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メモリーカードはどこまで速くなるのか……OWCが投入する「CFexpress 4.0」対応Type Bカードを試す
対応カードリーダーとの組み合わせで大幅な速度アップ
2023年10月17日 09:19
本国アメリカをはじめグローバルでの知名度の割に、残念ながら日本での認知度は今一つという感もあるOther World Computing(以下OWC)。そのOWCからCFexpress4.0規格のType Bカードが発売となった。
早くも「4.0」対応品を投入、しかも価格は据え置き
OWCのCFexpressカードは、「OWC Atlas Pro(以下Atlas Pro)」と「OWC Atlas Ultra(以下Atlas Ultra)」の2グレード展開にある。従来のAtlas UltraとAtlas ProをそっくりそのままCFexpress 4.0対応品に置き換えるかの布陣である。
製品名 | 容量 | 最大読み 出し速度 | 最大書き 込み速度 | 最低継続 書き込み速度 | 価格 |
---|---|---|---|---|---|
Atlas Pro | 256GB | 3,650MB/秒 | 3,000MB/秒 | 800MB/秒 | 27,200円 |
512GB | 32,050円 | ||||
Atlas Ultra | 1TB | 3,650MB/秒 | 3,000MB/秒 | 1,500MB/秒 | 93,700円 |
2TB | 161,700円 |
いずれも同社の従来品(CFexpress 2.0対応品)と大きく変わらない値付けであり、(将来カメラが対応することを見込むなら)4.0仕様を導入しておくのは悪くない選択肢といえる。加えて対応カードリーダーを用意することが前提となるが、パソコンへの転送も高速化が期待できそうだ。
CFexpress 4.0とは?
CFexpress 4.0は、従来規格の「CFexpress 2.0」との後方互換性を確保しつつ、インターフェース速度をPCI Express(PCIe)3.0から4.0へ高速化したもの。CFexpress Type Bカードの場合、最大転送速度の理論値が2GB/秒から4GB/秒の2倍に向上する。
これまで以上にカメラ内部で高速な書き込みが可能になることで、高解像度画像の高速連写や、6K/8Kといった高解像度の動画記録(本体内での非圧縮記録を含む)のベースアップに期待がかかる。そして何より撮影したデータをパソコンに転送する際に、いままで以上に有効に働くことだろう。
ただしデジタルカメラでその恩恵を受けるには、CFexpress 4.0に対応したカードスロットを持つカメラが必要。現状、対応した製品はない。
また、パソコンへの転送においても、従来のカードリーダー(最速でUSB 3.2 Gen2対応)ではその速度を出し切れず、USB4対応品が必要になる。カードリーダーだけでなく、パソコンにも対応インターフェイスが必要で、それらをつなぐケーブルにも気を配らないとならない。それぞれ対応品の選択肢はまだ少なく、特にカードリーダーは限られているのが現状だ。
比較項目 | 規格 | Type A | Type B | Type C |
---|---|---|---|---|
PCIe規格/レーン数 | CFexpress 4.0 | Gen4(1レーン) | Gen 4(2レーン) | Gen 4(4レーン) |
CFexpress 2.0 | Gen 3(1レーン) | Gen 3(2レーン) | Gen 3(4レーン) | |
最大転送速度 | CFexpress 4.0 | 2GB/秒 | 4GB/秒 | 8GB/秒 |
CFexpress 2.0 | 1GB/秒 | 2GB/秒 | 4GB/秒 | |
外形寸法 | CFexpress 4.0 | 20×28×2.8mm | 29.6×38.5×3.8mm | 54×74×4,8mm |
CFexpress 2.0 |
CFexpress 4.0に対応したカメラが現状入手できないものの、(条件さえそろえれば)パソコンへの転送は高速化する。その価値をどう見るかは、使用者の撮影量やワークフローへの考え方次第。しかし多くのカメラマンが、こうしたパソコンへのデータ転送に時間を要しているのもまた事実だ。
ちなみにCFexpress 4.0には、4GB/秒のType Bに加えて、2GB/秒のType A、8GB/秒のType Cが規定されている。これらは従来のCFexpress 2.0におけるType A〜Cと同じ関係性で、カードスロットの後方互換を実現するため、外形寸法もこれまでと同じになっている。
PCへの転送速度はいかに?
