新製品レビュー
ニコン Z50II
被写体認識性能や操作性能が向上 ピクチャーコントロールの色仕上げも柔軟に
2024年11月29日 07:00
12月13日(金)に発売予定のニコン「Z50II」は、DXフォーマット(APS-C)のイメージセンサーを搭載したZマウントのミラーレスカメラです。
前モデルとなる「Z50」から、細部にわたった改良による正統進化で入門機としての信頼性を向上させるとともに、分かりやすいピクチャーコントロールの操作性や、動画機能の強化なども図られています。
撮像センサーと画像処理エンジン
「Z50II」の外形寸法は、幅が約128mm、高さが約96.8mm、奥行が約66.5mmで、質量が約550g(バッテリー、メモリーカード含む)となっています。前モデルの「Z50」は幅約126.5mm、高さ約93.5mm、奥行約60mmで、質量は約450g(バッテリー、メモリーカード含む)ですので、新しい「Z50II」の方がひと回り大きく重くなっています。
ひと回り大きくなったのは様々な理由があるようですが、主には画像処理エンジンが前モデルの「EXPEED 6」から最新の「EXPEED 7」になったことと、動画撮影時の熱対策を強化したことによるとのことです。
搭載する撮像素子は、有効約2,088万画素のDXフォーマット(APS-C)CMOSセンサーで、これは前モデル「Z50」から変更はありません。ニコンのDXフォーマットとしては、初めて像面位相差AFを搭載したCMOSセンサーです。
同じ撮像センサーであるだけに、極端に画質が進化するということはなく、解像性能に関しては画素数も変わらずもともと優れた画質をもつ「Z50」と、明確な違いはほとんどないと思います。
撮像センサーと画像処理エンジンが協調して作り出す画質として、もうひとつ大切なのが高感度性能でしょう。「Z50II」の常用最高感度はISO 51200。
こちらも前モデル「Z50」から仕様は変わりませんが、DXフォーマットのデジタルカメラで、最高感度ISO 51200というのは十分に立派な数字と言えると思います。実際に「Z50II」のISO 51200で撮影した画像をみても、小サイズのプリントやスマートフォンでの鑑賞程度でしたら問題なく綺麗と言えるレベルの画質でした。
また、「EXPEED 7」による処理速度の向上によって、現行最新モデルの多くが搭載する「プリキャプチャー」機能が本モデルにも搭載されました。これはシャッターを全押しする前の瞬間を記録できる機能のことで、「Z50II」の場合、「C15」で約15コマ/秒、「C30」で約30コマ/秒の高速連続撮影で、同機能を併用できるようになっています(JPEG記録のみ)。
サイズ感と操作性
操作性に目を向けてみましょう。ボディサイズがひと回り大きくなった分、操作性にいくらかの余裕が生まれ扱いやすくなったと言うのが、カメラを構えてみての第一印象でした。
例えばグリップなどを見てみても、ほどよく形状が改良されており、ホールド性はかなり良くなっていると感じました。
EVFは約236万ドットで倍率約0.68倍(35mm判換算)と、基本的な仕様は前モデルと同じですが、輝度が約2倍になっているため、明るい場所でも被写体を確認しやすくなっています。
シャッターボタン周辺のボタン、ダイヤル、レーバー類の配置や種類は、前モデルから大きな変更はありません。ただ、ボディサイズが少し大きくなったためにスペースにゆとりが生まれ、その分だけ操作のしやすさが良くなっているように感じました。
一方で背面のボタン類は、「レリーズモードボタン」や「拡大/縮小ボタン」、「DISPボタン」などが追加され、大幅に操作性が向上しています。前モデルはいかにも入門機らしく、簡略化されたシンプルな操作系でしたが、本モデルでは「Z6III」などの上位モデルとの共通化が意識されているように感じられます。
背面モニターは前モデルのチルト式からバリアングル式に変更されました。ただし、タッチパネル式の3.2型TFT液晶、約104万ドットという仕様には変更ありません。
内蔵フラッシュを搭載していて、これはフラッシュ横にある「フラッシュポップアップレバー」による手動ポップアップ式になっています。
メモリーカードスロットはバッテリーと同室。付属するリチャージャブルバッテリーは「EN-EL25a」で、前モデルの「EN-EL25」よりわずかですが容量が大きくなっています。ちなみに「Z50II」は「EN-EL25」も使用できますが、その場合、撮影可能コマ数は少なくなります。
上位機種ゆずりの被写体検出機能
「Z50II」は、「人物」か「動物」しか選べなかった前モデルの被写体検出機能が、上位モデル同等に大きく進化しています。検出対象は「人物」と「動物」の他に、「鳥」「乗り物」「飛行機」の計5種類で、「動物」は犬/猫/鳥を、「乗り物」は飛行機/車/バイク/自転車を含んでいます。なかでも「動物」から独立して「鳥」だけを選択できるのは本モデルの特徴になっています。
しかも、検出した対象への追従性は格段に高くなっています。前モデルでは検出こそ正確にしてくれていましたが、被写体が速く動くと追従しきれずに、結局ピントを外してしまうことがあったのですが、本モデルでは検出の速度も追従性も素早く正確で、より高い歩留まりで動く被写体にピントを合わせることができました。
また、一応は「犬」「猫」「鳥」となっている「動物」の被写体検出ですが、案外他の動物でも正確に検出してくれることが多かったです。試しに牛を撮ってみましたが、何の問題もなく瞳に正確に合焦してくれました。活用範囲は思ったより広いようですので、いろいろな被写体で試してみたくなります。
便利な「ピクチャーコントロールボタン」の搭載
