特別企画
ロングセラーがリニューアル!「HD PENTAX-FA Limited」 古き良き味と最新コーティングの組み合わせはいかに?
31mmF1.8 Limited / 43mmF1.9 Limitedレビュー
2021年4月28日 07:00
35mmフルサイズ用の名レンズ「PENTAX FAリミテッド」シリーズが、「HD PENTAX-FA Limited」シリーズとしてリニューアルされました。
ラインナップは以下の3本。FAリミテッド独自の焦点距離も健在です。
・HD PENTAX-FA31mmF1.8 Limited
・HD PENTAX-FA43mmF1.9 Limited
・HD PENTAX-FA77mmF1.8 Limited
特徴的な外観はほぼそのままに、透過率が高い「HD(High Definition)コーティング」を新たに採用したほか、円形絞りの搭載やレンズ前面にSP(Super Protect)コーティングを施すなど、現代的なアレンジも盛り込まれています。
古くからのファンが多いFAリミテッドをこのタイミングでリニューアルして発売するということは、PENATXが引き続きKマウントを継続することを表します。このミラーレス全盛時代において、一眼レフへの注力を宣言するにも等しいといえるでしょう。
そこでデジカメ Watchでは、開発時から「HD PENTAX-FA Limited」シリーズを試用してきたフォトグラファーに、その特徴を解説してもらいました。
今回は「HD PENTAX-FA31mmF1.8 Limited」「HD PENTAX-FA43mmF1.9 Limited」の2本を塙真一さんが解説します。(編集部)
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HD PENTAX-FA31mmF1.8 Limited
31mmと他社にはない焦点距離となるが、28mmと35mmの中間という感じの画角はスナップに最適だと感じる。足を使うことで28mmのようにも35mmのようにも使えるというところだ。
鏡筒は35mmフルサイズ対応のAFレンズとは思えないほどコンパクト。アルミ削り出し外装を採用し、どことなくオールドレンズのような佇まいが撮影者の心をかき立ててくれる。
描写に関しては絞り開放からキリリとシャープでピント面を細密に描いてくれる。それでいて、広角レンズらしくグッと被写体に寄ったシーンでは開放F1.8のぼけを活かした写真が撮れるのも嬉しい。
HDコーティングとなったことで今まで以上に逆光でも積極的に被写体に向かえるようになったのだが、それでも従来型のsmc PENTAX-FA31mmF1.8AL Limitedと同様、このレンズ独特の開放絞りでの周辺光量落ちは健在。一般的に周辺光量落ちは少ないほうが良いとされるかもしれないが、このレンズの魅力は中央付近に配置した被写体をグッと引き立たせてくれるこの描写特性にこそあると感じている。レンズの特性を知ることでより愛着が湧いてくるという希有なレンズなのである。
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開放からキリッとした描写は都会のスナップにもよく似合う。画面中央部の信号機にピントを合わせているが、PENTAX K-1 Mark II(以下、K-1 Mark II)の解像力の高さと相まって、ピント面は極めてシャープ。それでいて、周辺部が少し落ちている感じがビルに囲まれた街角の感じを上手く表してくれている。
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コントラストの高さとヌケの良さは金属などの質感を的確に再現してくれる。全画面で写真全体を見るとそれほど大きなぼけは感じられないが、100%表示で見るとピントを合わせた消火栓からその前後にいくに従って自然にぼけていっていることが分かる。開放絞りから高い解像力が得られるこのレンズだからこその立体感といえる。
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薄氷が張った湖を照らす雲間の夕陽。F5.6に絞って撮影した。夕陽に照らされた湖面の氷がオレンジ色に輝いていて美しかった。31mmという焦点距離は風景写真でも見た目に近い画角となってくれるため、目で見ているものを素直に写してくれ使い勝手が良いと感じる。
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何気ない海辺の景色だが、F1.8の開放絞りで撮ることで草むらの前後ぼけが良い感じの奥行き感を醸し出してくれた。ピントを合わせた草木の描写は言うことなしだ。この写真を見たとき、現代レンズのシャープさとオールドレンズのような滲んだ感じのぼけが共存しているのかなという印象を受けた。
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夕陽に光る海を撮影したのだが、重たい曇り空の感じがイメージに合わず、あえてホワイトバランスを「白熱灯」に設定している。このように画面内に太陽が入り込むようなシーンでもゴーストやフレアを気にする必要がないのはHDコーティングの恩恵だろう。
