交換レンズレビュー

SAMYANG AF35mm F2.8 FE

小型・軽量・リーズナブルながら写りも良好!

7月28日に、株式会社ケンコー・トキナーは韓国サムヤンオプティクスの新製品としてソニーEマウント対応AFレンズ「AF 35mm F2.8 FE」を発売した。同社からは14mm、50mmに続き3番目のAF対応Eマウントレンズとなる。

特筆すべきは、全長わずか3.3cm、重さは85.6gと、装着していることをまったく感じさせない小型軽量レンズでありながらも、高解像力を実現している点だ。また、価格も4万円台とリーズナブルだ。

35mmという使いやすい画角なので、スナップ、人物撮影、さらには室内インテリアやテーブルフォトの撮影にも最適といえる。今回は、その中から「人物撮影」を選択した。α7R IIに装着して撮影した作例を見ながら、本レンズの魅力を感じていただければと思う。

発売日:2017年7月28日
実勢価格:税込4万3,000円前後
マウント:ソニーE
最短撮影距離:0.35m
フィルター径:49mm(フード装着時は40.5mm)
外形寸法:61.8×33mm
重量:85.6g

35mmレンズの利点

35mmレンズは視野よりもほんの少し広くなる感覚はあるが、超広角レンズほど強烈にパースがつかず、目の前の光景を自然に切りとれる。

被写界深度を浅くすれば被写体を適度に浮き立たせることもできるし、深くすれば背景を生かした写真を撮ることができる。スナップにも、人物撮影にも使いやすい、オールマイティな焦点距離といえる。

純正レンズとの違い

ソニーのWebサイトを見ると、35mmフルサイズのEマウント用35mmレンズは「Distagon T* FE 35mm F1.4 ZA」と「Sonnar T* FE 35mm F2.8 ZA」の2本がラインナップされている。

Distagon T* FE 35mm F1.4 ZAは開放F値が明るく描写も素晴らしいが、サイズが大きめで、価格も約20万円と少し手が出しづらい。

一方Sonnar T* FE 35mm F2.8 ZAは120gと軽量コンパクトで写りもよく、カールツァイスとしては比較的リーズナブルといえる価格設定で人気だ。筆者はこのレンズをスチール、動画の両方で使用している。ただ、リーズナブルといっても、約8万円はする。

SAMYANG AF35mm F2.8 FEは、後者のSonnar T* FE 35mm F2.8 ZAに近い特徴を持っている。しかし、SAMYANG AF35mm F2.8 FEは重量85.6gとさらに軽く、価格も半分程度で割安感のあるところが魅力だ。

特徴

本レンズの特徴は、なんといってもミラーレスカメラの「小型・軽量」という特徴を妨げない小型化を実現しながら、35mmフルサイズのイメージサークルに対応した単焦点レンズである点だ。

さらに、ウルトラマルチコート技術と非球面レンズ2枚、高屈折レンズ1枚を含む6群7枚構成で、光の不要な分散を抑え、画面の中心から周辺部まで、優れた画質とコントラストを実現しているのも特徴の1つだ。

とにかく小型軽量なので、手に取ってみると、カメラボディの重み以外は感じないほど。本当にレンズを装着しているのかと不安になるくらいだ。スナップ撮影等で長時間持ち歩くにはぴったりだろう。

外観

鏡筒デザインは、αシリーズの黒いボディとの一体感を感じさせながらも、カジュアルで親しみやすい雰囲気に仕上がっている。1本の赤いラインが良いアクセントとなっている。

操作性

レンズに余計なものが全くついていないので、操作で迷うようなことは一切ない。

ただ、レンズが小さすぎて、手の小さい筆者でも、レンズをどのようにホールドしたら良いのか迷ってしまった。手の大きい人は、もしかしたら手のやり場に困るかもしれない。

ピントリングは指なじみがよく、回転も非常にスムーズだ。

レンズフード

付属するフードはバヨネット式となっている。レンズのデザインを邪魔せず、コンパクトでまったくかさばらないのが魅力だ。あまりにレンズと一体化しすぎていて、最初はどれがフードなのかわからなかったくらいだ。

フード関連ではひとつ注意が必要だ。レンズのフィルター径49mmに合わせてレンズフィルターをつけると、レンズキャップが装着できなくなってしまう。レンズフード自体に40.5mmのレンズフィルターが装着可能なので、その上からレンズキャップを装着しよう。

AF

AFの合焦速度は、速い。ただ被写体が動いている場合、AF-S、AF-A、AF-Cすべて試したが、どれもところどころ迷っている印象を受けた。

「顔検出」はよく効いており、今回どのようなシーンでも被写体の顔を追従していた。一方「瞳AF」は効かないようだ。

作品

歩道橋の上でモデルを撮影した。やや絞り、奥行き感を出しながらも、背景が主張しすぎない程度の絵に仕上げた。35mmという画角は、状況を生かしたカットを自然に切りとれるので本当に使いやすい。

