新製品レビュー

ソニーα7S II(実写編)

他のカメラは真似できない高感度+手ブレ補正の利点

ソニーα7S IIに、標準レンズ「Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA」を装着

ソニー「α7S II」は、α7シリーズでは6製品目となる35mmフルサイズフォーマットのミラーレスカメラだ。2014年に発売された「α7S」の上位モデルにあたり、有効約1,220万画素のCMOSセンサーと最高感度ISO409600を受け継ぎながら、新たにボディ内手ブレ補正を搭載。さらにファインダーやAF、動画機能を強化するなど、プロやハイアマチュア層に強くアピールする製品に仕上げている。

スペックを見て気になるのは、最新カメラにもかかわらず画素数が1,220万画素と少ないこと。一足先に発売された4,240万画素機「α7R II」に比べると、わずか1/3以下しかない。それでいて価格はボディのみで税別42万円と同程度である。この理由はなんなのか。実写を見ながらチェックしていこう。今回はα7S IIレビューの実写編をお伝えする。

屋外風景の描写をチェックする

まずは明るい屋外シーンでの描写を見てみてみよう。下の2枚はFEレンズの標準ズーム「Vario-Tessar T* FE 24-70mm F4 ZA OSS」を使って、ワイド端とテレ端で撮影したもの。絞り値を変えながら複数カットを撮影し、特にシャープに写った絞りF8〜11の写真を掲載した。

ワイド端(F11)
テレ端(F8)

発色の調整機能であるクリエイティブスタイルは、初期設定のスタンダードを選択した。彩度とコントラストがほどよく強調され、その場で感じた豪華絢爛な雰囲気を狙いどおりに表現できている。マイナスの露出補正を加えたため少々暗めだが、その分、青空は濃厚な色となり見栄えがいい。また細部のシャープネスは高く、彫刻や屋根瓦、壁面のそれぞれの質感がリアルに再現されている。

感度別の描写をチェックする

感度は標準でISO100-102400に対応し、拡張設定として最低ISO50、最高ISO409600が選べる。α7R IIに比べると、最高感度は標準/拡張ともに2段高い。次の写真は、感度を変えながら同一のシーンを写したもの。高感度ノイズリダクションは、初期設定の「標準」を選択した。

以下のサムネイルは、青枠部分の等倍切り出しです
ISO50(拡張)
ISO100
ISO200
ISO400
ISO800
ISO1600
ISO3200
ISO6400
ISO12800
ISO25600
ISO51200
ISO102400
ISO204800(拡張)
ISO409600(拡張)

ISO6400くらいまではノイズ感はあまり気にならず、ISO12800〜25600あたりでも特に不自然な印象は受けない。シャドウからハイライトまでの滑らかなトーンも維持できている。ISO51200を超えると徐々にざらつきが目立ちはじめるが、それでも彩度や階調、解像の低下は最小限に抑えられている。

拡張感度であるISO204800やISO409600はさすがにノイジーだが、画質は不問で、どうしても高速シャッターが必要な特殊な用途では役立つだろう。

この高感度ノイズの少なさと、彩度や階調の維持は、α7Sの画質をすでに見ている人にとってはそこまで大きな驚きはないかもしれない。ただそれにしても、依然として他社のカメラが追いつけていないハイレベルな性能であることは確かだ。

4K動画とハイスピード動画を試す

動画は「XAVC S 4K/XAVC S HD/AVCHD/MP4」の4モードが用意。このうち「XAVC S 4K」を選ぶと、4K解像度(3,840×2,160ピクセル)での撮影が行える。4K撮影に外部レコーダーが必要だった既存モデルα7Sから進化し、動画データを本体のSDXCカード(Class10以上)に記録可能になったことはありがたい。4Kでのフレームレートは30pまたは24p、ビットレートは約100Mbpsまたは約60Mbpsが選択でき、連続撮影時間は最長29分となる。

また1,920×1,080ピクセルのフルHD記録の場合には、通常撮影のほかに、120fps記録による4倍/5倍のスローモーション記録(ハイフレームレート撮影)が行える。既存モデルα7Sでもスローモーション記録は可能だったが、記録サイズがフルHDに向上したことと、カメラ本体でのスロー再生が可能になったことが新しい。

作品集

1枚目は東京タワーをローアングルから捉えたもの。手前から奥までの広範囲にピントを合わせるため絞りはF13に設定。一般的に、こうしたパンフォーカスの夜景撮影ではカメラを三脚に据えてじっくりと長時間露光をするのが基本だが、手ブレや高感度に強い本機なら手持ちでも不都合はない。1カットに費やす手間と時間を軽減でき、より多くのバリエーションが撮れる利点がある。

