特別企画

2014年「私はこれを買いました!」(後編)

9名の写真家+編集者1名は何を買ったのか?

2014年を締めくくるにあたり、本誌のレビュー系でご活躍いただいた皆様および本誌編集者に、今年新品で購入したデジタルカメラのうち、思い入れのある製品について語っていただきました。(50音順、敬称略)

【前編はこちら

フィルム一眼レフ並みに美しいシェイプ

ニコンD750/曽根原昇

今年は、ニコンのD750を購入した。仕事の撮影でも普段使いでも、最近はミラーレス機やコンデジを使う機会が増えていたこともあって、フルサイズデジタル一眼レフを買うのは約2年ぶりのこと。

デジタル一眼レフのぼってりとした厚みにかねがね秘かに不満をもっていた筆者であるが、フィルム一眼レフ並みに美しくシェイプされた姿にすっかり感じ入ってしまったのが購入の理由だ。

ちょっと不真面目な動機で買ったD750だったけれども、デジタルカメラとしての性能が大変安定していることにもまた感心した。視野率約100%のファインダーはピントの山が掴みやすく、ニコンD600よりもMFでのピント合わせがしやすい。オート露出の的中率は格段に向上しているし、高感度時のノイズ耐性も期待以上に優秀で嬉しい。

薄型化したのによく搭載してくれたと感心するチルト式液晶は、実際の撮影でもやっぱり便利で、ローアングルで被写体を狙うときなどにはライブビュー撮影で安全確実なピント精度を保証してくれる。このスタイルでの撮影機会が増えたことで、交換レンズは手ブレ補正機能付きばかりを使うようになってしまったくらいである。

10月に購入してからすでにいくつかの撮影で使っているが、来年はこのカメラにより最適な交換レンズをいろいろ探して、ますます活躍の場を広げていってもらうつもりでいる。

そねはらのぼる:引っ越しをしたり新しい分野の仕事に携わらせていただいたりで慌しく過ごした2014年。来年はデジカメ Watchでも告知してもらえるよう何回か写真展を開催する予定なので、宜しくお願いします。

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カスタマイズして快適になった高感度フルサイズ機

ソニーα7S/永山昌克

ソニーα7Sで特に気に入った点は3つある。フルサイズ機としては比較的コンパクトなボディと、ノイズが少ない高感度画質、シャッター音がほぼ無音になるサイレント撮影機能だ。

使い勝手については、動体AFに物足りなさはあるものの、全般的には悪くないと思う。操作感を高めるために、ボディの2カ所に自分なりのカスタマイズも加えている。

そのひとつは、厚さ2mm程度のゴムを丸く切ってシャッターボタンの上に張り付けたこと。α7シリーズに共通した、ストロークの長いシャッターボタンの感触になじめないためだ。ゴムを付けてボタンの高さを上げたことで、気休め程度かもしれないが、レリーズ感は多少よくなった。

もうひとつは、付属のアイピースカップを取り外し、代わりにニコンのアイピースカップDK-24を装着したこと。これは、あえて不適合な社外品を取り付けることで、接眼部にあるアイセンサーの受光部を半分隠し、その感度を下げるためだ。

デフォルトの状態では、アイセンサーの反応が敏感すぎて不便に感じていた。例えば液晶モニターを上に向け、ウエストレベルに構えて撮影しようとすると、自分の身体にセンサーが反応して不用意にファインダー表示に切り替わってしまう。かといって、液晶モニターとファインダーの切り替えを手動で行うのは、いちいちメニューから設定する必要がありわずらわしい。

本来なら同社Aマウントの製品や他社製品のように、液晶をチルトした際はアイセンサーが無効になる仕様にして欲しい部分である。苦肉の策として、別のアイピースカップに交換した結果、アイセンサーの反応が悪くなり、カメラに顔を密着させた場合のみファインダー表示に切り替わるようになった、というわけだ。しかもDK-24は純正品に比べてやや薄型なので、液晶モニターを上から見る際、アイピースカップの厚みが邪魔になりにくいメリットもある。

どちらもスマートなカスタマイズとはいえないが、これによってα7Sの操作感はいっそう快適になった。仕事から作品、プライベートまで幅広く役立っている。特に夜の街を手持ちでスナップするのがとても楽しい。そんなカメラである。

ながやままさかつ:フォトグラファー。写真を使わずに写真の撮り方を解説する入門書「逆転の発想の写真の入門の本」(共著。エムディエヌコーポレーション刊)を先日発刊しました。来年はもっと撮ることに力を注ぎたいと思います。