合焦部はカリカリになりすぎず、適度なシャープさだ。モデルの存在感を気持ち良く引き立てる描写力だと感じた。

α7R II / AF 35mm F2.8 FE / 1/400秒 / F4 / 0EV / ISO200 / マニュアル露出 / 35mm

最短撮影距離(0.35m)付近までモデルに寄って、絞り開放で撮影した。背景のボケはナチュラルだ。逆光で受けて、モデルの顔がシャドウになるよう工夫した。顔の肌目がきれいに出ている点が良いと思った。

35mmは、最短撮影距離近くまで寄れば、このように被写体を浮き立たせる写真も撮ることができる。ただ、35mmは若干のパースがつくので、被写体に寄りすぎると顔やパーツが歪んでしまう可能性がある。このくらいが限度な気がする。人物を撮影する場合は、注意が必要だ。

α7R II / AF 35mm F2.8 FE / 1/1,000秒 / F2.8 / 0EV / ISO200 / マニュアル露出 / 35mm

街角で、光の差しこむレンガの壁にもたれかかるモデルが美しいと感じたのですぐにシャッターを切った。余計なものが一切ないレンズなので「いい」と思った瞬間に迷わずシャッターを切れるのが嬉しい。

35mmは画角が広めなので、このように草木の配置を生かしたデザイン的な視点の写真も撮りやすい。前ボケを使い、画面に奥行きを出した。

α7R II / AF 35mm F2.8 FE / 1/400秒 / F2.8 / 0EV / ISO200 / マニュアル露出 / 35mm

さきほどのカットと同じ場所で、今度はモデルの右側に回り込んで、背後の緑を抜く形で撮影をした。モデルの顔がややシャドウになるように、こちらを向いてもらった。

顔のハイライト部分は飛びすぎず、肌の色がこってりと表現されていて、彼女の存在を近くに感じさせるような、良い描写をするな、と思った。

絞り開放で撮影したので、背景に玉ボケが確認できる。玉ボケは、完全なる円形ではないものの、後ろに存在していても形が気にならない程度にはきれいで丸い。

α7R II / AF 35mm F2.8 FE / 1/500秒 / F2.8 / 0EV / ISO200 / マニュアル露出 / 35mm

少し引いて、モデルの全身を絞り開放で撮影した。このくらい引くと、絞り開放でも背景はしっかりと描かれる。35mmの広めの画角を生かして、画面を横に倒したりして遊んでみると、写真に動きがでて面白い。

α7R II / AF 35mm F2.8 FE / 1/1,000秒 / F2.8 / 0EV / ISO200 / マニュアル露出 / 35mm

道端で、花を見つめるモデルを撮影した。本レンズの描き出す前ボケ、後ろボケは肉眼でみているものと近く、限りなく自然だ。

このレンズは絞り開放で撮影しても、背景が判別不可能なくらいボケてしまうことはないので、こういった日常的なシーンでも、画面の中で簡単に「近景・中景・遠景」をつくり、立体感をもたせることができる。

α7R II / AF 35mm F2.8 FE / 1/800秒 / F2.8 / 0EV / ISO200 / マニュアル露出 / 35mm

モデルに、ぎっしり生えた蔦の壁にもたれかかってもらった。モデルの位置する画面の中央部から周辺部まで、大きく画質が変わることもなくしっかりと描写されている。

α7R II / AF 35mm F2.8 FE / 1/125秒 / F5.6 / 0EV / ISO200 / マニュアル露出 / 35mm

横断歩道を渡るモデルを歩きながら撮影した。ボディもレンズも小型なので、こういった動きのある撮影がスピーディかつスムーズに行えてとても良い。軽かったのでここでは片手でカメラを構えて撮影している。

α7R II / AF 35mm F2.8 FE / 1/1,000秒 / F2.8 / 0EV / ISO200 / マニュアル露出 / 35mm

喫茶店でひとやすみしているところを撮影した。クリームソーダを前ボケに使ってみた。35mmという肉眼に近い画角が、喫茶店で楽しそうにするモデルをうまく描き出している。

α7R II / AF 35mm F2.8 FE / 1/40秒 / F2.8 / 0EV / ISO400 / マニュアル露出 / 35mm

まとめ

AF35mm F2.8 FEは、圧倒的な小型軽量さを備えながらも、十分な描写力を持っている。しかも、このスペックでリーズナブルな価格というのが嬉しい。コストパフォーマンスは抜群だ。

今回は人物撮影で使用したが、35mmという使いやすい画角なので、街角スナップ、テーブルフォトなどなど、様々なシーンでも活躍しそうだ。

また、小型軽量、AF機能搭載、広角レンズであることから、記事では触れなかったが、α7シリーズやα9などのカメラに装着しハンドヘルドジンバルに搭載して、映像を撮影するシーンでも役立つのではないかと考えられる。こちらは今後個人的に研究したい。

モデル:いのうえのぞみ
撮影協力:HIROMAN'S COFFEE

大村祐里子

1983年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部法律学科卒。有限会社ハーベストタイム所属。雑誌・書籍での執筆やアーティスト写真の撮影など、さまざまなジャンルで活動。