α7S II / Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA / ISO2000 / F13 / 1/8秒 / 55mm

夜景だけでなく動体撮影でも、高感度のメリットは大きい。次の写真は被写体ブレを抑えるため、シャッター優先AEを選び、シャッター速度1/500秒で撮影したもの。オートに設定した感度はISO2500までアップした。本機の場合、このくらいは高感度とは呼べないかもしれない。十分常用に堪える感度と画質だ。

α7S II / Vario-Tessar T* FE 24-70mm F4 ZA OSS / ISO2500 / F4 / 1/500秒 / 24mm

さらに薄暗い水槽だったので、こちらはISO10000を選択。特に開放F値が明るいとはいえない標準ズームでも、問題なく暗所撮影が快適に楽しめた。

α7S II / Vario-Tessar T* FE 24-70mm F4 ZA OSS / ISO10000 / F4.5 / 1/800秒 / 70mm

印象的な形をした2つの雲を高所から撮影。手前に森を写し込み、画面に奥行きを与えた。明暗差の大きなシーンだったが、低画素センサーがもたらすワイドダイナミックレンジによって暗部から明部までの滑らかな階調を表現できている。

α7S II / Vario-Tessar T* FE 24-70mm F4 ZA OSS / ISO100 / F8 / 1/200秒 / 63mm

高感度ばかりに注目しがちだが、拡張設定として低感度側を最低ISO50にセットできることも表現の幅を広げるメリットだ。次の写真は、感度ISO50を選び、絞り込んでストロボ撮影したもの。低感度を選んだことで、日中の屋外にもかかわらずストロボ光がとどかない背景部分が暗く落ち、花びらのみを際立たせることができた。

α7S II / Vario-Tessar T* FE 24-70mm F4 ZA OSS / ISO50 / F11 / 1/200秒 / 70mm

黒鳥の影が上下シンメトリーになる角度を選びつつ、水面に映った青空が目立つようにレンズにPLフィルターを装着して撮影。PLフィルターを使うとシャッター速度が低下し、一般的には被写体ブレの危険性が高くなるが、ためらいなく感度を高められる本機の場合、そんな心配は不要だ。

α7S II / Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA / ISO1250 / F3.2 / 1/320秒 / 55mm

今回使ったレンズのひとつ「Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA」は、絞り開放値からの切れ味鋭い描写が大きな魅力だが、そこにボディ側の手ブレ補正が加わったことで撮影領域がさらに広がったといえる。

α7S II / Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA / ISO1000 / F1.8 / 1/100秒 / 55mm

次も「Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA」による手持ち撮影だ。日没直後の鮮やかな空のグラデーションを再現しつつ、点景として配置した月の姿をくっきりと描くことができた。

α7S II / Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA / ISO640 / F2.5 / 1/6秒 / 55mm

高感度+手ブレ補正で広がる安心感と自由度

今回の実写では、α7S IIの暗所撮影性能を十二分に堪能できた。低ノイズの高感度画質と実用的な5軸手ブレ補正という2つの技術が融合したことで、どんなシーンにでも対応できる安心感と、さまざまなテクニックを駆使できる自由度がさらに増している。

これまでの一般的なカメラでは、暗所を手持ちで撮るには絞りをなるべく開けることが高画質を維持するためには欠かせなかった。だがα7S IIなら、暗所の手持ちでも、絞りを絞り込んで撮るという選択肢が広がっている。低速シャッターでもブレのミスが少なく、ISO6400や12800でも画質低下が気にならないからだ。

感度選択の幅が広いため、いくつに設定すべきか、撮影中に悩むことさえあった。とりあえずベース感度を選んでおけば問題ない、というほかの一般的なカメラとは撮影時の感覚や心得がちょっと異なる。

細部表現力については、より高画素のα7 IIやα7R IIには及ばない。それでも、実用十分の精細感があることは実写を見てのとおりだ。むやみにファイルサイズが大きくないので、RAW現像などPC上でのハンドリングがスムーズに行えるメリットもある。

使い勝手の面では改善要望はいくつかある。ボタンやメニューのカスタマイズがまだ十分とは思えないことなどだ。だがトータルとしては、ほかのカメラではできない撮影ができる非常に魅力的な製品といっていい。現在6モデルが揃うα7シリーズから予算度外視で1台を選択するなら、筆者なら迷わずα7S IIを選ぶだろう。

永山昌克

広告スタジオを経て、1998年よりフリーランスのフォトグラファー。以後、主に雑誌やウェブ、広告の分野で活動。得意分野は都会のスナップ。写真展に「チャイニーズ・ウエスタン」(銀座ニコンサロン)、著書に「写真の構図&アングル練習帳」(ソーテック社刊)などがある。