特別企画

人気写真家が撮る・語る パナソニックLUMIX GX7の魅力

第4回:萩原史郎 with LUMIX G X VARIO 12-35mm/F2.8 ASPH.POWER O.I.S.他

パナソニックのミラーレスカメラ上級機「LUMIX DMC-GX7」を使い、さまざまな写真家が作品を撮り下ろすこの企画。作品とあわせて、GX7の魅力についても語ってもらいます。

第4回は自然風景写真家として活躍されている、萩原史郎さんの登場です。テーマは「桜」。計4本のレンズを駆使した、多彩な桜の世界をご堪能ください。(編集部)

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第1回:赤城耕一 with LUMIX G 20mm F1.7 II ASPH.」
第2回:永山昌克 with LUMIX G VARIO 14-140mm/F3.5-5.6 ASPH./POWER O.I.S.」
第3回:吉住志穂 with LEICA DG SUMMILUX 25mm/F1.4・LEICA DG MACRO-ELMARIT 45mm/F2.8
第5回:ハービー・山口 with LEICA DG SUMMILUX 15mm/F1.7・LEICA DG NOCTICRON 42.5mm/F1.2

写真のレンズは左から、LUMIX G VARIO 7-14mm/F4.0 ASPH.、LUMIX G X VARIO 12-35mm/F2.8 ASPH.POWER O.I.S.(GX7ボディに装着)、LUMIX G X VARIO 35-100mm/F2.8 ASPH.POWER O.I.S.、LEICA DG MACRO-ELMARIT 45mm/F2.8 ASPH./MEGA O.I.S.

 風景写真家の立場からいえば、カメラとレンズに求めるものは、2つあります。1つは高画質で、風景の隅々まで克明かつ美しく描写するためには必須の性能です。

 この高画質は、高い解像力と豊かな諧調、そして低ノイズ性能の3つが三位一体となって得られるものだと考えますが、これはデジタルカメラの黎明期から長足の進化を遂げ、いまや多くのカメラが満足できるレベルに到達しています。

 2つ目はサイズです。軽量コンパクト性能と言い換えてもよいでしょう。

 風景写真家は、長い道のりを歩いて目的地に向かうことが多いのですが、その時、いかに機材を軽くするかということは重要な課題です。道中での身体への負担を減らし、目的地で集中力を欠かさずに撮影し、さらに往復の行程を安全に過ごすためには、いかに持って行く機材を必要最小限に絞り込むかは極めて重要なのです。

 ところが、あのレンズを持っていけば目の前の風景が撮れたのに……という後悔をしたくないために、結局使いもしないレンズまで持っていって、へとへとになるということはよくある話です。

 こうした大事な性能であるにも関わらず、目覚しい画質の進化の一方で、カメラボディや交換レンズにおけるサイズの進化は、ゆるやかなスピードでしか進まなかった印象があります。ところが近年、ミラーレス構造のカメラが登場して以降は、この問題も解消しつつあります。

 中でもLUMIX Gシリーズは高画質と軽量コンパクト性能を兼ね備えたミラーレスカメラの代表格といってよい存在だと思います。

 さらに豊富なレンズは、ボディに最適化したサイズと高画質を融合しているため、“カメラシステム”として軽量コンパクトが実現できます。LUMIX Gシリーズと専用交換レンズの組み合わせは、風景撮影には最適というわけです。

満開の桜の花園から空を見上げ、7mm(35mm判換算14mm)で撮影。超広角域のワイド感が生きて、あたかも桜に埋もれているかのようなイメージを作ることが出来ています。画面の四隅を見ても、像の流れや色ずれは少なく、高品位な画質が得られているため、画像全体が美しく感じられると思います。DMC-GX7 LUMIX G VARIO 7-14mm/F4.0 ASPH. F8 1/400 -0.3EV ISO200 WB:オート 7mm

 今回使ったLUMIX DMC-GX7(以下GX7)も、風景撮影用カメラとして期待に違わぬ活躍をしてくれました。

 まずコンパクトなので小型のザックに入り、総重量や容量を抑えることができたことに好感が持てました。これこそ風景写真家として求めている性能の1つです。

 さらに高性能なEVFのおかげで従来から慣れ親しんだファインダーを駆使した撮影スタイルができ、撮影のリズムを崩さず撮影ができたことは大きな成果となりました。

 またグリップが大きいため、しっかり握れて手持ち撮影がしやすかったこともメリットに感じました。風景撮影は三脚使用が前提のように思われていますが、アングルが自由にとれる手持ち撮影のメリットは計り知れません。ミラーレス構造を採用したコンパクトなカメラはとかくグリップ性能が劣ることがままありますが、GX7ではそういったデメリットは感じませんでした。

