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コスプレ撮影で活躍するオフカメラライティング

ニッシンジャパンの中級者向けワークショップをレポート

ニッシンジャパンのストロボDi700A

ニッシンジャパンは、「クリップオンストロボ・ワークショップfor Cosplay」を6月5日に横浜市開港記念会館で開催した。同社では今回初めて、ストロボの中級者を想定したワークショップを開催すると聞き、取材に訪れた。

「これまでは撮影もするコスプレイヤーを主なターゲットにした初心者向けのワークショップを数回行ってきましたが、今回はコスプレ撮影を本格的に行うユーザー向けにライティングを楽しみつつ、スキルアップしてもらうためのワークショップとして企画しました」と話すのは、ニッシンジャパンの國頭公之氏。

そのようなわけで、募集案内にも「1灯オフカメラライティングの経験がある人」とあった。なかなかハードルが高いように思えるが、日中の第1部と夜の第2部の定員計32名のところ、部によっては数分で予約が埋まるという人気ぶりだったそうだ。ちなみに、オフカメラライティングとは、ストロボをカメラから離して撮影することだ。

人気の大きな理由が講師陣とのこと。今回は、お耽美写真家の憬-Kay-さんと写真家の浅岡省一さんが担当。両氏ともストロボを活用した独自の作品でポートレートやコスプレ写真のファンから近年支持を集めている。また今回は座学、実習、講評で1部当たり4時間とじっくり学べる点も魅力となったようだ。

座学ではライティングや構図などについてわかりやすい解説があった

今回使用するストロボはニッシンジャパンのワイヤレスシンクロ対応モデル「Di700A」。カメラのホットシューに付けた送信機で発光や光量の調整ができ、簡単に多灯のオフカメラライティングが行える。

それでは、ワークショップで行われたライティングの一部を紹介したいと思う。

ドアの隙間から漏れる美しい光

第1部は憬さんのワークショップに参加した。憬さんは、2007年~2008年にかけてそれまで使っていたスタジオ用の大型ストロボからクリップオンストロボに切り替えた。カメラの高感度画質が上がったことでクリップオンストロボで行けることがわかったという。ちょうどその頃、ラジオスレーブに対応したモデルが増えたのもクリップオンストロボを使い出した理由だそうだ。

憬氏

現場では2灯ライティングが多いとのことで、1灯をモデルの前から当て、もう1灯をモデルの後方から当てることで、ラインライトが表現できるという。

撮影の際はストロボがフル発光にならないようにするのがポイントという。フル発光するとチャージが間に合わずカット枚の明るさにムラが出るそうだ。出力は高くても1/2程度にしているとのこと。

実習でも2灯ライティングを披露した。1つは、階段でモデルの前と後にストロボをセッティングする方法。前のストロボをメインとするが、ポイントは壁に反射させて光を柔らかくするということ。一方、後のストロボは高い位置から直射し、アクセントとしてラインライトの効果を狙った。このライティングではモデルの顔がやや暗くなるが、景さんによるとそれも作画の狙いとのこと。

モデル:テレジアさん

顔はやや暗めな一方、髪は明るくなり、オンカメラのストロボとはまったく違う写りになった
別アングルから。背後のストロボの効果で髪と腕のラインが強調できた

続いては、大きなドアを使ったライティングを説明した。メインライトはドアの横からモデルに90度程度で当たるようにセット。もう1灯は、ドアの外に設置してドアの隙間から光が差し込むシーンを作った。景さんはメインライトにスヌートを装着。モデルにスポット的な光を照射することで、印象的な仕上がりになった。

ドアの隙間から漏れた光が良いアクセントになった。スヌートも良い効果を生んだ

景さんが強調していたのは、「特別なアクセサリーを使わなくてもライティングはできる」ということ。ソフトボックスやオパライトをつかえば、“プロっぽい写真”になるとのことだが、直射や壁のバウンス、スヌート(厚紙で作れば良いそうだ)などの工夫でも作品に仕上げられることが説明された。

夜の逆光で印象的な作品に

続いての第2部は浅岡さんのコースに参加した。こちらは17時開始で、夕方~夜にかけて屋外で撮影実習を行った。

浅岡省一さん

浅岡さんはまず、ライティングにはメインライト、フィルライト、アクセントライトの3つがあることを紹介。フィルライトはメインライトで生じた影を弱める役割があり、アクセントライトは演出のための光であると説明した。とはいえ、明確に分けられない場合もあるので、あまりこだわりすぎない方が良いとのことだ。

また、ポートレートとコスプレ写真の違いについても触れ、衣装を上手く見せるライティングがコスプレ写真には必要だと話した。とくにコスチュームの特徴的な部分などをきちんと写す点が、一般的なポートレート写真と異なるとのこと。

実際のライティングでは、暗い所に光を入れることで被写体を目立たせる必要があるとした。例えば夜であれば、人物の両サイドからストリップボックスと呼ばれる細長いソフトボックスを使って光を当てれば、衣装のエッジを強調できるとした。加えて、人物の後方から裸のストロボを当てれば、夜景と人物の作品が撮れるとのこと。この際、スローシンクロになるため、できるだけ明るいレンズと高感度画質の良いカメラがあると有利になると話した。

実習ではまず夕陽をバックに裸のストロボ2灯を使った日中シンクロを行った。空を白トビさせずに人物も明るく写す手法だ。この時、ストロボにオレンジ色のフィルターを装着するとより自然な夕時の写りになる。

モデル:もちうさぎさん

空のグラデーションを残したまま人物と衣装を自然に写せた

また、人物の後にストロボを置いて逆光にするテクニックも披露。メインライトは人物の斜め前から1灯を当てる。いずれも裸のストロボであり、2灯だけで印象的なショットを狙うことができる。

背後のストロボにより脚の影が前に伸びた印象的な写真になった

景さん、浅岡さんとも今回は2灯のみのライティングを披露したが、ストロボをカメラから離して使うことで、これだけバリエーション豊かな写真が撮れることがわかった。

なお今回はストロボのチャージタイムを短縮するため、同社の「パワーパックPS 8」を電源に使用している。

パワーパックPS 8

「ゆくゆくはニッシンジャパンのストロボを購入して欲しいですが、まずは純粋に楽しんでもらってストロボの良さを知って欲しいと思っています。『ワークショップに参加したらストロボを買わなければならないの?』と思うかもしれませんが、そんなことはないので、身構えないで参加して欲しいですね(笑)」(國頭氏)。

今回と同様のワークショップの次回開催は未定だが、國頭氏によれば「機会があればまた行いたい」とのことだ。