新製品レビュー

パナソニック「LUMIX TZ99」の30倍ズームを旅先でチェック!

久しぶりに投入された“トラベルズーム”の実力はいかに

パナソニックから高倍率ズームのコンパクトデジタルカメラ「LUMIX TZ99」が登場した。LUMIXのTZシリーズと言えば旅に適した”トラベルズーム機”として人気。前モデル「LUMIX TZ95D」(2022年11月発売)から久々の新機種投入となった。

今回、本機を試用する機会を得たので山形県を訪れて冬景色を収めてみた。

LUMIX TZ99は2月20日(木)に発売となったが、人気のせいか市場では品薄になっているほどだ。量販店での実勢価格は6万4,350円ほどとなっている。

ステップズームが使いやすい

本機の特長はなんといっても35mm判換算24-720mm相当の30倍ズームレンズを搭載していることだろう。十分な広角域から超超望遠の域までズームインできる。旅先では広い風景はもとより、気になったものをアップで撮れるので便利な1台となっている。

ズームをテレ端にしたところ。ちなみに液晶モニターは上方にのみ可動するタイプだ
光学ズームのテレ端は720mm。このとき最短撮影距離は2mとなっていた
背面Fn2の所にあるのは「ズームバックボタン」で、一時的に広角側に移動して見失った被写体を探せる機能

そして、新機能ではないがレンズはステップズームに設定できるのも面白い点。ズームレンジが広いので連続的なズームだとややまどろっこしいきらいもあるが、ステップズームは単焦点感覚で画角を変えられるので使いやすかった。

ステップズームに設定したところ。24/28/35/50/70mm……といった具合にズームがストップする

30倍ズームレンズ搭載ながら収納時はレンズ部分があまり出っ張らないので携帯性も良い。普段使いのバッグに収まる大きさなのもトラベルズーム機としては重要なポイントだ。バッテリーとSDメモリーカードを含む重量は約322gとなっている。

イメージセンサーは有効約2,030万画素の1/2.3型MOSということで画素数も十分。レンズの明るさはF3.5-6.4だ。ライカブランドのレンズなのも心くすぐられる部分だ。

前モデルとの違いだが、大きなところではUSB端子がUSB Type-Cになったことで現在のトレンドに沿ったものとなった。一方EVFは非搭載となった。レンズやイメージセンサーは従来モデルのスペックを継承している。

USB Type-Cで充電できるようになった。充電するにはカメラの電源は切っておく必要がある

雪の最上川湖畔を行く

今回向かったのは山形県の大江町。最上川の舟運で栄えた地域で、風光明媚な観光地として知られる。東京からは新幹線で山形駅へ。そこからローカル線の左沢(あてらざわ)線に乗り、終点の左沢駅で下車した。

ちなみに今回の撮影旅行はJR東日本の「キュンパス」を利用した。その模様は下記でレポートしているので併せてご覧いただきたい。

こういったコンパクト機はオートの設定を基本にカメラ任せで撮るのが今日の使い方なのだろう。本機にも豊富なオート機能が備わっている。今回はほとんどをプログラムモードで撮影し、ホワイトバランスも全てオートにしている。