 もちろん画質も良く、撮りたかった風景の魅力を細大漏らさず伝えることができたことは、表現者としてはこの上ない喜びです。

朝日が稜線をオレンジ色に染め始めたタイミングに12mm(35mm換算24mm)で撮影。レンズの強力な手ブレ補正機能のおかげで、こんな時間帯でも安心して手持ち撮影ができるのは強みの1つ。画面の隅々まで高品位な画質が保たれているので、高画質が特徴のGX7とのコンビで使いたいレンズです。DMC-GX7 LUMIX G X VARIO 12-35mm/F2.8 ASPH.POWER O.I.S. F8 1/200 ±0EV ISO200 WB:オート 12mm

 風景写真というジャンルは、幅広い被写体が特徴です。スケールの大きな風景から足元の小さな風景、さらには目を凝らして見つめるようなマクロの風景まで、多岐にわたります。これらの被写体に漏れなく対応するためにはレンズを揃えておく必要があるのです。

 「三種の神器」という言葉はよく耳にすると思いますが、風景撮影用には「四種の神器」が基本セットです。広角ズーム、標準ズーム、望遠ズーム、マクロレンズの4本です。

 広角ズームは、広い場所を広く撮るためというよりはむしろ、狭い場所をスケール感たっぷりに見せるために必要です。また奥行きを強調したりパンフォーカスをするためにも風景撮影には欠かせません。

7mm(35mm換算14mm)で撮影。最短撮影距離が25cmと近いため、このようなワイドマクロ的な表現ができます。7mmらしいデフォルメ効果が効いていて、インパクトのある表現になりました。手を伸ばし背面モニターを見ながら撮影していますが、明るい屋外でも視認性が高いので構図が作りやすいと感じました。AFも正確で、花のしべにきちんとピントが来ています。DMC-GX7 LUMIX G VARIO 7-14mm/F4.0 ASPH. F11 1/250 -0.3EV ISO200 WB:オート 7mm

 標準ズームは風景表現の要となるので、必ず用意しておきたいレンズです。堂々たる風景は標準ズームから生まれることが多いものです。

13mm(35mm判換算26mm)で撮影。雨があがった後で訪ねた公園には、予想通り大きな水溜りができ、そこに花びらが浮かび、花びらの落とし主である桜を映し出していました。無理に誇張するのではなく、感じたままを素直に切り取るため標準ズームを選択。ボディとレンズの高い解像力のおかげで、映り込みの世界がリアルに描けています。DMC-GX7 LUMIX G X VARIO 12-35mm/F2.8 ASPH.POWER O.I.S. F11 1/25 ±0EV ISO200 WB:オート 26mm

 望遠ズームは風景の一部をピンポイントで切り出したりボケを利用した表現に向いているので、広角レンズとは相反する視点で撮影するためにも必要です。

樹の股から見える花を89mm(35mm換算178mm)で撮影。少し遠い距離にある被写体ですが、余裕を持って引き寄せることができています。F2.8の開放F値のおかげで、背景は大きくボケて柔らかい色のトーンとなっています。また解像感が高いレンズなので、しべの一本一本がシャープに見えています。DMC-GX7 LUMIX G X VARIO 35-100mm/F2.8 ASPH.POWER O.I.S. F2.8 1/4,000 -1.7EV ISO200 WB:オート 89mm

 マクロレンズは極小の世界を抽出するためのレンズなので好みが分かれますが、作品のバリエーションを豊かにすることが可能なので、持っていて損はありません。

桜の楚々とした美しさ、可憐な様子を表現するため、汚れていない花をマクロレンズでクローズアップしています。開放F値からシャープなレンズなので、マクロレンズらしいボケ味を生かすことができます。背景は青空が少し見えるような構図を作り、露出もプラス側に補正して明るく仕上げ、爽やかな印象を与えるように工夫しました。DMC-GX7 LEICA DG MACRO-ELMARIT 45mm/F2.8 ASPH./MEGA O.I.S. F2.8 1/2,500 +1.3EV ISO200 WB:オート 45mm

 以上の4本を揃えることができれば、風景撮影の現場で困ることはないわけですが、LUMIXのラインアップは豊富なので、どれ1つとして欠くことなく揃えることができます。

 写真はレンズが決めるものです。カメラではありません。カメラはレンズを通った光を集め、それを画像データにするボックスです。画質には多大な影響を及ぼしますが、写真、より正確にいうなら“作品”や“表現”を決めるのはレンズなのです。

 レンズは焦点距離によってさまざまな特性を持ち、それが作品に味わいをもたらすこともあれば、表現そのものである場合もあります。例えば広角ズームならワイド感が作品から漂ってくる、望遠ズームならボケ味が美しいといった具合です。つまりレンズこそが、自分の想いを形にする手段となるわけです。