というわけで、CFexpress 4.0版のAtlas Ultraを入手し、ベンチマークをとってみた。現状ではCFexpress 4.0に対応するカメラが存在しないため、今回はパソコンへの転送速度のみを測っている。
用意した機材/ソフト
CFexpress Type Bカード
・Altras Ultra 2TB(CFexpress 4.0対応版)
・Altras Ultra 2TB(CFexpress 2.0対応版)
パソコン
・M2チップ搭載のMacBookAir(Thunderbolt 3/ USB4ポート搭載)
カードリーダー
・OWCによる試作モデル(USB4対応)
・OWC Atlas FXR(USB 3.2 Gen2対応)
ベンチマークソフト
・Blackmagic Disk Speed テスト
使用した試作カードリーダーはCFexpress 4.0に合わせて設計されたUSB4対応品ではあるものの、最終版ではないことをお断りしておきたい。
比較として用意したAtlas FXR(CFexpress 2.0用のカードリーダー)の最大転送速度は、1,600MB/秒となっている。この時点でCFexpress 4.0の速度を引き出すことは不可能なことがわかる。
Blackmagic Disk Speed テストでのストレス設定は5GBだ。
結果は次の通り。表中の数値は、3回計測しての平均値になる。
CFexpressカード | カードリーダー | WRITE | READ |
---|---|---|---|
Altras Ultra 2TB (CFexpress 4.0) | 試作機 (CFexpress 4.0) | 2,093MB/秒 | 2,829MB/秒 |
Atlas FXR (CFexpress 2.0) | 1,178MB/秒 | 1,516MB/秒 | |
Altras Ultra 2TB(CFexpress 2.0) | 試作機 (CFexpress 4.0) | 1,275MB/秒 | 1,516MB/秒 |
Atlas FXR (CFexpress 2.0) | 1,179MB/秒 | 1,520MB/秒 |
予想通り、CFexpressのカードとカードリーダーの組み合わせで最高値を出せた。WRITE、READとも2,000MB/秒を超え、特にREADの数値はすさまじい。対応カードリーダーと組み合わせることで、高速なPCへの転送が期待できる。
CFexpress 4.0のAtlas Ultraは、USB4対応カードリーダーで初めてその実力を見せる。
以下はテスト時に最高速度を記録したときのスクリーンショットだ。
さすがCFexpress 4.0、ベンチマークソフトのメーターの針が、ギューンと気持ちよく回るのが心地よい。WRITEでも2,000MB/秒の大台を超え、もう一息で3,000MB/秒に手が届こうかという勢い。公称スペックと比べると今一つな印象もあるが、これはまだカードリーダーが試作機という理由もあるのだろう。MacBook Air側のインターフェイスに上限があり、その限界に達したのかもしれない。
とはいえ、現行のAtlas FXRとCFexpress 2.0対応Atlas Ultraの組み合わせでも、公称スペックに対して75〜80%の値だったので、決して悪い値ではない。ちなみに他社のCFexpress 4.0対応カードリーダでも計測を試みたが、ほぼ同じ結果だった。
では、カードリーダーの違いで差は出るのか。これが案外と差は小さかった。WRITEではCFexpress 4.0対応品が優位を見せたが、その差は少ない。READもほぼ同じといって良いだろう。
従来品もファームウエアアップデートでCFexpress 4.0に対応
OWCのメモリーカードは、純正カードリーダーとの組み合わせでファームウエアのアップデートが可能になることは以前もお伝えした。
今回、CFexpress 4.0対応品の発表とあわせて、従来のCFexpress 2.0対応品が、ファームウェアのアップデートでCFexpress 4.0に対応するとの発表があった(読み出し1,850MB/秒、書き込み1,700MB/秒の製品に限る)。アップデートは純正ソフト「Innergize」を使用する。すでにmacOS版は対応済み。Windous版も完成次第公開予定となっている。アップデート対応品が手元にある人にはうれしいサプライズだ。
いずれにしても、CFexpress自体の普及が進む中、早くも新たなステージに突入したスピード感に驚く。その中でいち早く製品を投入し、さらに価格も現行品並み、しかも現行品のアップデートも用意しているOWC。CFexpress 4.0へのステップアップにおいても、ユーザーベネフィットを重視する同社らしい姿勢が見える。
こうなると気になるのが、同社が来春発売するという純正のCFexpress 4.0対応カードリーダー。
今回発表されたCFexpress 4.0対応カードが大容量のAltras Ultraシリーズだけでなく、手の届きやすいAltras Proにも設定されていることから見ると、OWCはCFexpress 4.0対応品のメインユーザーとして、動画主体のユーザーだけでなく、静止画メインのスチール派も視野に入れていると推察できる。そのようなユーザーにとってのベネフィットをOWCが気にしないとは考えにくい。
OWCには今回比較として使用したシングルスロットのAtlas FXRに加えて、CFexpressとSDのダブルスロットを備えたカードリーダーも存在する。となると、CFexpress+SDスロットのミラーレスカメラが多い現状を鑑みて、ダブルスロット仕様で登場という可能性は結構高いのではないか? などと勝手な妄想も膨らむ。果たしてこの予想、当たるか外れるか。結果は来春に。