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心地よいベルビアモードの色

FUJIFILM X-T1グラファイトシルバー/萩原史郎

ちょっとしたきっかけからFUJIFILM X-T1の貸し出し機を9月下旬頃から使う機会を得た。9月下旬と言えば2,000mを超える高山では紅葉が始まるタイミングだ。せっかくだから、風景写真のメッカである乗鞍へ持って行こうと決めた。まったく肩慣らしもしていなかったので、乗鞍での紅葉取材がぶっつけ本番だったのは内緒の話だが、そのたった1度の取材で惚れ込んでしまった。

惚れ込んだのは、なんと言っても色。フィルム時代からベルビアの色に傾倒していた身としては、X-T1が紡ぎ出すベルビアの色が心地良かった。記憶色と言うよりは、自分にとっての期待色を生み出してくれるX-T1に、色をテーマとする私は大いなる希望を見出した。乗鞍での結果をディスプレイで確認したとき、購入を即決したのは言うまでもない。

ただその段階でX-T1には11月にグラファイトシルバーモデルの登場がアナウンスされていたので、その美しいツートーンカラーに魅せられた私は、ブラックモデルではなくグラファイトシルバーモデルを待つことにしたのである。

そうして手に入れたX-T1グラファイトシルバーを使って、どんな表現に挑もうかと企みは膨らむ。X-T1グラファイトシルバーとともに初めて迎える冬の撮影が今から楽しみでならない。

はぎはらしろう:風景写真家。2014年は反省に次ぐ反省の日々を送った(どんな反省だったかは秘密)。2015年はその反省を生かしたいが、どうなる?。ちなみにCP+2015に出演します。どこかのブースでお会いしましょう。

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中判の楽しさを再認識させてくれる最高の相棒

PENTAX 645Z/塙真一

PENTAX 645Dユーザーである私にとってPENTAX 645Zの発表はとても心穏やかでないものでした。やっと645Dの分割払いも終わったばかりというタイミングで、ニューモデルが登場したのですから。ここで645Zを購入してしまえば、また支払は1からのスタート。

ですが、中判カメラならでは描写力を知ってしまっている私に、画質、機動性の進化した645Zはやはり見なかったことにすることはできませんでした。というわけで、「支払は振り出しに戻る」です。

といっても、645Zは正直、毎日持ち歩くカメラではありません。スタジオ撮影時か、または屋外でのポートレート撮影においての、ここ一発の飛び道具というポジション。レンズも含めればそれなりの大荷物になります。

いくら書き込みも高速化され、扱いやすくなったとはいえ、相当の覚悟がないと屋外撮影には持って行けません。その代わり、このカメラで撮った写真の立体感、リアル感といったらそれはもう快感の一言。CMOSセンサーを採用したおかげで、645Dよりも発色のクセは少なくなり、高感度にも強くなりました。

重さ、大きさを除けば、普通のデジタル一眼レフカメラとまったく同じ感覚で使えます。そして撮影後の上がりに関しては言わずもがな。やっぱり中判は楽しいと再認識させてくれる最高の相棒です。

はなわしんいち:写真家。今年は3年ぶりに個展も開催。東京と大阪の二都市でおこなうことができ、充実した一年でした。来年はポートレート撮影会&撮影教室を開催していこうかと計画中です。みなさんもポートレートを撮りましょう。

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コストパフォーマンスの高いX-Trans CMOS搭載機

FUJIFILM X-M1/HAMACHI!

人生で初の「海外旅行が懸賞で当たる」というビッグイベントで気が大きくなり、旅行直前の正月に購入したのが、FUJIFILM X-M1。上級機と同等のAPS-Cサイズ、1,630万画素X-Trans CMOSセンサーで光学ローパスフィルターレス仕様です。

上級機と比べれば、割り切らないといけないのはやはりコストを抑えたなと思わせるディテールと質感。そして、フィルムシミュレーションが少なく、最新モデルに搭載されているフィルムシミュレーションの「クラシッククローム」の機能アップデートから今のところ外れていること。これ、有料でもいいので、X-M1をXシリーズの中から仲間はずれにしないで欲しいです。

X-M1の圧倒的なアドバンテージは、コンパクトなサイズと重量と価格。理論的には、FUJIFILM X-Pro1と同じ画質で撮れるという満足感。なので1年経った今でも、X-Trans CMOSセンサー機でコストパフォーマンスの最も高いのがX-M1だと断言します。

撮って出しのJPEGで十分な高画質。Wi-Fi機能の搭載も機動力が高く、旅行に持って行くにもコンパクトで荷物がかさばらないので取り回しも良いです。いろいろなシーンで便利に使っています。

X-M1は、上級機を買ったつもりで浮いた分をレンズ購入費に充てられるのも魅力。で、買ってしまったのが、カールツァイスのTouit 1.8/32。32mmという画角は、FUJIFILM XFレンズとかぶらないのもいいですね。次はTouit 2.8/50か、ちょっと頑張って、XF 56mm F1.2 R APDかなぁ……と思っているところ。

はまち!:フォトブロガー。ブログは毎日更新を続けて,もうすぐ11年。カメラ量販店の富士フイルムのコーナーに置かれているユーザー作例集にも作品をピックアップして頂いています。来年はフルサイズ機か!?