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HD PENTAX-FA43mmF1.9 Limited
こちらも43mmという独特な焦点距離だが、50mmと35mmの間をとった画角という印象だ。ファインダーを覗くと、一般的に標準レンズと言われる50mmとは違う世界が見える。35mmほど広角ではないが、それでもいつもの標準レンズ感覚でいるとその視野の広さに驚かされる。一言でいえば、上級者向けの使いこなし甲斐のあるレンズといえよう。
描写はどちらかといえば柔らかな感じ。HD PENTAX-FA31mmF1.8 Limitedのキリッとシャープな描写に比べると、優しくて階調性を重視した描写となる。何気ない日常を撮るスナップでも、このレンズを付けてファインダーを覗くと優しい気持ちになれる気がするから不思議だ。
といっても、決して描写が甘いという話ではない、ピント面はしっかりと解像してくれるが、線が細く繊細な印象の仕上がりという感じだ。
HDコーティングとなったことで、逆光性能だけでなく、順光時でもヌケが良くなったと感じる。K-1 Mark IIに装着すると、まるでパンケーキレンズのように見えるほどコンパクトな鏡筒にはHD PENTAX-FA31mmF1.8 Limitedと同様の七宝焼きフィンガーポイントを新設。そういった細かなこだわりにいとおしさを感じてしまうのは私だけだろうか。
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パンフォーカスを狙わずにわずかにぼけを入れることで階段の奥行き感を出すようにした。新たに円形絞りを採用したことで、絞りを少し絞ったときでもぼけは硬くならず、自然なぼけとなってくれる。ピント面の部分も決して線が太くならず、柔らかさが感じられるのが良い。
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開放絞りのF1.9で桜の花を狙った。ピント面はシャープだが、その前後の花びらは少し滲んだようなぼけとなっている。このぼけ味こそがこのレンズを使う醍醐味だと感じる。決してうるさいぼけというわけではなく、このレンズならではのクセのあるぼけが楽しい。
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シャッタースピードを1/8秒にして通行人の動きをぶらすようにした。43mmは手ぶれ補正機能のない軽量コンパクトなレンズだが、K-1 Mark IIにはボディ内手ぶれ補正があるため、このようなシーンも手持ちで楽々とれるのが良い。ピント面となるガラスの質感も見事に再現してくれた。
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真冬の湖岸に打ち寄せられた氷の塊。背景には沈みゆく夕陽があるという難しいシーンだが、このような場面でもこのレンズは柔らかなトーンに仕上げてくれる。F2.5と開放から1段ほど絞っての撮影だが、これくらいの絞りが一番このレンズのぼけの美味しいところという気がした。
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50mmレンズだと寄りすぎてしまい、35mmレンズだとパースが強調されすぎてしまうような場面にピッタリなのがこの43mmという画角。被写体にグッと寄ってもそこそこ広く写ってくれるし、それでいて遠近感が強調されすぎないのがよい。F2.8まで絞ってもこのレンズらしい優しさが感じられる描写が損なわれることはない。
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まとめ
PENTAXとして久しぶりに登場したフルサイズ用Limitedレンズ。今回のレビューでは登場しなかった中望遠レンズ HD PENTAX-FA77mmF1.8 Limitedと合わせて、合計3本のレンズがリニューアルされた。これらのレンズの最大の魅力はアルミ削り出し鏡筒を採用する工芸品ともいえる質感。そして、最新のHDコーティングが施されたことによる光学ガラスの塊としての美しさだろう。
smcコーティングのLimitedレンズに比べると、HDコーティングされた31mmと43mmはどちらもヌケがよく、よりクリアな写真が撮れるようになったと感じる。
といっても、レンズ構成そのものに変更はないため、2本のレンズともに、そのレンズらしい味わいとクセは残されている。時を経た分だけ少しだけ優等生になったのがHD化されたレンズという印象を受けた。
Limitedレンズという位置づけは、AFの速さなどといった最新レンズにありがちな売り文句ではなく、それぞれが個性を持って主張する描写力なのだと思う。
その個性を味方に付けて、自分らしい写真を撮ることに楽しさを覚える。さらに、光学ファインダーを持つ一眼レフだからこそ、レンズを通した光をそのまま肉眼で感じ取ることができる。便利さや安直さとは違う価値観で写真を楽しむことができる。
PENTAXのカメラとLimitedレンズの組み合わせはまさに撮ることへのこだわりが得られる、写真のための道具なのではないだろうか。
※後日、HD PENTAX-FA77mmF1.8 Limitedのレビューもお届けします。
制作協力:リコーイメージング株式会社