デジカメアイテム丼
iPhoneでオールドレンズ撮影を楽しむには
TurtlebackジャケットとDOF for Canon EOSマウントを試す
Reported by 伊藤浩一(2015/9/8 07:00)
昨今のスマートフォンのカメラ機能は大きく進んでおり、写真撮影でスマートフォンを利用するユーザーも多いだろう。さらに、スマートフォンでの写真撮影にて、小型のコンバージョンレンズを付けて、広角撮影やマクロ撮影をする、といった方法も一般的になりつつある。スマートフォン用のコンバージョンレンズが販売されているのを見たことがあるだろう。
このような状況の中、もう一歩進んで、スマートフォンのカメラ機能を利用する方法がある。一眼レフの交換レンズを付けて撮影する方法である。
もちろんスマートフォンには、交換レンズをマウントはできない。そこで、iPhone用ジャケットと交換レンズ用のマウントを搭載したアダプターを組み合わせて、スマートフォンと交換レンズを一体化させる商品がリリースされている。Turtlebackの「iPhone6/6Plus/5/5s対応 コンバージョンレンズ用ジャケット」と「DOF for Canon EOSマウント」だ。今回はこの商品を利用して、iPhone 6 Plusと各種交換レンズを使用して撮影する方法を紹介する。
iPhoneにEFレンズを装着するまで
「iPhone6/6Plus/5/5s対応 コンバージョンレンズ用ジャケット」は、可動式のアダプターを内蔵しており、画面サイズが4〜5.5インチ程度のスマートフォンを装着することができる。ただし、パナソニックLUMIX CM1のようなレンズ部分が飛び出したスマートフォンでは利用不可となる。
使用方法としては、スマートフォンを装着した後に、ジャケットのボルトを緩めることで、レンズ接続部分のカメラ位置を調整する。レンズ接続部分は、37mmネジ対応となっており、15mm変換アダプタも付属しているので、15mm径のレンズを直接装着することも可能だ。三脚穴や水平方向の水準器も内蔵しており、ジャケットを装着時の写真撮影がしやすいように工夫がされている。
続いて、「DOF for Canon EOSマウント」の紹介だ。この製品は、本体内に一眼レフ用のフォーカシングスクリーンを内蔵しており、交換レンズを通して、このフォーカシングスクリーンに像を映し出す。そして、その像をスマートフォンのカメラにて撮影する、という仕組みになっている。マウントはキヤノンEFマウント。電子接点はないため、絞り開放のみで撮影することになる。また、各種マウントアダプターを併用することで、EFマウント以外のレンズの利用も可能だ。
ジャケットとの接続部分は37mm径となっており、これを「iPhone6/6Plus/5/5s対応 コンバージョンレンズ用ジャケット」を装着する。
「iPhone6/6Plus/5/5s対応 コンバージョンレンズ用ジャケット」に「DOF for Canon EOSマウント」を装着し、さらに何らかの交換レンズを装着することで、セッティングは終了する。
なお、フォーカシングスクリーンの方向が平行にならない場合は、パーツを緩めることで、フォーカシングスクリーンの調整が可能だ。
使い方と撮影のコツ
すべてを装着してスマートフォンのカメラアプリを起動すると、撮影が可能になる。注意点としては、レンズを通した像をそのままカメラアプリで撮影するため、カメラアプリに表示される像は上下が反転している。この反転した像を元に戻す「TurtleHead」カメラアプリを利用すると撮影しやすい。
撮影方法としては、交換レンズのピントリングを操作して撮影するが、ある程度ピントを合わると、その後は、スマホカメラのAFで合焦し、撮影できる。
なお、画角は35mm判換算で焦点距離1.5倍のAPS-Cサイズ相当となる。
撮影したデータは、カメラアプリで撮影しているため、通常のiPhoneで撮影した写真と同じように扱うことができる。
なお、iPhone 6 Plusを使用した場合は、装着サイズがギリギリとなり、電源ボタンにアクセスしにくくなる。解決策としては、iPhone 6 Plusの「設定」>「一般」>「アクセシビリティ」で「Assistive Touch」をオンに。その後は画面上に表示されるAssistive Touchから「デバイス」>「画面をロック」をタップすることで、サスペンド操作が可能になる。
