特別企画
メモリーカードの“ファームウェア更新”が可能に! ProGrade Digital「Refresh Pro」の新機能を試す
2023年6月1日 12:00
新しい機能が次々と搭載される現代のデジタルカメラにおいて、安全に撮影データを記録していくためには、品質の良いメモリーカードを使うだけでなく、新しいファームウェアが搭載されたカードを使うことも大事だ。特に歴史の浅いCFexpressではカメラやカードリーダーとの相性の問題が生じることがしばしばある。
そこで今回は自分でメモリーカードのファームアップを行えるProGrade DigitalのRefresh Proの使い方を紹介してみたい。
ファームウェアの重要性
Refresh ProはProGrade Digitalが提供するメモリーカードの健康状態の診断(ヘルス)やクリーンアップ(サニタイズ)を行えるソフトだ。同社のメモリーカードとカードリーダーを使うことでユーザー自身がメモリーカードのメンテナンスを行うことが出来るようになる(後述する適用条件あり)。
4月に公開された「Refresh Pro」 3.1では待望のファームウェアアップデート更新機能が追加された。メモリーカードのファームウェアアップデートは一般的にユーザー自身で行うことはできないため、それを個人でできるというのは画期的な試みだ。
もちろん、SDカードやCFexpressにはそれぞれの仕様が定められているため、ファームウェアが少し古いからと言ってただちに重大な問題が出ることは少ないが、接続先機器の細部の仕様は千差万別であり、人間が作ったソフトウェアである以上バグが存在している可能性もある。そのため、ユーザー自身がメモリーカードを常に最新版にアップデート出来ることは将来にわたって安心してメモリーカードを使い続けられることに繋がるのだ。
具体的な効能
ではメモリーカードをファームウェアアップデートすることでどのようなメリットが生じるのだろうか。具体的には次の3つが考えられる。
- カメラ(カードリーダー)との相性問題の改善
- 機能向上、新機能の追加
- バグの解消
メリット1:カメラ(カードリーダー)との相性問題の改善
まずは「カメラ(カードリーダー)との相性問題の改善」について。メモリーカードはカメラ(カードリーダー)と常にコミュニケーションをしながら通信が行われるのだが、このコミュニケーションが上手くいかない場合がありこれが俗に相性問題と言われる。
メモリーカード規格にはそれぞれの仕様が細かく定められているものの、カードやカメラは、何らかの事情で規格仕様通りに動作しなかった場合でも、スムーズに動作するように、規格値に対し余裕を設ける場合がある。例えば、これはイメージだが、A社のカメラではカードからの応答が1秒以上かかるとエラーになるが、B社のカメラは2秒以内ならセーフといったような状況が起こりうるのだ。
このような細かな仕様の違いによりエラーになる状況が生じた場合は、メモリーカードのファームウェアをアップデートすることで正常な通信が行えるようになる可能性がある。
このような問題はカメラ側のファームウェアのアップデートで改善できることもあるが、カード側でもアップデートで改善することができるのであれば、カードメーカーにとってはより速やかに相性問題を解決することができる。メモリーカードの互換性はより高まり、信頼性の高いカードへと進化することになるだろう。
メリット2:機能向上、新機能の追加
つぎの「機能向上、新機能の追加」については、今後もしメモリーカードの仕様が新たに策定され、新機能が追加された場合にファームウェアアップデートで実現可能な機能であるならそれを追加できる可能性があるというイメージだ。メモリーカードの機能はハードウェアの性能との兼ね合いもあるため、過度な期待はできないが手元のカードを将来の最新規格に沿った内容にアップデートできる可能性がある。
メリット3:バグの解消
最後のバグ対策についてはみなさんのイメージ通りだ。ファームウェアは人間が作るものである以上、何らかのバグが紛れ込んでしまうこともあるし、将来、何らかの仕様が変わったときに表面化してくるような不具合もあるかもしれない。場合によってはカメラ側の問題をメモリーカード側で回避できる可能性もある。
これをユーザー側で対策できれば安心してメモリーカードを使い続けられるだろう。
もちろん、最新のファームに新たなバグが潜んでいるという可能性もゼロではないため、現状問題なく使えているカードであればファームウェアアップデートしないという選択もありだとは思うが、ProGrade Digitalの場合は膨大なメモリーカードのノウハウを持っておりカメラとの互換性チェックもしっかり行っているため、基本的には最新のものを使っていくほうが安心だろう。
