特別企画
縮小光学系アダプターのベストバイを探る
APS-C機でフルサイズ相当の撮影を実現。3製品を撮り比べ
Reported by澤村徹(2014/4/16 08:00)
昨今、フォーカルレデューサーアダプターが盛況だ。マウントアダプターに縮小光学系と呼ばれる補正レンズを内蔵し、APS-C機で35mmフルサイズ相当の撮影を実現する。マイクロフォーサーズ用なら焦点距離1.4倍程度での撮影が可能だ。すでにオールドレンズファンにはおなじみの製品と言えるだろう。メタボーンズのSpeed Boosterがその先駆者で、Lens Turbo、RJ Camera、キポンのBaveyesなど、現在は様々なマウントアダプターメーカーからフォーカルレデューサーアダプターが登場している。
しかしながら、選択肢が増えた一方でメーカーによって価格差があり、どれを選べばよいのか悩ましいところだ。本稿では主要フォーカルレデューサーアダプターで撮り比べを行い、画質と価格の両面から、ベストバイを探ってみたい。
今回撮り比べで使用するのは、メタボーンズのSpeed Booster、キポンのBaveyes、そしてRJ Camera製フォーカルレデューサーアダプターの3種類だ。はじめに各製品の特徴を見ていこう。
今回の試写製品
- Metabones Speed Booster
- Kipon Baveyes
- RJ Camera製フォーカルレデューサーアダプター
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価格帯は1万円台後半から5万円前後まで
メタボーンズのSpeed Boosterはフォーカルレデューサーアダプターの先駆けとなった製品だ。ボディ側マウントはソニーEマウント、富士フイルムXマウント、マイクロフォーサーズマウントをラインナップ。動画向けにBMCC(ブラックマジックシネマカメラ)とBMPCC(ブラックマジックポケットシネマカメラ)対応製品も用意している。
レンズ側のマウントは、キヤノンEF、ヤシコン、ライカR、キヤノンFDといったオーソドックスなものに加え、アルパ、コンタレックスのようなマニアックなマウントにも対応する。キヤノンEFマウントにいたっては、電子端子付きでボディ側で絞りとAFの制御が可能だ。レデューサーレンズは米国Caldwell Photographic社製のものを採用し、スチル撮影用は4群4枚構成だ。装着したレンズの焦点距離が0.71倍になり、集光効果によって約1段分明るく撮影できる。
キポンのBaveyesはCP+2014で国内初お目見えとなった製品だ。ボディ側マウントはソニーEマウントと富士フイルムXマウントを採用。レンズ側マウントはキヤノンEF、ライカR、M42、ニコンF、アルパをラインナップする。レデューサーレンズはキポンのレンズブランドHANDEVISIONと同様、ドイツのIB/E OPTICS社が担当している。3群4枚構成で、装着したレンズの焦点距離が0.7倍になり、APS-C機でフルサイズ相当の撮影が可能だ。価格はおよそ3万円で、Speed Boosterが5万円前後であることを思うと、値頃感のある価格帯だ。
RJ Camera製フォーカルレデューサーアダプターはmuk selectで取り扱いがある。ボディ側マウントはソニーEマウントとマイクロフォーサーズマウントで、レンズ側はキヤノンEF、キヤノンFD、M42、ニコンF、ミノルタSR/MD、ペンタックスK、ヤシコンなど、かなり多彩なラインナップだ。レデューサーレンズはソニーEマウント用が0.72倍、マイクロフォーサーズ用が0.71倍だ。価格は1万円後半で、この手の製品としてはきわめて安価である。
このように現在のフォーカルレデューサーアダプターは約0.7倍のレデューサーレンズを搭載し、APS-C用でフルサイズ相当、マイクロフォーサーズ用は焦点距離約1.4倍での撮影が可能だ。この仕様は各社ともほぼ共通である。一方、価格に大きな開きがあり、この価格差が何を意味するのか、購入予定の人には気になるところだろう。すぐに思い至るのが「価格の差は画質の差」といった関係だが、果たして推測通りか否か、このあたりを実写テストで検証してみよう。
画質検証。周辺部に差あり
実写はEマウントとマイクロフォーサーズマウントで行った。EマウントはソニーNEX-5、マイクロフォーサーズマウントはOLYMPUS PEN E-P3を用意し、各社のフォーカルレデューサーアダプターを装着した。参考用の35mmフルサイズ撮影はソニーα7を用いている。
レンズは広角と標準でテストした。広角はヤシカ/コンタックスマウントのディスタゴンT* 18mm F4、標準は同じくヤシカ/コンタックスマウントのプラナーT* 50mm F1.7だ。なお、フォーカルレデューサーアダプターはキヤノンEFマウントのものを選び、レイクォールのCY-EOSマウントアダプターを組み合わせてレンズ装着している(一部ヤシコンマウントのフォーカルレデューサーアダプターも使用)。
まず広角レンズの実写から見ていこう。撮影環境は逆光条件で、F8まで絞って撮影している。Speed Booster、Baveyes、RJ Cameraの三者に共通しているのは、逆光条件だと色がかなり褪せてしまう点だ。ただし、フレアやゴーストは最小限に抑えられ、中心部のシャープさもα7によるフルサイズ撮影と遜色がない。NEX-5のBaveyesのみ解像感がすぐれないが、これはマウントアダプターの二段重ねによって無限遠にわずかに届いていないためだ。中近距離では十分にシャープな画像だったことを付記しておく。
顕著にちがいがあらわれたのは、周辺部の像の流れだ。Speed Boosterがもっとも流れが少なく、Baveyes、RJ Cameraの順に流れが増えていく。ただし、マイクロフォーサーズでSpeed BoosterとRJ Cameraを比べると、どちらも像の流れはない。マイクロフォーサーズは周辺部をクロップすることになるため、画質劣化した部分が目立たないわけだ。
標準レンズの実写は、半逆光でF4まで絞っている。どのフォーカルレデューサーアダプターでも合焦部はシャープな描き方で、ボケのテイストもフルサイズ撮影の画像と大きなちがいはない。広角レンズと比べ、性能差が目立たない撮影結果だ。細かい部分では、Speed Boosterはコントラストがわずかに強めで、Baveyesはニュートラルな印象を受ける。この点も子細に確認してわかる程度で、ざっと見るぶんにはちがいがわからないだろう。
実写サンプル
- ・作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
- ・縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
・広角レンズによる実写テスト
・標準レンズによる実写テスト
価格の差は画質の差
筆者はSpeed Boosterの登場以降、様々なフォーカルレデューサーアダプターを使ってきた。今回のテストとこれまでの経験を踏まえて言うと、やはり「価格の差は画質の差」という関係が成り立つ。良いレンズを搭載しているから高い、というわけだ。APS-C機のユーザーで特に広角レンズをメインで使うなら、周辺画質が安定しているSpeed Boosterがお薦めと言える。
一方、マイクロフォーサーズユーザーは広角レンズを付けても画質劣化が目立たないため、安価なフォーカルレデューサーアダプターでも満足が得られるだろう。また、標準および望遠レンズを付けた場合も画質の差が小さく、製品グレードをさほど気にせずに済みそうだ。フォーカルレデューサーアダプターの選択は、マスターレンズの焦点距離がポイントと言えるだろう。