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メモリーカードはどこまで速くなるのか……OWCが投入する「CFexpress 4.0」対応Type Bカードを試す

対応カードリーダーとの組み合わせで大幅な速度アップ

右がCFexpress 4.0に対応したType Bカード「Atlas Ultra 2TB」。左は試作カードリーダー

本国アメリカをはじめグローバルでの知名度の割に、残念ながら日本での認知度は今一つという感もあるOther World Computing(以下OWC)。そのOWCからCFexpress4.0規格のType Bカードが発売となった。

早くも「4.0」対応品を投入、しかも価格は据え置き

OWCのCFexpressカードは、「OWC Atlas Pro(以下Atlas Pro)」と「OWC Atlas Ultra(以下Atlas Ultra)」の2グレード展開にある。従来のAtlas UltraとAtlas ProをそっくりそのままCFexpress 4.0対応品に置き換えるかの布陣である。

Atlas Ultra 2TB Type Bカード
OWCのCFexpress 4.0対応Type Bカード
製品名容量最大読み
出し速度
最大書き
込み速度
最低継続
書き込み速度
価格
Atlas Pro256GB3,650MB/秒3,000MB/秒800MB/秒27,200円
512GB32,050円
Atlas Ultra1TB3,650MB/秒3,000MB/秒1,500MB/秒93,700円
2TB161,700円
パッケージでもCFexpress 4.0への対応を明記する

いずれも同社の従来品(CFexpress 2.0対応品)と大きく変わらない値付けであり、(将来カメラが対応することを見込むなら)4.0仕様を導入しておくのは悪くない選択肢といえる。加えて対応カードリーダーを用意することが前提となるが、パソコンへの転送も高速化が期待できそうだ。

CFexpress 4.0とは?

CFexpress 4.0は、従来規格の「CFexpress 2.0」との後方互換性を確保しつつ、インターフェース速度をPCI Express(PCIe)3.0から4.0へ高速化したもの。CFexpress Type Bカードの場合、最大転送速度の理論値が2GB/秒から4GB/秒の2倍に向上する。

CompactFlash Associationが公開したCFexpress 4.0導入のプレスリリース

これまで以上にカメラ内部で高速な書き込みが可能になることで、高解像度画像の高速連写や、6K/8Kといった高解像度の動画記録(本体内での非圧縮記録を含む)のベースアップに期待がかかる。そして何より撮影したデータをパソコンに転送する際に、いままで以上に有効に働くことだろう。

ただしデジタルカメラでその恩恵を受けるには、CFexpress 4.0に対応したカードスロットを持つカメラが必要。現状、対応した製品はない。

また、パソコンへの転送においても、従来のカードリーダー(最速でUSB 3.2 Gen2対応)ではその速度を出し切れず、USB4対応品が必要になる。カードリーダーだけでなく、パソコンにも対応インターフェイスが必要で、それらをつなぐケーブルにも気を配らないとならない。それぞれ対応品の選択肢はまだ少なく、特にカードリーダーは限られているのが現状だ。

CFexpress 4.0/2.0規格の違い
比較項目規格Type AType BType C
PCIe規格/レーン数CFexpress 4.0Gen4(1レーン)Gen 4(2レーン)Gen 4(4レーン)
CFexpress 2.0Gen 3(1レーン)Gen 3(2レーン)Gen 3(4レーン)
最大転送速度CFexpress 4.02GB/秒4GB/秒8GB/秒
CFexpress 2.01GB/秒2GB/秒4GB/秒
外形寸法CFexpress 4.020×28×2.8mm29.6×38.5×3.8mm54×74×4,8mm
CFexpress 2.0

CFexpress 4.0に対応したカメラが現状入手できないものの、(条件さえそろえれば)パソコンへの転送は高速化する。その価値をどう見るかは、使用者の撮影量やワークフローへの考え方次第。しかし多くのカメラマンが、こうしたパソコンへのデータ転送に時間を要しているのもまた事実だ。

ちなみにCFexpress 4.0には、4GB/秒のType Bに加えて、2GB/秒のType A、8GB/秒のType Cが規定されている。これらは従来のCFexpress 2.0におけるType A〜Cと同じ関係性で、カードスロットの後方互換を実現するため、外形寸法もこれまでと同じになっている。

PCへの転送速度はいかに?

というわけで、CFexpress 4.0版のAtlas Ultraを入手し、ベンチマークをとってみた。現状ではCFexpress 4.0に対応するカメラが存在しないため、今回はパソコンへの転送速度のみを測っている。

用意した機材/ソフト

CFexpress Type Bカード
・Altras Ultra 2TB(CFexpress 4.0対応版)
・Altras Ultra 2TB(CFexpress 2.0対応版)

パソコン
・M2チップ搭載のMacBookAir(Thunderbolt 3/ USB4ポート搭載)

カードリーダー
・OWCによる試作モデル(USB4対応)
・OWC Atlas FXR(USB 3.2 Gen2対応)

