新製品レビュー
Canon EOS M100(実写編)
エントリー機と侮れない描画力
2017年10月18日 12:04
キヤノンから10月5日に発売されたEOS M100。可愛らしいEOS M10の後継機として登場した、エントリー向けのミラーレスカメラだ。
しかし、その内部に秘めたスペックは上位機種に迫る勢い。M10から大きくバージョンアップした部分を取り上げながら、作品とともに紹介していきたい。
ダイナミックレンジ
ミラーレス機の小さなボディで撮影したとは思えないほどの階調の豊かさだ。その理由の1つは、このカメラの要である映像エンジンDIGIC 7の搭載にある。
ダイナミックレンジ拡張機能「オートライティングオプティマイザ」をONにした写真が以下だ。暗いトンネルからの明暗の激しいコントラストの写真だが、トンネル内、その先の道路など白飛びや黒く潰れる事なく、ディティールを保っている。
また、オートライティングオプティマイザをOFFにしても描写できる階調の範囲が広い。前モデルのDIGIC 6から比べると、全体的に画像処理が向上しているため、オートライティングオプティマイザを使用していない場合でもハイライトもシャドーも活きており、鮮明な描写ができる。
高感度画質
M100の常用感度はISO100~25600となった。そんな中での感度の選択は、少しでも暗ければ、まずはISO1600からでも十分。
下の写真は、室内の薄暗い光と強い光との微妙なバランスの空間をISO1600で撮ったもの。どちらかの明るさに合わせると、どちらかが表現できないような状況でも、美しい階調とディティールを保っている。ガラスの見た目通りのクリアさや、その隣の陶器の質感など秀逸に表現できる。それはノイズの少なさが一番の要素だと思う。
そして、屋外においてのISO3200。例えば太陽が上手く出ない状況での、予測不可能な生き物の撮影ではシャッタースピードを確保するために感度を上げる場合も多い。マットな印象で似たような色味の被写体も、それぞれの質感を丁寧に捉えられる。
連写
今回のM100は約6.1コマ/秒の撮影が可能。M10の約4.6コマ/秒から大きく進化した。ここでは、AFが追従する連写(約4コマ/秒)に挑戦してみようと思う。
波という2度と同じ様子を捉えられない背景での動物の躍動。もしも、それに対して単写でシャッターを切っていたのでは、2枚目からのタイムラグをもどかしく感じてしまうかもしれない。
連写の性能ばかりに頼ってはならないが、このコンパクトなカメラの持つ能力を借りて、被写体の動きを追うと、気持ちが満足しているのを感じる。
作品
スナップ写真の醍醐味と言ってもいい、自分の気持ちを優先して素直に撮るという部分。それをサクッと、大げさにならずにスマートに行える印象だ。設定も、スマートフォン感覚で行えるので、タッチパネルに慣れている人には、余分なボタンなどもなくわかりやすい。
それぞれのレンズによって、写りが大きく変わるので、写す前に感じる「被写体をどのように捉えたいか」は大事なポイント。柔らかく丸みのあるフォルムの描写は、ぜひ明るめのパンケーキレンズ(EF-M22mm F2 STM)で。
低い目線や高い目線、自分撮りで撮影する時に重宝する約180度可動(上側)のチルト液晶。例えば屋内の暗めの場所や、三脚が使用できない場所などで、カメラをどこかに直置きすることは多いはず。その際、無理な体勢で画面を見ていなくても、液晶モニターを自分の見やすい位置にして撮影できる。また光が強い屋外でも、映り込みしない角度などに簡単に動かして撮影できるので便利。
逆光という少しの光量の違いでバランスを大きく崩す恐れのある状態を、きちんと映し出すには描画力の他に、AFの敏感さも重要な部分。風などで大きく揺れる枝や花が逆光である場合、ピントを素早く合わせるのが難しい場合もあるが、デュアルピクセルCMOS AFではかなり速く確実なピント合わせが可能となった。
最近ではディスプレイ上での観賞も増え、ハイキーでギリギリのディティールを表現する写真も多いが、捉えて尚、幅を持たせるのと、捉えられていないのとでは大きく意味が変わる。朝や夕闇前など、穏やかな景色にコントラストの低い繊細な彩りが現れていることがある。そんな不安定な色味も美しく写すことができるので、はっと景色が広がった時にカメラを構えずにいられないのかもしれない。
まとめ
決してエントリー機として侮ってはならない。このボディが積んでいる性能は、そう物語っているように思えた。
日常で、旅先で、ふと思うのは、この雰囲気をそのまま映し出せればいいなという事。そのための大げさなカメラやレンズは、気合を入れれば行動を共にできるが、かと言って不確かなカメラでは到底満足できない。
そんな時に、このカメラはとてもいい相棒になるように思う。「小さいけれど、確かな描画力」。こんなに便利で頼もしいことがあるのだ。これからの秋の光が美しい季節、色んな情景を捉えるのが楽しくなるに違いない。