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コンパクトで軽量なボディが街歩き撮影に向く

ニコンD750/藤井智弘

ニコンD800を愛用して約2年。仕事に、作品撮りに活躍してくれた。そして今年、ニコンD810が登場。ローパスフィルターがなく、画像処理エンジンはEXPEED 4。静かになったシャッター音や握りやすいグリップなど、大きな進化を感じた。

使ってみると、解像力の高さに驚いた。D800Eより、さらに解像力が高くなったように感じる。D800を売ってD810に買い替えるか。D810が発売されても悩み続けた。

そうこうしているうちに姿を現したのがD750だ。D810ほどのインパクトはないが、モノコック構造を採用したコンパクトで軽量なボディや、しっかり握り込めるグリップ、チルト式液晶モニターなど、機動力に優れた造りだ。

しかも51点AFや91KピクセルRGBセンサーなど、D810やD4Sに迫るスペックも持つ。画素数も2,432万画素あれば全く不満はない。シンクロターミナルはないが、ホットシューアダプターAS-15があるので問題ない。今度はD810とD750とどちらにするかで悩んだ。

D810の高解像力も魅力的だ。しかしその解像力を活かすには、レンズ性能はD800以上に気を遣わなくてはならず、撮影時もブレにシビアだ。街を歩いて撮ることが多い私には向いていないように思えた。しかも雑誌の仕事では、3,635万画素の必要性もほとんどない。自分にはD750の方が適している。そう判断して、D750に決定。

購入してすぐ仕事に使用すると、扱いやすく、高感度にも強い。D750にして正解だったと実感した。なおD800は、画素数重視やクロップ用に残した。まだD750は仕事の撮影中心だが、作品にもどんどん活躍してもらうつもりだ。

ふじいともひろ:今年はAF-S NIKKOR 58mm F1.4 GやAF-S NIKKOR 35mm F1.8 G EDを購入し、単焦点レンズにハマっている。ズームの便利さは求めず、構図や被写界深度を考えながら撮るのが楽しい。仕事はズーム中心でも、作品は単焦点をメインにしようと思っている。

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ピンクが決め手。年末に大活躍!

RICOH THETA m15/水咲奈々

2014年は今までに増して色々なカメラに触れることができました。

ブルーインパルスの撮影で多用したニコンのD4SとD610、子供撮影で活躍したD3300、グアムの旅のお供だったOLYMPUS STYLUS TG-3 Toughに、レビューでしばらく手元にあったOLYMPUS PEN Lite E-PL7は惚れこんでしまい先日購入。FUJIFILM X-T1は描き出される色味に感動して試用したその日に購入を決めました。キヤノンのEOS 7D Mark IIもいち早く触れてEOS 7Dからの進化を体感することができました。

そんな中での今年の私のヒットアイテムは名立たるレンズ交換式カメラを差し置いて「RICOH THETA」がトップに君臨しました。

11月に発売になったRICOH THETA m15は動画の撮影が可能になり、スマホへの転送速度が速くなったりと去年のモデルより機能がアップしたことももちろん重要なのですが、カラーリングにビビッドなピンクが登場したことも購入の強いきっかけになりました。長く愛用しているPENTAX Q7もピンクでカスタマイズしているくらい大好きなんです、ピンク!

さてこのTHETA、年末で人が集まる機会が多い今の時期に大活躍しています。まずシャッター音がかわいい。“ピヨッ”というシャッターとは思えない音は緊張を緩和してくれます。そして360度の全天球撮影はどこに人がいても写し込んでくれるので酔った頭でも気軽に撮影を楽しめます。撮影した写真が面白いのは、もう言うまでもないですよね。

スリムでシンプルなデザインなのでパーティーバッグにもすっきり収まります。スマホのアプリでリモート撮影もできるので、これから色々な遊び方を開発したいと思います!

