新製品レビュー

ソニー α7 V

部分積層型センサーと画像処理エンジンがもたらす“着実かつ本質的な進化”

ソニーから新たに登場した「α7 V」は、35mmフルサイズセンサーを搭載するミラーレスカメラだ。

ソニーαの中核となる、“スタンダードα7シリーズ”の最新モデルという重要な位置づけを担っている。2021年12月に発売された前モデル「α7 IV」から約4年を経て登場した、待望の後継機でもある。

外観

外形寸法は約130.3×96.4×82.4mmで、質量は約695g(バッテリー、メモリーカード含む)。前モデルの「α7 IV」は約131.3×96.4×79.8mmで、本機はそれと比べてもサイズ感に大きな違いはない。数値上はわずかな差異があるものの、実際の使用感はほぼ同等で、α7シリーズらしいプロポーションはしっかりと維持されている。

この「変わらず使い続けられる」感覚こそが、大幅な機能進化があったとしても、ベーシックモデルであるα7シリーズの大きな特長だと感じる。

操作性

ダイヤルやボタン類の配置に大きな変更はなく、基本的には前モデルの「α7 IV」の操作性を踏襲している。操作性の完成度にはすでに定評があり、あえて大きく手を入れる必要がなかった、という見方もできるだろう。

シャッターボタン周辺の造形も、α7シリーズの意匠を踏襲したものだ。曲線を意識したα1シリーズやα9シリーズの最新機種とはデザインの方向性が異なり、あくまで中堅モデルのα7シリーズを重視した路線が維持されている。

ファインダー(EVF)も、有機ELの0.5型で約368万ドットと、前モデルとほぼ同じ仕様で、ここに大きな変更はない。ただし、このクラスの中堅モデルとして見れば、性能面で不足を感じるものではなく、現実的かつ妥当な仕様だと言えるだろう。

一方で背面モニターは、前モデルの3.0型・約103万ドットから、3.2型・約210万ドットへと精細感が大きく向上している。加えて見逃せないのが、これまでα1シリーズやα9シリーズの最新機種に採用されてきた「4軸マルチアングル液晶モニター」が本モデルにも搭載された点だ。横位置・縦位置を問わず光軸を揃えて撮影できるという優れた仕組みで、この仕様だけでも「α7 V」を選ぶ理由があると、個人的には強く感じた。

メモリーカードスロットは、「スロット1」がCFexpress Type AとSDメモリーカード(UHS-IIまで準拠)、「スロット2」がSDメモリーカード(同じくUHS-IIまで準拠)という構成で、前モデルから変更はない。上位モデルは両スロットともCFexpress Type Aカードに対応するため、その点において差別化はあるものの、CFexpressカードが使用できることの意味は大きいと思う。

前モデルではmicro USB端子とUSB Type-C端子を併載していたが、本モデルではmicro USB端子が廃止され、USB Type-C端子が2基搭載された。いずれもUSB Power Delivery(USB PD)に対応しており、充電/給電はもちろん、PCやスマートフォンとの接続も柔軟に行える。現代的な使用環境を素直に反映した、現実的な構成と言ってよいだろう。HDMI端子は前モデル同様、フルサイズを採用している。

撮像センサーと画像処理エンジン

搭載する撮像センサーは、有効約3,300万画素の35mmフルサイズ「Exmor RS CMOSセンサー」だ。有効画素数自体は前モデルと同じだが、本モデルが決定的に異なるのは、部分積層構造の撮像センサーを採用している点にある。上位モデルであるα9シリーズやα1シリーズには及ばないものの、この採用によってα7シリーズも本格的にスピード性能を手に入れたと言ってよいだろう。

また、画像処理エンジンも従来の「BIONZ XR」から「BIONZ XR2」へと進化している。処理性能が全般的に向上しただけでなく、これまで独立して搭載されていた「AIプロセッシングユニット」を最初から内蔵している点も特長だ。部分積層型センサーとの組み合わせにより、より高度で高速な処理が可能になったというわけだ。

広角で建物を撮影したこの作例を見ても、撮像センサーや画像処理エンジンに起因すると考えられる画質上の瑕疵は見当たらない。スピード性能については後述するとして、少なくとも画質面においては、前モデルと比べて同等以上と捉えてよいだろう。

α7 V/FE 28-70mm F3.5-5.6 OSS II/37mm/絞り優先AE(1/25秒、F8.0、-1EV)/ISO 100

部分的にでも積層型構造が採用されたことで、高感度性能への影響を懸念する向きもあるかもしれないが、実際のところは杞憂に過ぎないだろう。本モデルの常用感度域は前モデルと同じくISO 100~51200で、数値上の扱いに変化はない。

常用最高感度ISO 51200で撮影したのが下の作例。さすがに等倍ではノイズ感が確認できるものの、SNSなどでの利用を前提とすれば、画質は十分に保たれている。直接比較したわけではないが、前モデルと比べても実用上問題のない高感度耐性があるといった印象だ。

α7 V/FE 28-70mm F3.5-5.6 OSS II/57mm/絞り優先AE(1/1,000秒、F5.0、-0.7EV)/ISO 51200

AFと高速連続撮影性能

動体撮影機能は大きく進化しており、上位機種である「α9 III」や「α1 II」に搭載されていた「プリ撮影」機能も本モデルに採用された。シャッターボタンを半押しした状態から全押しした瞬間を起点に、最大1秒分さかのぼって画像を記録する仕組みで、鳥の飛翔など、人の反応速度では捉えきれない瞬間にも対応できる。連写速度は本モデルの連写最高速度と同じ30コマ/秒で、機能面での制約は特に感じられない。

