特別企画
【実写比較】iPhone 14 Pro MaxとiPhone 12 Pro Max
プロカメラマンの買い換え満足度は?
2023年1月30日 07:00
毎年秋は、日本でいちばん人気のあるスマホ「Apple iPhone」の新製品が話題になる。「iPhone 14シリーズ」は2022年9月16日に発売になった。前年モデルと同等のA15 Bionicを採用した2カメラモデル「iPhone 14」と、新チップA16 Bionicと3つのカメラを搭載する「iPhone 14 Pro」の2ラインが展開。それぞれに、画面を6.7型と大きくした「iPhone 14 Plus」と「iPhone 14 Pro Max」が用意されている。
私は約2年半前に「iPhone 12 Pro Max」を購入して愛用していたが、発売日に「iPhone 14 Pro Max」を新たに購入したので、カメラ性能について両者の違いを含めてレポートしてみたいと思う。
画素数:1,200万画素の見識と「48MPクアッドピクセルセンサー」
多くの人に最も注目されるスペックは、メインカメラの「画素数」だろう。iPhoneは2013年発売のiPhone 5Sからこれまで、メインとなるカメラにずっと1,200万画素のセンサーを採用し続けてきた。
これは他のスマートフォンと比べて、今となっては相対的に小さく感じるが、カタログや写真集などの商業用高精細印刷でもA4サイズいっぱいにプリントできるほどの解像度だ。
しかしiPhone 14 Proシリーズのメインカメラ(そのうち広角カメラ)には「48MPクアッドピクセルセンサー」が採用され、7年ぶりに画素数が増えたのだから、注目を浴びないはずがない。
だが、さすがは無闇に画素数アップを図ったのではないなと感心させられたのが、通常の撮影では常に1,200万画素で記録されるところ。ピクセルビニングという、4つの画素をひとつの画素として扱うことで、擬似的な1,200万画素センサーとして使う手法だ。
これにより、高解像度化で画素ひとつあたりの面積が小さくなったことによる感度低下を防げるし、記録画素数は基本そのままなので、iPhone本体のストレージがいっぱいにもなりにくく、日常的なSNSへの写真アップなどでも、無駄なデータ通信量やアップロード時間を使わずに済むようになっている。
では、4,800万画素のメリットは?
ひとつめは、3つのカメラでありながら4つの焦点距離が選べるようになったこと(以下、35mm判換算での焦点距離)。
・13mm相当の超広角カメラ(0.5倍)
・24mm相当の広角カメラ(1倍)
・48mm相当。広角カメラ48MPセンサーの中心クロップ(2倍)
・77mm相当の望遠カメラ(3倍)
これがそれぞれのカメラの画角と、画面上でのズーム倍率表記だ。iPhone 14 Proシリーズでは、この1倍時に使用する4,800万画素のセンサーの中心部のみをクロップすることで、1,200万画素の「2倍相当」の仮想レンズとしても使用する。どの倍率でも解像度をきっちり保ったまま画角の選択自由度を高めているというわけだ。もちろん、クロップにはなるが、ピンチ操作で中間画角に設定することもできる。
以下は、各焦点距離での撮影。特に超広角レンズでの撮影時、画面周辺部のシャープさがiPhone 12 Proの世代より確実に進化していることが感じられた。
そして4,800画素センサーを採用する広角カメラは、記録設定をRAWにすることで4,800万画素での記録も可能になっている。試しにApple ProRAW形式で4,800万画素記録を行ってみたが、写真1枚の容量が114MBにも及ぶなど、ハンドリングしやすいとは言えない。そのため一般ユーザーは特に意識をしない限り、これまで通りの1,200万画素カメラと同様に扱えるようになっている。
暗所
前述の通り、広角のカメラは画素数が増えたため、高感度性能は一見、不利なのではないかと感じられる。だが実際にはピクセルビニングを使って同等の画素数の記録とし、センサー全体でのサイズアップもしていることも手伝って再現は良好。屋内のような薄暗いところから夜景まで、シーンを気にせず撮影できるように進化していると感じられる。ノイズの減りも確認できるが、暗いシーンでの解像感のアップが印象的に感じられた。
マクロ
私がこれまで使っていたiPhone 12 Pro世代と比べると、超広角カメラがAFに対応しているのも嬉しいポイント。これによってレンズ前約3cmくらいまでピントが合うようになっている。
面白いのは広角メインカメラで撮影している時でも、レンズ前19cm程度に近づくと自動的にカメラが超広角に切り替わり、マクロモードに突入してくれること。これはiPhone 13 Pro世代のアップデートで初登場した機能だ。
強化された動画手ブレ補正「アクションモード」
動画撮影機能で注目したいのは「アクションモード」。これは、電子式手ブレ補正の補正範囲を広げることで、まるでアクションジンバルを使ったように大きなブレを吸収してスムーズに見せてくれるもの。記録解像度は2.7Kが最高となり、実写映像では解像感の低下も見られるが、歩きながら、走りながらの撮影がiPhone単体で行えるのはとても便利だと感じられた。
ポートレートモードも進化
2倍と3倍の画角を選べるようになり自由度が高まった「ポートレートモード」。ピントを合わせた人物の背景に、デジタル処理によるボケを与えるモードだが、今回は後ボケに加えて前ボケもシミュレーションされるようになり、より表現の幅が広がっている。前ボケがわかりやすいシーンで比較撮影してみた。
フロントカメラもAF化
ディスプレイ側のフロントカメラも、いよいよAFが搭載された。そう、これまでのiPhoneでは、フロントカメラは全機種、ピント位置は固定されていたのだ。多くの場合、それでも不便は感じなかったのだがAF化により、より近くの被写体もくっきりと写せるようになった。目元の極端なアップなどの撮影もこなせるようになり、より自由度が増したといえる。
まとめ
今回の比較撮影を通じて感じたのは、各カメラのセンサーサイズが徐々に大きくなっていることに加え、独自のソフトウェア技術がより“見た目に近い”写真を生成するのにとても役立っているなということ。本格的なレンズ交換式カメラで仕事をするときにはマニュアルモードしか使わない自分なのに(オートで露出や色が暴れるのが面倒)、iPhoneではマニュアル撮影が使えるアプリよりも、フルオートで使える純正のカメラアプリの方がずっと結果がよく、使い勝手も秀逸。画角の選択肢も増えたことで、エブリデイカメラとしての完成度がますます高まった印象だ。