ベンチマークソフト
・Blackmagic Disk Speed テスト


使用した試作カードリーダーはCFexpress 4.0に合わせて設計されたUSB4対応品ではあるものの、最終版ではないことをお断りしておきたい。

OWC純正の試作カードリーダー。CFexpress 4.0の速度を引き出すUSB4に対応する
背面のUSB Type-Cコネクタには「USB4.0」のレタリングが
こちらは比較のため用意したAtlus FXR。CFexpress 2.0時代の製品で、USB 3.2 Gen 2に対応

比較として用意したAtlas FXR(CFexpress 2.0用のカードリーダー)の最大転送速度は、1,600MB/秒となっている。この時点でCFexpress 4.0の速度を引き出すことは不可能なことがわかる。

Blackmagic Disk Speed テストでのストレス設定は5GBだ。

結果は次の通り。表中の数値は、3回計測しての平均値になる。

Blackmagic Disk Speed テストでの計測結果
CFexpressカードカードリーダーWRITEREAD
Altras Ultra 2TB
(CFexpress 4.0)
試作機
(CFexpress 4.0)
2,093MB/秒2,829MB/秒
Atlas FXR
(CFexpress 2.0)
1,178MB/秒1,516MB/秒
Altras Ultra 2TB(CFexpress 2.0)試作機
(CFexpress 4.0)
1,275MB/秒1,516MB/秒
Atlas FXR
(CFexpress 2.0)
1,179MB/秒1,520MB/秒

予想通り、CFexpressのカードとカードリーダーの組み合わせで最高値を出せた。WRITE、READとも2,000MB/秒を超え、特にREADの数値はすさまじい。対応カードリーダーと組み合わせることで、高速なPCへの転送が期待できる。

CFexpress 4.0のAtlas Ultraは、USB4対応カードリーダーで初めてその実力を見せる。

以下はテスト時に最高速度を記録したときのスクリーンショットだ。

Atlas Ultra(CFexpress 4.0)
×
試作カードリーダー(USB4)
Atlas Ultra(CFexpress 2.0)
×
試作カードリーダー(USB4)
Atlas Ultra(CFexpress 4.0)
×
Atlus FXRカードリーダー(USB 3.2 Gen 2)
Atlas Ultra(CFexpress 2.0)
×
Atlus FXRカードリーダー(USB 3.2 Gen 2)

さすがCFexpress 4.0、ベンチマークソフトのメーターの針が、ギューンと気持ちよく回るのが心地よい。WRITEでも2,000MB/秒の大台を超え、もう一息で3,000MB/秒に手が届こうかという勢い。公称スペックと比べると今一つな印象もあるが、これはまだカードリーダーが試作機という理由もあるのだろう。MacBook Air側のインターフェイスに上限があり、その限界に達したのかもしれない。

とはいえ、現行のAtlas FXRとCFexpress 2.0対応Atlas Ultraの組み合わせでも、公称スペックに対して75〜80%の値だったので、決して悪い値ではない。ちなみに他社のCFexpress 4.0対応カードリーダでも計測を試みたが、ほぼ同じ結果だった。

では、カードリーダーの違いで差は出るのか。これが案外と差は小さかった。WRITEではCFexpress 4.0対応品が優位を見せたが、その差は少ない。READもほぼ同じといって良いだろう。

従来品もファームウエアアップデートでCFexpress 4.0に対応

OWCのメモリーカードは、純正カードリーダーとの組み合わせでファームウエアのアップデートが可能になることは以前もお伝えした。

今回、CFexpress 4.0対応品の発表とあわせて、従来のCFexpress 2.0対応品が、ファームウェアのアップデートでCFexpress 4.0に対応するとの発表があった(読み出し1,850MB/秒、書き込み1,700MB/秒の製品に限る)。アップデートは純正ソフト「Innergize」を使用する。すでにmacOS版は対応済み。Windous版も完成次第公開予定となっている。アップデート対応品が手元にある人にはうれしいサプライズだ。

いずれにしても、CFexpress自体の普及が進む中、早くも新たなステージに突入したスピード感に驚く。その中でいち早く製品を投入し、さらに価格も現行品並み、しかも現行品のアップデートも用意しているOWC。CFexpress 4.0へのステップアップにおいても、ユーザーベネフィットを重視する同社らしい姿勢が見える。

こうなると気になるのが、同社が来春発売するという純正のCFexpress 4.0対応カードリーダー。

今回発表されたCFexpress 4.0対応カードが大容量のAltras Ultraシリーズだけでなく、手の届きやすいAltras Proにも設定されていることから見ると、OWCはCFexpress 4.0対応品のメインユーザーとして、動画主体のユーザーだけでなく、静止画メインのスチール派も視野に入れていると推察できる。そのようなユーザーにとってのベネフィットをOWCが気にしないとは考えにくい。

OWCには今回比較として使用したシングルスロットのAtlas FXRに加えて、CFexpressとSDのダブルスロットを備えたカードリーダーも存在する。となると、CFexpress+SDスロットのミラーレスカメラが多い現状を鑑みて、ダブルスロット仕様で登場という可能性は結構高いのではないか? などと勝手な妄想も膨らむ。果たしてこの予想、当たるか外れるか。結果は来春に。

まつうらやすし