THETA S

仕事でも大活躍のMFレンズ

Carl Zeiss Loxia 2/50/澤村徹

α7用の仕事レンズがほしい。画質に妥協なく、カメラに付けっぱなしにして気負わずに使えるレンズ。たどり着いたのはツァイスのMFレンズ、Loxia 2/50だった。画質については多くを語るまでもなく、開放からシャープで四隅までしっかりと解像する。カメラ側の補正ではなく、光学性能で高画質を実現している点が良い。

「仕事レンズなのにMF?」と疑問に思うかもしれないが、日頃からオールドレンズばかり使っている身としては、Loxia 2/50はすこぶる便利なレンズだ。MFレンズと言えども電子接点があり、ピントリングを動かすとすぐさま拡大表示に切り替わる。Exif情報にレンズ名や絞り値が反映され、画像管理もスマートだ。

何よりもMFに特化したレンズだけあって、操作フィーリングが抜群である。ピントリングは軽すぎず重すぎず、絶妙なトルク感だ。絞りリングはすべて等間隔の1/3段刻みで、カウントしながら絞ればいちいち手元を見る必要はない。手に良くなじみ、仕事のパートナーとして頼れるレンズだ。

さわむらてつ:2週間、缶詰になって原稿を書いた。晴れてるのに撮りに出かけないと、なぜか罪悪感がわいてくる。その原稿が日の目を見るのは来年1月。いつもとテイストの異なる本です。乞うご期待。

Loxia 2/50

35mmと迷った新SPレンズ 人の視覚に近い45mmをゲット

タムロンSP 45mm F/1.8 Di VC USD/曽根原昇

今年はニコンD810を購入した以外、全然まったく何にもカメラを買わないという暗黒の年になってしまっていたのですが……後半になって突如登場した2本のタムロン初のAF単焦点レンズ(マクロは別としてね)にピーーーン! ときて、手に入れました! SP 45mm F/1.8 Di VC USD。

もちろんD810に合わせるためにニコン用のそれ。キヤノン用とニコン用を同時発売してくれるのは、ニコンボディのユーザーにとってありがたさ満点、しかも手ブレ補正搭載です!

タムロンの新SPレンズ購入にあたっては、たぶん多くの皆さまと同じだと思いますが、焦点距離の35mmと45mm、どちらにするか悩みますよね。僕も同じでした、はい。でもやっぱり手始めには標準レンズが欲しい。さらに、標準レンズには個人的なこだわりがあって、よりヒトの視角に近いといわれる43mm付近がいい。

45mmと50mmでは、正直、ほとんど画角の差はないけど、やっぱり“見た目の意識により近い”という45mmは嬉しいではないですか。そんなわけで苦渋の決断の末、35mmでなく45mmを選びました(ごめんなさい)。

9月19日の発売で、ほとんど発売と同時に手に入れましたこのレンズ。10月にはさっそく海外の作品撮影に持ち出しましたけれども、その結果は……もう! もう! サイコー! いつかはこのレンズで撮ったサイコー! の写真を皆様にご覧いただけたらと、強く強く思う次第であります。

そねはらのぼる:忙しさと怠惰が錯綜して、結局、何が何だかわからないまま終わってしまった2015年。それでも、写真展開催には(マジで)命を燃やして進んでゆく所存でありますので、どうぞ皆さま宜しくお願いいたしまする。

タムロン“新SP”レンズの実力に迫る

電波ワイヤレス対応のストロボが使える小型機

キヤノンEOS M3/永山昌克

私が今年買ったのは、キヤノンEOS M3だ。以前より速くなったがまだ十分とはいえないAFスピードや、撮影直後の液晶ブラックアウトが長いこと、オプションのEVFがかさばること、露出シミュレーションをオフにできないことなど不満点はいくつもある。だから手放しではお勧めできない。特に子どもやペットなど動きものを撮りたい人なら、EOS Kissシリーズのほうが適している。

そんなボヤキをつぶやきながらも、ふだんのスナップ用に結構な頻度で使っているのは、短所を超える長所があるからだ。そのひとつは高画質と小型軽量を両立したこと。EOS 7D Mark IIやEOS 70Dなど上のクラスの一眼レフと同等かそれ以上の画質を半分以下のボディサイズで実現していることは、それだけで選択理由になる。

さらに、電波ワイヤレス対応の純正ストロボが用意されていることや、マウントアダプターを経由して豊富なEF/EF-SレンズがAFで使えること、純正ソフトでもサードパーティソフトでも安定したRAW現像ができることは、他社のミラーレスに勝るメリットだ。

ほかの所有機材と同じく愛着は特にない。来年か再来年、より便利で快適な製品が登場すればあっさり買い替えるだろう。だがその日が来るまでは、旅行や日常の中で狙いどおりの写真が撮れる高機動力のスナップカメラとして、日々大切に酷使したいと思っている。

ながやままさかつ:フォトグラファー。静止画に加えて動画も撮って、という最近増えている依頼仕事に柔軟に対応するため、使い勝手のいい動画カメラを現在物色中。

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(第4回に続きます)

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