みさきなな:2014年は赤ちゃんから戦闘機まで様々な被写体を撮影しました。でもまだまだ新しいことをやりたいし、もっと深くも追求したい! そんな欲張りテイスト満載で来年も走り続けたいと思います。

RICOH THETA m15

これぞホントのオールインワン

OLYMPUS STYLUS 1/桃井一至

仕事で偶然手にしたOLYMPUS STYLUS 1。これまでもセンサーサイズが同等のOLYMPUS XZ-1を使っていたが、STYLUS 1はレンズが28-300mm相当F2.8の高倍率ズームで、しかもボディは信じられないほどにコンパクト。無理な作りで性能も“並み”だろうと、たかをくくっていたところ、写りの良さにびっくり。

もちろんレンズ交換式カメラとすべてにおいて比肩というわけにいかないが、感度をISO800-1600程度に抑えれば必要十分な性能。さらにマクロ機能や外部ストロボの拡張性も備えて、記者的な仕事にはうってつけだった。実際、雑誌の簡単な取材であればカバーできるので、International CESやフォトキナといった大型ショーの撮影はこれで済ませた。

欠点らしい欠点が少ないのも特徴で、先ごろSTYLUS 1sへとマイナーチェンジが行われたが、完成度の高さゆえか、メスが入れられたのはソフト廻りが中心。やや強気な価格設定だが、これぞホントのオールインワン。少ない荷物の旅行から、攻める使い方まで、ユーザーにしっかり応えてくれる。

ももいかずし:昨年あたりから、レビュー依頼がEVF機に偏り気味。進化著しいジャンルを探求できるのはうれしいものの、OVF機の味見もしたい! しかし、その前にファインダーレス機が増えてきそうな予感(笑)

OLYMPUS STYLUS 1

満足度の高いお買い得モデル

EOS 70D/吉森信哉

ボクの場合、発売から暫く経った頃(1年以上だったり)に、そのカメラを買うことが多い。今回取り上げるキヤノンEOS 70Dも、この購入パターンに当てはまる。

今回のEOS 70は、外観デザインが使用中のEOS 60Dと“ほとんど同じ”ということもあり、あまり購入意欲をそそられなかった。もちろん、AFをはじめとする基本機能の進化には魅力を感じたけど。

しかし、発売から1年以上が経って、価格的にお買い得感が高くなってきたようだ。結局、ソコかよ(笑)。ということで、11月上旬に、EOS 60Dを下取りに出してEOS 70Dダブルズームキットを購入した。

その数日後、関西方面へ撮影に出かけたので、そこで早速EOS 70Dダブルズームキットと、出発直前に購入した広角ズームEF-S 10-18mm F4.5-5.6 IS STMを使用。

前述のとおり、外観デザインは従来モデル(EOS 60D)とほとんど変わらない。だけど、測距点が9点から19点に増え、ゾーンAFが搭載されたことで、動体撮影やスナップ撮影時の快適さが大幅にアップ。連写速度も5.3コマ/秒から7コマ/秒に大幅アップしていて満足度が高い。

前モデルEOS 60Dは、基本性能の高さが気に入って約4年使用した。そして、今回のEOS 70Dも、3年(発売から1年以上経っているので控えめ)くらいは使用したいナァ……と思っている今日この頃である。

よしもりしんや:フォトグラファー。一昨年にニコンD800を購入したのを契機に、ニコンはフルサイズ中心、キヤノンはAPS-C中心、というシステム構築が進行中。さてと、軽快なEOS 70Dのセットで、2泊3日程度の旅に出かけてみようかナ。

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“スマホで撮れない”の究極形

RICOH THETA m15/鈴木誠

全天球動画の撮影に対応したことから、THETAデビューに至りました。バンド練習の際、狭いリハーサルスタジオをぐるっと見渡すような映像を撮ってみたかったのです。

しかし、買ってみて実際に使っているのは静止画ばかり。特に、久々の仲間と集まった時に「いつも見ている表情」を手軽に撮っておける嬉しさは他にありません。転送・再生までの待ち時間は、インスタントフィルムの現像を待つようでもあり。

こうしてスマホと両立するカメラなので、おのずと一緒の時間が多くなっています。全天球からの切り出しで魚眼や超広角の画像を手軽に得られる面白さもありますし、使ううちにまた面白い撮り方が思いつくのではと思うと、本体のコンパクトさもあり手放せない日々です。

すずきまこと:1986年生まれ。本誌編集部員。デジタルライカでの練習を経て、夏前にライカIIIfで銀塩デビューしました。赤城耕一氏の暗室講座で“お座敷暗室”の設置を決意し、引き伸ばし機まわりの用品を探し集めてます。最近では業界の諸先輩方から「ライカ研究に熱心な人」と呼ばれるようになりました。生意気ですみません。

RICOH THETA m15