 その点、LUMIXのラインアップは充実しているので、すでに述べた四種の神器は無理なく揃える事が可能です。中でも標準ズームや望遠ズームといった四種の中でも核となる2つのタイプのレンズに関しては、ズーム域や開放F値、価格など、幅広くラインアップされているので、自分がどのような撮影スタイルを持っているのか、今どのレベルのレンズを揃えておくべきなのか、予算はどれくらい使えるのかなど十分な検討を加えたうえで、最適な1本を選ぶことが可能です。

 ちなみに、今回私が使った四種の神器というべきレンズは以下の通りです。

  • 広角ズームレンズ:LUMIX G VARIO 7-14mm/F4.0 ASPH.
  • 標準ズームレンズ:LUMIX G X VARIO 12-35mm/F2.8 ASPH.POWER O.I.S.
  • 望遠ズームレンズ:LUMIX G X VARIO 35-100mm/F2.8 ASPH.POWER O.I.S.
  • マクロレンズ:LEICA DG MACRO-ELMARIT 45mmF2.8 ASPH./MEGA O.I.S.

 標準ズームと望遠ズームには、開放F値がズーム全域で2.8の最高峰レンズをチョイスしたので、いわば最強の4本が揃ったわけです。文字通り”神器”と言ってよい珠玉のレンズですが、これだけのレンズを揃えておけば体勢は万全と言ってよいと思います。

85mm(35mm換算170mm)で撮影。桜の背景に竹林を置くことで木漏れ日が玉ボケとなり、画面を華やかに見せるように意図しています。円形虹彩絞りが採用されているため、背景には玉ボケをちりばめることが出来、美しい表現となっています。レンズには光学式の手ブレ補正機能が搭載されているため、ファインダー像が吸い付くように安定して、構図が作りやすいのもメリット。DMC-GX7 LUMIX G X VARIO 35-100mm/F2.8 ASPH.POWER O.I.S. F2.8 1/800 +0.3EV ISO200 WB:オート 85mm

 写真はレンズが決めると述べましたが、では画質は何が決めるのでしょうか。

 画質を決めるのは、カメラとレンズの相乗効果です。カメラが高画質であってもレンズの性能が低い場合は高画質が得られません。同じようにレンズが高画質であってもカメラの性能が低ければ高画質とはなりません。双方が高いレベルにあるとき初めて高画質となるわけです。

 世間ではとかくカメラの画質ばかりが優先して語られる場合がありますが、実はそれだけでは意味をなさないのです。カメラの重要性と同じレベルで、レンズの重要性は語られるべきなのですが、そういう意味で、カメラもレンズも高い画質や品質を実現しているLUMIXシリーズは、安心して使えるのです。

 今回使用したGX7は、新開発の約1,600万画素・4/3型Live MOSセンサーとヴィーナスエンジンのコンビによって、極めて美しいディテールと諧調を描いてくれます。4本のレンズはそれぞれの光学系に高画質のためのデザインが施され、収差の軽減と解像力の向上が図られています。その結果、風景の魅力は余すところなく引き出せたのではないかと思います。

摩訶不思議な感覚を演出した1枚。水面に映る桜にピントを合わせ、前ボケとして水面に浮かぶ花びらを配置し、開放絞りF2.8を使って撮影しています。水面すれすれまでレンズを下げて撮影することでこのような表現になりますが、マクロレンズならではの世界観といえます。DMC-GX7 LEICA DG MACRO-ELMARIT 45mm/F2.8 ASPH./MEGA O.I.S. F2.8 1/4,000 +1EV ISO200 WB:オート 45mm

 軽量コンパクトなミラーレスカメラのシステムによって、写真はますます身近なものになっています。風景写真家にとっても、このシステムは大きな恩恵です。

 私は、デジタルカメラが普及し始めた頃から使い始めて約15年になりますが、かつてはミラー構造を持った一眼レフカメラをメインに使っていたので、システム全体が大きく重く、取材で辛い思いをした経験は数知れません。

 しかしここ数年はミラーレスカメラを中心にシステム構成をしているため、身体の負担は減り心に余裕が持てるようになってきています。この余裕は大なり小なり作品に好影響を及ぼしていますが、この事実はどなたにも当てはまるに違いありません。

 LUMIXのシステムが写真をますます活発にし、風景写真を楽しむ人たちが増えるきっかけになれば嬉しいと思っています。

萩原史郎

(はぎはら しろう)1959年山梨県甲府市生まれ。日本大学卒業後、株式会社新日本企画で「季刊風景写真」(※現在は隔月刊) の創刊に携わり、編集長・発行人を経験。退社後はフリーの風景写真家に転向。著書多数。日本風景写真家協会(JSPA)会員。カメラグランプリ選考委員。