先にシャッターダイヤル付近には大きな変更はないとお伝えしましたが、実はひとつ目立って追加されたボタンがあります。それが撮影モードダイヤルの右側にある「ピクチャーコントロールボタン」です。
この「ピクチャーコントロールボタン」を押せば、すぐにピクチャーコントロールの設定画面が呼び出せるという優れもの。あらかじめ用意された31種類のカラープリセットや、自分でカスタムした最大9つのカスタムピクチャーコントロールを簡単に呼び出すことが可能です。
また、ピクチャーコントロールには、「Nikon Imaging Cloud」を経由して、有名クリエーターが作成した「イメージングレシピ」(無料)をカメラに登録することもできます。
しかし、31種類+αに及ぶピクチャーコントロールのなかから、目的のレシピを探して設定するのは、実際にやってみると結構な手間だったりします。そこで本モデル「Z50II」は、ユーザーが必要とするレシピだけを選んで一覧に並べる機能が搭載されています。
設定はとても簡単で、「ピクチャーコントロールボタン」を押して表示された設定画面で、左上のアイコンを押すだけ。それで必要なレシピにチェックを入れてOKすれば、自身が選んだレシピだけが並んだピクチャーコントロール一覧が表示されるようになります。
オリジナルで設定した、「SD(スタンダード)」「DM(ディープトーンモノクローム)」「LS(ランドスケープ)」「c07(カスタムピクチャーコントロール:サイレンス)」の4種類だけが並んだピクチャーコントロール一覧を表示してみました。
オリジナルの一覧のなかから「DM(ディープトーンモノクローム)」を適用して撮影した画像です。ディープトーンモノクロームは「Zf」から搭載されたピクチャーコントロールですが、本格的で重厚なモノクロ写真の諧調が好きで、好んで使っています。
同じく、オリジナルの一覧のなかから「c07(カスタムピクチャーコントロール:サイレンス)」を適用して撮影した画像です。懐かし気な教室の風景を、彩度を抑えた軟調な画調で整えることで、静かな雰囲気を演出することができました。
向上した動画撮影機能
「Z50II」は前モデル「Z50」に比べ、動画性能も進化しています。「Z50II」で記録できる動画モードの最大は「4K 60p」(3,840×2,160)です。
前モデルで記録できる最大が「4K 30p」でしたので、60pまでいけるというのは心強さを感じます。今回はその「4K 60p」でサンプル動画を撮ってみました。
ただ、「Z50II」での4K動画は、「4K 30p」で5.6K相当のセンサーによるオーバーサンプリングに対応していますので、より高画質な映像を求める場合は、フレームレートこそ低下しますが「4K 30p」で記録するというのもひとつの手段だと思います。
「Z50II」は電子手ブレ補正機能が前モデルより向上していますので、三脚やジンバルなどを使わなくても比較的手ブレを抑えた動画撮影ができるのも嬉しいところです。上のサンプル動画も、すべて手持ちで撮影しています。
ライブ配信などで自撮りをする際に便利な、「商品レビューモード」や「動画セルフタイマー」、「RECランプ」といった機能も搭載されています。
作例
長野県飯田市の下栗の里を展望台から撮影しました。DXフォーマット(APS-C)のカメラはコンパクトなので携行しても苦にならず、旅のお供にはピッタリです。それでいて、前モデルよりもホールディング性や操作性が向上しているので、本格的な写真を撮りたいという気持ちにもしっかり応えてくれることを実感しました。
神社を守るかのように佇んでいた宅急便のシロネコを撮らせてもらいました。スナップ撮影などで速写的に撮り歩くと、ピントを外している写真があることが間々あります。でも「Z50II」のAFは性能がとても良好で、さまざまなシーンで融通が良く効くのため、安心して撮ることができました。
紅葉のユリノキ並木を撮りました。日中の明るいシーンでしたので、モニターは反射してしまい良く見えず、EVFの出番となりました。前モデルより約2倍明るいとされる「Z50II」のEVFの視認性はホンモノで、作例のような明るいシーンでも映像が暗くなることなく、快適に撮影できました。いざというときに頼りになってくれます。
古い教室で椅子に掛けられたランドセルをローアングルで撮影しています。前モデルのチルト式からバリアングル式に変更された「Z50II」の可動式モニターですが、主な理由は動画撮影への対応ではないかと思います。しかし、バリアングル式の採用が主流となって多くの人が慣れている現在、好みの問題はあるものの妥当な判断と言えるのではないかと思います。
まとめ
ここ最近、ニコンはピクチャーコントロールの有効性と、その周知に力を入れているように思われます。本モデル「Z50II」における「ピクチャーコントロールボタン」の搭載は、そのひとつの表われと言えるでしょう。これからピクチャーコントロールのような色仕上げ設定を知りたい、もっと活用してみたいという人にはうってつけの機能だと思います。
ピクチャーコントロールの先進性は別としても、本モデルのカメラとしての機能進化は注目すべきものがあります。目立った特徴は少なく見えますが、細かいところまでユーザーの使い勝手に寄り添った種々の改良は、もともと完成度の高かった前モデルから大きく信頼性を高めることに寄与しています。
FXフォーマット(フルサイズ)が注目されがちではありますが、DXフォーマット(APS-C)は使ってみると、デジタルカメラとして実に使い出のあるものであることが分かります。なかでも最新性能でより完成度を高めた「Z50II」は、入門者のメインカメラから上級者のサブカメラまで、頼りがいのある相棒となってくれるに違いありません。