前々モデルの「α7 III」から搭載された被写体検出機能(当初はファームウェアでの対応)も着実に強化されている。前モデルの「α7 V」では検出対象が「人物・動物・鳥」の3種類に限られていたが、本モデルでは「オート・人物・動物/鳥・動物・鳥・昆虫・車・列車・飛行機」の9種類へと拡張された。AIによる機械学習や深層学習の進展が、こうした対応範囲の広がりにつながっていると見てよいだろう。ちなみに「α7 V」にはまだAIプロセッシングユニットは搭載されていなかった。

それで何ができるかといえば、これらの高機能が組み合わさることで、これまで撮影が難しかった“瞬間”を、比較的誰でも狙えるようになったという点に尽きる。ソニーのデジタルカメラでは上位機種の特権だった領域が、スタンダードモデルでも扱えるようになった意義は大きい。

α7 V/FE 400-800mm F6.3-8 G OSS/800mm/シャッター優先AE(1/1,600秒、F8.0)/ISO 12800

動画撮影性能

本モデルは動画撮影においても本格的な機能を備えている。記録可能なフォーマットは最大4K60p(4:2:2 10bit)に対応しており、これは前モデルから引き継がれた。加えて新開発の画像処理エンジン「BIONZ XR2」と、部分積層型CMOS撮像センサー「Exmor RS」の組み合わせにより、画素加算を行わない全画素読み出しを実現している点にも注目したい。動画性能を重視するユーザーにとっても、十分に実用的な仕様と言えるだろう。

今回は、本モデルにおける最高画質設定となる4K60pでサンプル動画を撮影した。4K動画に必要な情報を、7K相当のデータからオーバーサンプリングして生成しているため、モアレやジャギーの発生を抑えつつ、ディテール再現や解像感に優れた4K60p映像が得られている。

作例

前モデル「α7 IV」には、被写体の形状や動きを高精度に認識する「AIプロセッシングユニット」は搭載されていなかったが、本モデルでは画像処理エンジンと統合された形で初めて搭載されている。被写体認識性能の向上は体感的にも明確で、対応する被写体であれば、ピント合わせはほぼカメラ任せで撮影可能だ。

α7 V/FE 50mm F2.5 G/50mm/絞り優先AE(1/100秒、F2.5、-0.7EV)/ISO 400

「4軸マルチアングル液晶モニター」が本モデルにも採用されたことは、まさに朗報だ。横位置でのローアングル撮影も、従来のバリアングル式のように引き出して回転させる必要がなく、1アクションで完了する。この点は、静止画撮影派にとっても動画撮影派にとっても喜ばしいところだろう。

α7 V/FE 28-70mm F3.5-5.6 OSS II/40mm/絞り優先AE(1/25秒、F4.5、+0.7EV)/ISO 100

最大約16ストップのダイナミックレンジを実現した高画質性能は、高感度撮影にも確実に活かされている。動態撮影では高速シャッターが基本となり、ISO感度は上がりがちだが、本作例(ISO 12800)を見る限り、写真として十分に成立する描写が得られている点は見事だ。

α7 V/FE 400-800mm F6.3-8 G OSS/800mm/シャッター優先AE(1/2,000秒、F8.0、+0.7EV)/ISO 12800

オートホワイトバランスには、深層学習(ニューラルネットワーク/ディープラーニング)を用いたAI制御が活用されており、ここは本モデルの、比較的地味ながらも隠れた長所と言える。試写を通して感じたのは、オートホワイトバランスが選択する色合いの一貫した自然さで、従来モデルを使い込んできたユーザーが抱いてきた細かな不満を大きく解消している点だ。

α7 V/FE 28-70mm F3.5-5.6 OSS II/70mm/絞り優先AE(1/100秒、F8.0、-1.3EV)/ISO 100

色仕上げ設定である「クリエイティブルック」にも機能追加があり、前モデルの、コントラストを保ちながら落ち着いた発色と印象的な色味を演出する「FL」(フィルム)に加え、「RX1R III」で初採用された「FL3」と、「FL2」が新たに加わっている。作例は「FL3」で撮影したものだが、αシリーズに限らず、Cyber-shotシリーズの表現思想も取り入れている点には好感が持てる。

α7 V/FE 28-70mm F3.5-5.6 OSS II/67mm/絞り優先AE(1/80秒、F5.6、-1.0EV)/ISO 400

まとめ

「4軸マルチアングル液晶モニター」の採用を除けば、前モデル「α7 IV」と比べて外観上の変化は控えめであり、本モデル「α7 V」は一見するとインパクトに欠けるかもしれない。しかし、実際に使ってみると、その印象は大きく変わる。外観とは対照的に、中身は着実かつ本質的に進化しており、“新型”としての価値は十分に高いと感じられた。

その進化の中核にあるのが、部分積層構造の撮像センサーと、「AIプロセッシングユニット」を統合した新しい画像処理エンジンの組み合わせだろう。高速性や画質といった分かりやすい性能向上にとどまらず、操作時のレスポンスやオートホワイトバランスの安定性など、撮影体験の細部にまで影響が及んでいる点は印象的だった。

今回は、今春発売予定のキットズーム「FE 28-70mm F3.5-5.6 OSS II」と組み合わせて試写する機会を得たが、このレンズもまた、想定価格からは想像しにくいほど実用性の高い仕上がりである。本モデルは、多くのユーザーが求める中堅クラスの立ち位置を堅実に押し広げた1台と言ってよいだろう。

FE 28-70mm F3.5-5.6 OSS IIの装着例
曽根原昇

(そねはら のぼる)信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌等で執筆もしている。写真展に「イスタンブルの壁のなか」(オリンパスギャラリー)など。