ジャケットに装着した状態で、写真データを転送する簡単な方法としては、サンディスクのメモリードライブ「iXpand」を利用する方法もある。Lightningジャックに挿すだけで、写真データがメモリ上に自動同期されるため、パソコンなどで利用しやすい。
撮影データを見ると、中央は解像するものの、周辺は流れ気味で、トイカメラのような効果になる。周辺減光も目立つ。
また、フォーカシングスクリーンをカメラアプリで撮影するため、明るいシーンを撮影した場合、フォーカシングスクリーンの面が写ってしまう場合がある。さらにフォーカシングスクリーンにゴミがあると、写り込んでしまう場合もあるため、あらかじめブロワーなどでゴミを除去しておくことが必要だ。
フォーカシングスクリーンはキヤノンの一眼レフカメラ用「Eg-S」を使っているため、壊れたり汚れたりしたら、同等品に交換することが可能だ。
なお使っていると、ジャケットとカメラ部分の隙間より、光が漏れるようなシーンもあった。気になる場合は、スマートフォンのカメラとジャケットの接している部分を黒いテープなどでマスキングするといいだろう。
作例
作例として、マウントの違う3本のレンズを利用した。スマートフォンとしては、iPhone 6 Plusを使用した。
キヤノンEF50mm F1.8 II(1990年発売)
DOFはこのレンズを使用して開発された経緯があり、使いやすい組み合わせだ。
利用時は、開放F1.8のみの利用となる。オーバーインフ気味(無限遠側に遊びがあること)になっており、無限遠での撮影も問題ない。
NIKKOR-S Auto 55mm F1.2(Type 2)(1966年発売)
DOFへのマウントは、ニコンF-キヤノンEFマウントアダプターを利用した。このレンズには、絞りリングがあるため、絞りの操作は可能だ。F1.2の開放にて撮影。
まとめ:オールドレンズ好きにとって新しい撮影体験
各種レンズを使用した感想としては、「楽しい」の一言に尽きる。iPhone 6 Plus単独では撮影できないような写真撮影が体験できる。また、普段、一眼レフやミラーレスカメラで使用している交換レンズをiPhoneで使えるだけで、楽しくなってくる。
もちろん、フォーカシングスクリーンをカメラアプリで撮影するというDOFの仕組み上、一眼レフカメラやミラーレスカメラのような解像度は期待してはいけない。また、周辺は大きく流れてしまうため、レンズ本来のポテンシャルは発揮できない。それでも交換レンズの特徴が出た写真となり、個性的な描写が可能だ。
iPhoneと交換レンズやオールドレンズを組み合わせる意味はどこにあるだろうか。iPhoneの写真アプリで加工することで、オールドレンズの描写に似たような写真にすることは可能だ。しかしながら、レンズ毎にある味をiPhoneと組み合わせることができるのは、レンズを所有するカメラユーザーにとっては、大きなメリットとなるだろう。また、iPhoneのカメラ機能は優秀で、速いAFに加え、HDR機能や露出補正機能など持っているため、オールドレンズでフットワーク良く撮影ができる。
最大のメリットは通信機能だろう。撮影したデータをすぐにSNSなどで共有が可能だ。一眼レフカメラやミラーレスカメラでも内蔵の無線LAN機能を利用すること、スマートフォンへのアップロードからSNSへの投稿は可能だが、iPhoneで完結した方が使い勝手は良い。オールドレンズで撮影した写真をネットですぐに共有する、という新しい体験となる。
スナップ。turtleback, iPhone 6 plus, Kodak Anastigmat 84mm F6.9。
Posted by伊藤 浩一on 2015年8月24日
スナップ。iPhone 6 plus, NIKKOR 55mm, turtleback。
Posted by伊藤 浩一on 2015年8月23日
次期機種の噂も出ているiPhoneだが、今回の製品は5.5インチサイズ程度のスマートフォンまで対応しているため、iPhone 6 Plus以下のサイズであれば、利用できる可能性がある。今後も、iPhoneとオールドレンズの組み合わせで撮影を試していきたい。