鉄道の旅といえば駅弁。本機はマクロ撮影も得意なので、狭い車内でも適切なズーム域との組み合わせで切り取れる。

70mm相当/プログラムAE(1/80秒、F4.5、0EV)/ISO 1600

新幹線の窓からの撮影。シャッター優先にすることでブレずに撮れた。いざというときにこうした設定ができるのも強み。

24mm相当/シャッター優先AE(1/1,000秒、F3.3、0EV)/ISO 640

左沢駅に直結している大江町交流ステーションの展示。ワイド端が24mm相当なのでこうした記録も広々撮れる。

24mm相当/プログラムAE(1/15秒、F3.3、0EV)/ISO 1600

同じ場所で人形の表情を200mm相当でクローズアップ。こうした望遠撮影はスマートフォンでは難しい領域だ。

200mm相当/プログラムAE(1/5秒、F5.6、0EV)/ISO 1600

ぽつんと佇む左沢線の信号機。全体が白いのでプラス補正で撮影。今回、レンズの根元にあるコントロールリングに露出補正を割り当てたので素早く操作できた。

90mm相当/プログラムAE(1/500秒、F4.9、+0.7EV)/ISO 80

雪景色でなかなか色が無いが、こちらのオレンジのポールは鮮やかな発色でパナソニックらしい画づくりだ。

70mm相当/プログラムAE(1/800秒、F6.3、+0.7EV)/ISO 80

最上川の上にかかる旧最上橋から。まずはワイド端の24mm相当で撮っておくとわかりやすい旅の記録になる。

24mm相当/プログラムAE(1/800秒、F5.6、0EV)/ISO 80

次いで、同じ場所から本機の望遠端である720mm相当で水面の鳥を撮影。上の写真では黒い点にしか見えなかった鳥がこの大きさで撮れるから驚きだ。

720mm相当/プログラムAE(1/320秒、F6.4、0EV)/ISO 80

こちらは古い建物が軒を連ねる原町通りで見つけた荷車の車輪? 雪の中で趣があった。画面が全体的に黒いので-1段補正している。

50mm相当/プログラムAE(1/100秒、F4.1、-1EV)/ISO 80

最上川沿いにある稲荷大明神の鳥居。積雪がかなりあり近づけなかったためズームして撮影。こうしたときにも超望遠域が役立つ。

250mm相当/プログラムAE(1/250秒、F5.6、-1.3EV)/ISO 80

稲荷大明神の近くにあった時の広場というスポット。逆光だがコントラストもしっかりしている。

28mm相当/プログラムAE(1/2,000秒、F8、-3EV)/ISO 80

鐘の部分をアップで撮ってみた。超望遠域を使ってディテールを簡単に記録できるのがいい。

720mm相当/プログラムAE(1/1,000秒、F7.1、-1EV)/ISO 80

温泉に入るために立ち寄ったテルメ白陵には舟のオブジェが。一時晴れた青空に雪景色が映える画になった。

24mm相当/プログラムAE(1/800秒、F5.6、0EV)/ISO 80

マクロモードで雪に迫った。結晶が見えるのではと思うほど大きく写せる。

50mm相当/プログラムAE(1/800秒、F4.5、0EV)/ISO 80

陽が差したタイミングで最上川湖畔を撮影。木の枝を等倍で見るとミラーレスカメラほどくっきり写っているわけではないが、通常の鑑賞サイズでは十分な描写力だ。

35mm相当/プログラムAE(1/800秒、F4.5、-0.3EV)/ISO 80

川面の石に丸く積もった雪も冬ならでは。数百mm相当の超望遠がポケットサイズで楽しめるのはやはり面白い。

600mm相当/プログラムAE(1/1,000秒、F6.3、-0.3EV)/ISO 80

山形駅に到着した左沢線の車両。夕方でISO 800の高感度撮影になった。1/2.3型センサーに2,030万画素ということで、この感度でもそれなりにノイズ感はあるようだ。

50mm相当/プログラムAE(1/80秒、F4.1、0EV)/ISO 800

まとめ

「旅先で写真を撮るとなればスマホ」になって久しいが、やはり超望遠撮影はまだスマートフォンが苦手とするジャンル。超広角はスマホ、望遠域はLUMIX TZ99という使い分けも有効だろう。

もう1つのメリットは基本的に片手で撮影が可能ということ。これもスマートフォンには難しく、落としてしまいそうになる。カメラらしいグリップができてシャッターボタンやズーム操作もしやすいからバンバン撮るのには向いている。今回は雪中の行程だったので傘を持ちながら撮り歩いたが、こういうときにもカメラ専用機なら使いやすい。

使っていて気がついたのは、液晶モニターのチルトが上のみで下に動かない点。フリーアングル式とは言わないまでも、下方向へのチルト機能は次回作でぜひ実現して欲しいと感じた。そうすると、ハイアングルで撮る際に見やすくなると思う。

EVFが省略された部分はどう考えるかだが、筆者はあまりEVFを見ないので無くても構わない(有れば便利だが)。ただ、必要な人にとってはもどかしいところだろう。現行の同社コンパクトでEVF搭載機は“ネオ一眼”タイプの「LUMIX FZ85D」のみとなる。カテゴリー的にはちょっと違うのだが、20-1,200mm相当のレンズを搭載しながらも価格がLUMIX TZ99とほぼ同じなので検討の余地はあるかも知れない。

と気になる点もあったが、LUMIX TZ99は端正なカメラのデザインで持っていて嬉しい道具感もあるし、実際使えば楽しさも味わえる。また撮影をスマートフォンと分けることで、そちらのバッテリーが節約できるという面も見逃せないところだ。

1981年生まれ。2006年からインプレスのニュースサイト「デジカメ Watch」の編集者として、カメラ・写真業界の取材や機材レビューの執筆などを行う。2018年からフリー。