特別企画
風景写真家の表現力と機動力をバックアップするL型ズーム…Canon RF14-35mm F4 L IS USM
2023年5月19日 08:00
新緑が美しい季節がやってきた。風景写真家にとって、被写体に事欠かないわくわくするシーズンのスタートだ。そんなみずみずしい風景を、さまざまな風景で切り取るのにおすすめしたい広角ズームレンズを紹介する。
●SPECIFICATION
対応マウント:キヤノンRFマウント
レンズ構成:12群16枚
絞り羽根枚数:9枚
最小絞り:F22
最短撮影距離:0.2m
最大撮影倍率:約0.38倍
フィルター径:φ77mm
外形寸法(最大径×全長):約84.1×99.8mm
質量:約540g
●実勢価格
23万6,500円(キヤノンオンラインショップ参考価格・税込)
1969年大阪府生まれ。20年前にIターンで鳥取県へ。名峰・大山(だいせん)を主に、地元山陰地方の風景を切り撮る。株式会社LANDSCAPE DESIGN代表。2013年、写真集『瞬〜matataku〜』(今井出版)を出版。現在、プロから学ぶ“47都道府県を巡る”プリントセミナー「写真はプリントだ!全国ツアー Road to 2026」の講師を務める。
※本企画は『デジタルカメラマガジン2023年6月号』より抜粋・再構成したものになります。
お気に入りのポイント
POINT1——全長約10cmの コンパクトサイズ
ミラーレスカメラのコンパクトなボディサイズを最大限に生かす、短い全長を実現している。EOS R6 Mark IIに装着した場合でも、カメラと合わせた全長は約176.55mmとなっている。ズーム時も全長はそれほど変化しない。開放F値が固定しているRF広角ズームレンズの中でも最軽量。高い機動力が風景写真家に支持される理由だ。
POINT2——14mm時は約114°の対角線画角となる
50mmの標準域の対角線画角は45°程度。14mmで114°の範囲を写し込むことができると、肉眼とはまた違ったダイナミックな世界を表現することができる。一般的な広角ズームレンズの広角端である15mm時よりも4°広い表現が可能になるので、風景写真において高いアドバンテージが持てる。
色彩豊かな初夏の風景にアクティブに挑戦したくなる……創作意欲を刺激する1本
広角レンズと聞いて、単に広く撮ることができるレンズと思っている人も少なくはないだろう。このレンズの注目すべきポイントはその最短撮影距離。被写体から20cmまで接写が可能で、大胆なワイドマクロ表現もお手の物。風景写真の世界において、新たなイメージやアイデアを具現化できる画期的なレンズと言って良いだろう。
似たレンジのRF15-35mm F2.8 L IS USMよりも300gほど軽いボディサイズも魅力だ。風景撮影の場合、山や森の奥深くを歩き回るため、できるだけ荷物は軽くしたい。小型・軽量化が進むミラーレスカメラにおいて、こうしてフルサイズに対応する広角ズームがコンパクトになることは、撮影エリアが広がることも同時に意味している。
レンズ単体で5.5段分の効果がある手ブレ補正機構にも注目だ。夕景や夜明け、山や森の中など、光量の少ないシーンでその利点を最大に発揮してくれる。三脚に頼らざるをえなかったシーンでも、自信を持って手持ちで勝負できるのは心強い。
これらの特徴をフルに生かすことができれば、見慣れた場所であってもまだ見たことのない新たな発見を写真で表現できる。風景写真家にとって特別なレンズなのだ。
ギャラリー
四方につるを伸ばす最適な姿を、さまざまな角度と焦点距離で探せるのは広角ズームならではのメリット。夜闇を背景にして満開を迎えていた藤。広角端のパースをフルに活用して降り注ぐような藤の花を表現した。
RFレンズの特徴でもある強力な手ブレ補正機構は、レンズ単体で5.5段分もの効果が期待できる。EOS R6 Mark IIとの組み合わせなら、カメラとの協調ISでさらなる効果が見込める。
新緑が芽吹き始めた大山の木谷沢渓流は雨のため水量が豊富だった。この流れをダイナミックに表現しようと川の中へ入り、ローレベルで撮影。水しぶきを受けないギリギリまでしゃがみながら不安定な石の上に置いて撮影したが、強力な手ブレ補正効果で苔や草の1本1本に至るまでまったくブレが見られない。単に手持ち撮影のフィールドが広がるだけでなく、表現方法の新たな可能性を示してくれた。
このレンズの特徴として、ズーム全域で被写体に20cmまで近接できる利点がある。最短撮影距離まで近づくことで広い画角だけでなく、マクロレンズ的なアプローチもできる。広角端付近で撮影すればワイドマクロとなるし、望遠端付近で撮影すればゆがみのないマクロ表現が可能だ。
命の芽吹きを表現したい新緑の森ではこのメリットが最大に生きてくる。雨上がりにふと足元を見ると、春とともに芽吹き始めた小さな若葉にいくつもの水滴が付着していた。コロコロとした水滴の立体感はとてもリアルで、そのキレのある描写と鮮明なディテール再現にも驚かされた。
大山に向かって流れていく雲と、その隙間から顔をのぞかせる天の川、そして伯耆富士とも称される西側からの大山の雄姿を長時間露光した。
F4の開放F値でもしっかりと星は写っているし、暗部の描写もクリアで美しい。14mmの強いパースを生かして雲のラインで集中線を描き、奥行きのある写真を狙った。四隅が流れることなく画像周辺部の質感描写が美しい点も好印象だ。F値が明るいレンズに遜色ない星空写真が撮影できる。
制作協力:株式会社キヤノンマーケティングジャパン