新製品レビュー

Insta360 Ace Pro 2

ライカのカラープロファイルも選べるアクションカメラ

アクションカメラ「Insta360 Ace Pro 2」(以下、Ace Pro 2)が10月に発売された。通常版の価格は6万4,800円となっている。

「Insta360」と聞くと360度カメラが有名だが、Ace Pro 2は前方だけを撮影する一般的なアクションカメラだ。今回、イメージセンサーを新しくしたほか、デュアルAIチップによる画質向上などを盛り込んでいる。

レンズはより広角化

外形寸法は71×52.2×30.5mm、重量は177.7gでよくあるアクションカメラのサイズ感だ。背面モニターは上方向に約180°まで開くので自撮りが容易なほか、ローポジションでの撮影もしやすい。

背面モニターは可動式

レンズは、ライカカメラ社と共同開発した「スーパー・ズマリット」ということでカメラファンにも刺さるブランドになっている。焦点距離は35mm判換算で13mmと、従来の16mmから広角化したのもポイント。

レンズには保護ガラスが装着されている

操作ボタンは電源と録画ボタンだけで、ほかの操作はタッチモニターで行う。起動中の電源ボタン操作はカスタマイズが可能だが、デフォルトでは動画と写真など撮影モードの切り替えを簡単に行えるのが使いやすい。

側面に電源ボタン
記録メディアはmicroSDカード

防水性能は単体で水深12mと普段使いには十分。ウインドガードが新たに着脱式になり、水中では付属の水中用ガードに変更することで、水中の音声も録りやすいという。

左が標準のウインドガード。右が水中用

優秀な手ブレ補正

まずは動画性能を見ていく。8K記録も可能だが、4Kで有効なHDR機能が使えないこともあって、ダイナミックレンジまで考慮すると4K撮影がベストではないかと思う。

動画の設定画面。4Kは120pまで対応

画角については、非常に広いが歪曲が大きくなる「ACTION」や、画角は少し狭くなるが歪曲をほぼ補正した「LINEAR」など複数のモードがある。LINEARは動画でも使えるが、歪みのない超広角レンズのように写るので写真では特に使いやすそうだ。

下の動画はACTIONモードの4Kで撮影したもの。画角は十分広い。またHDRの効果で建物の明るい部分と影の部分のディテールが両立している。空の青さもしっかり出ており、全体的に発色も良かった。

最近はジンバル式の小型カメラも人気を博しているとおり、手ブレ補正は重要なスペックとなっている。

下の動画では片手でAce Pro 2を持って歩きながら撮影した。かなり手ブレが補正されており、上下の揺れは少しあるがジンバルカメラに迫るほどの安定性があって驚いた。

棒型であるジンバルカメラに比べるとAce Pro 2はかなり小さいので、これくらい手ブレ補正がしっかりしていると荷物を少なくできる点でこちらを選ぶメリットも出てくる。

またAce Pro 2は新しくデュアルAIチップを搭載したということだが、これは高感度画質に大きく寄与しているそうだ。低照度環境では「PureVideo」モードで撮影することで、AIを使ったノイズ低減でクリアに映せるとのこと。

下の動画は完全に日が落ちてからの夜景だが、ノイズが乗りやすい空や自動車の黒い部分もスッキリしていて全体的にクリアなのがわかる。

夜景の映像はLINEARモードで録っているので、建物の直線が歪まずに映っている。また音声はステレオで録れるので、雑踏の音も臨場感がある。

動画の解像度は最大8K 30pにも対応しているが、現状では8K撮影の需要は大きくないかもしれない。だが、その高解像度を利用して4K時に画質を落とさず2倍にズームできる「4Kクラリティズーム」が使える。

下の動画は途中から4Kクラリティズームを使ってアップを挟んだものだが、結構画角が変わるので絵のバリーションを増やすのには使い勝手が良さそうだ。

ライカ共同開発のカラープロファイルも

続いては静止画機能を見ていく。センサーは1/1.3型で記録画素数は5,000万か1,250万から選べる。5,000万画素記録は通常の用途には持て余すのとHDR機能が使えないので、HDRが有効になる1,250万画素記録がメインの記録モードと考えると良さそうだ。

静止画の設定画面

下は最も画角が広くなるACTIONモードの1,250万画素で撮影。HDR機能によりダイナミックレンジも広い。アクションカメラの静止画機能としてみると十分な綺麗さと思う。

次は5,000万画素で記録したもの。ハイライト、シャドウともダイナミックレンジは少し狭くなっていた。用途に応じて画素数は使い分けたい。

LINEARモードで撮影したのが下の写真。歪曲がないので非常にスッキリとした画面になる。ACTIONモードより画角が少し狭くなるとは言え超広角に変わりはない。レンズ交換式カメラよりも手軽にこうした撮影ができるのは良い。

クラリティズームは静止画でも使えるので、少しズームしたい場合は便利な機能である。

クラリティズーム:OFF
クラリティズーム:ON

レンズ部分は保護ガラスに覆われているので、光線状態によってはフレアやゴーストに注意したいが、このように強い光が入っても画面のコントラストはさほど低下しないのは優秀といえそう。

ライカとの共同開発はレンズのみならず、カラープロファイルとしても搭載されている。「LEICA NAT」は彩度が低くコントラストが高い。もう1つの「LEICA VIV」は鮮やかな色になるモードだ。

ライカのカラープロファイルも選べる

とりわけLEICA NATは落ち着いたややノスタルジックなルックになるので、Vlogのほか写真としても使いでのある所だろう。LINEARモードと組み合わせるとスナップ撮影にも向きそうだ。

LEICA NATで撮影
LEICA NATで撮影

暗所撮影も試してみた。下の夜景はISO 423となっていたが、同じ場所で撮影した先の動画よりはノイズは多めだった。センサーサイズや1,000万オーバーの画素数を考えるとこれでも健闘しているのかもしれない。

なお録画ボタンがシャッターボタンになっているが、アクションカメラらしく押すのに力が必要でブレやすい。そのため静止画撮影時はタッチスクリーンのシャッターボタンをおすすめする。

まず検討したい1台

アクションカメラを検討しているなら、まずチェックすべき1台といえそうだ。実際、発売後のセールスも好調との話を聞く。高度な使い方になるので今回は試していないが、色調整の自由度が高まるLog(I-LOG)撮影機能も搭載しており、こだわり派にも対応できそうだ。

Log撮影も可能

アクションカメラといえばGoProブランドが先行していて広く知られるが、Insta360も順調に力を付けているようだ。実際に、手ブレ補正やダイナミックレンジなど、動画性能はかなり期待できる仕上がりとなっていた。今後の発展も楽しみである。

1981年生まれ。2006年からインプレスのニュースサイト「デジカメ Watch」の編集者として、カメラ・写真業界の取材や機材レビューの執筆などを行う。2018年からフリー。