ファームウェアアップデートをしてみた
前置きが長くなってしまったが、実際に「Refresh Pro」でメモリーカードのファームウェアアップデートを行ってみたのでその手順を紹介していこう。といっても、やり方は非常に簡単だ。
まず、準備するものはProGrade Digital製のメモリーカード、カードリーダー、ソフトウェア(Refresh Pro)の3つで、ファームウェアアップデートに対応する製品であることが条件だ。
メモリーカードはProGrade Digitalが公表する以下の表を参照してほしい。
CFexpressであればラベルに「1700MB/s」表記があるもの(COBALT、GOLD共に)、SDカードなら2023年以降に販売された新しい製品と覚えておけばOKだ。
カードリーダーの対応は以下の通りだ。多くのユーザーが使っているであろうUSB3.2 Gen2ダブルスロットカードリーダーであればWindows、Mac共に利用できる。高速なThunderbolt3リーダーはMacでのアップデートに対応していない点に注意だ。
Refresh Pro 3.1はProGrade Digitalデジタルの公式サイトからダウンロードできる。英語のサイトだが「DOWNLOAD WIN TRIAL」または「DOWNLOAD MAC TRIAL」のアイコンをクリックするだけで6カ月間フル機能が使える体験版がダウンロードできる。
インストール手順は一般的なソフトと同じだ。ソフト立ち上げ後は日本語表示になるので安心してほしい。「無料トライアル版」を選択し、氏名(ローマ字)やメールアドレスの登録をすれば準備完了だ。
体験期間経過後は年間9.99ドル(執筆時約1,385円)+消費税でライセンスコードを購入可能だ。私は実際にライセンスコードを購入しているが、特に難しい手続きは無くメールに送られてきたライセンスコードをソフトに登録するだけで1年間利用可能になる。
なお、製品版は1ライセンスにつき1台のパソコンに有効だ。
ファームウェアアップデートの手順
ファームウェアアップデートの手順は、Refresh Proを立ち上げてファームウェアアップデート対応のカードをリーダーに刺すだけだ。最新ファームが用意されている場合は以下のようなメッセージが自動的に表示される(インターネットへの接続が必要)。
非対応のカードや対応カードであってもファームウェアアップデートの必要がないものはファームウェアアップデートの項目が選択できないようになっている。
あとは右上の「開始」ボタンを押すだけだ。私の環境(Windows11、CFexpress TypeB 325GB COBALTとCFexpress TypeB/SDデュアルリーダー(PG05.5))では1分未満で完了。あっけないほど簡単だった。
「開始」を押すと以下のメッセージが出てくる。ファームウェアアップデートで内部のデータが消えることはないようだが、念のためデータのバックアップは取っておこう。
アップデート中はパソコン上でカードの取りだしと認識が何度か発生するが、終了するまで何もせずに待っておこう。終了メッセージが出るまでカードやリーダーを引き抜くことは厳禁だ。
ファームウェアのバージョンは「カード」の項目の「i」アイコンにマウスポインタを乗せると表示される。EDFM30.5からEDFM30.7へバージョンアップされたことがわかる。
ちなみに、自身でファームウェアをダウングレードすることはできない。
ファームウェアアップデート後は今まで通りカードを利用すればOKだが、「Refresh Pro」を初めて使うなら、カードのディープクリーニングができる「サニタイズ」を実行しておくのがおすすめだ。さらに「ヘルス」で健康状態もチェックすれば今後も安心してカードを利用できる。
まとめ
以上がメモリーカードをファームウェアアップデートすることの意義とProGrade Digital製のメモリーカードをファームウェアアップデートするための手順だ。
最近のメモリーカードは大容量化が進んでいるため、カードに万が一のことがあればその代償も大きなものとなる。また、数万円もするカードがファームウェアによって利用に制限が出たり、本来の性能を発揮できなくなるリスクもゼロとは言えない。
メモリーカードのファームウェアアップデートを自分で手軽に行うことができれば、これらのリスクを大きく低減できる可能性があるため、今回のProGrade Digitalの取り組みは画期的なものだといえるだろう。安心して長くメモリーカードを使い続けたい場合は今後「ファームウェアアップデートが可能かどうか」にも着目してカード選びをしてはどうだろうか。
制作協力:プログレードデジタル