新製品レビュー
アップル iPhone 16 Pro
第2世代4,800万画素センサーを搭載 新機軸「カメラコントロール」の使い勝手は?
2024年10月2日 07:00
今年もアップルの「iPhone」シリーズが発売された。この「16」シリーズは同社のAI「Apple Intelligence」のために開発されたチップ「A18 Pro」を搭載した新端末となる。
ただしこの「Apple Intelligence」は2024年後半に米国英語から提供予定で、一部機能の公開と追加言語対応は今後1年にわたって提供される予定という。
今回はこの最新の「A18 Pro」チップと新しい撮影体験を提供してくれる「カメラコントロール」を搭載した「iPhone 16 Pro」をクイックレビューしたい。
iPhone 16 Pro 主な仕様
- チップ:A18 Pro
- ストレージ:128GB/256GB/512GB/1TB
- 広角カメラ:24mm相当、F1.78
- 超広角カメラ:13mm、F2.2
- 望遠カメラ:120mm、F2.8
- 外部メモリ:なし
- ディスプレイ:6.3インチ、2,622 x 1,206ピクセル、460ppi、Super Retina XDRディスプレイ
- 外形寸法:149.6×71.5×8.25mm
- 重量:199g
3つのアウトカメラ
「iPhone 16 Pro」は前モデル同様3つのカメラを搭載している。外観は大きな変更はなく一目で「ああ、iPhone」だなと認識できるデザインだ。前モデルでは5倍の望遠カメラが欲しい場合、大きくて重たい「iPhone 15 Pro Max」を選ばざるを得なかったが、今年モデルはそれがなくなったのがうれしい。
メインカメラは4,800万画素/24mm相当F1.78、超広角カメラは4,800万画素/14mm相当F2.2、望遠カメラは1,200万画素/120mm相当F2.8となっている。
広角カメラと超広角カメラの場合、通常はピクセルビニングによる1,200万画素、もしくは2,400万画素の出力となるが、設定することによって4,800万画素でのアウトプット(HEIF、RAW)も可能だ。
ただし、ポートレートモード、ナイトモード、マクロモード、フラッシュ、ポートレート照明モードで撮影したものは1,200万画素で記録される。
操作画面も大きな変化はない。「フォトグラフスタイル」のアイコンがディスプレイ上部に追加された程度だ。
各カメラと画角の写りはこのような感じ。誰がシャッターボタンを押しても好ましい絵が簡単に撮れるのは相変わらず。だが、さすがに25倍のデジタルズームになるとライバルのAndroid機に太刀打ちできない印象である。
簡単に写真の雰囲気を変更できる「フォトグラフスタイル」
新機能として、撮影する写真のイメージを直感的に変更できる「フォトグラフスタイル」が搭載された。これはディスプレイ上部にある「フォトグラフスタイル」アイコンをタップしてコントロールパッドを呼び出し、指先でトーンとカラーを自在に変更できるもの。好みに応じて設定すればフィルター的に効果を適用できる。
プリセットはこのとおり。
撮影後に「写真」アプリの「編集」→「スタイル」で変更も可能なので、じっくりと腰を据えてあとから効果を適用するのもいいだろう。
4K/120pでスーパースローが撮影できる
今回の「iPhone 16 Pro」で1番いいと思った機能がこれだ。120fps、4K解像度で撮影した映像の再生スピードを変更できるのである。
100%(120fps)、50%(60fps)、25%(30fps)、20%(24fps)と撮影後に変更可能なのだ。120fpsで撮っておけばさまざまなシーンで活用できそうである。また「オーディオミックス」機能も搭載し、ビデオ内音声の聴こえ方を調整することもできるようになった。
前モデルからUSB Type-C端子を採用し、記録したデータを外付けSSDに出力できるのも同様だ。ただ「iPhone 15 Pro Max」で使用していた外付けSSDとUSBケーブルを使用して撮影したところ、ときおり画面のようなアラートが出て、正常に撮影できないこともあった。
カメラ機能を呼び出して操作できる「カメラコントロール」
鳴り物入りで登場した「カメラコントロール」。これがくせ者だ。
フレーム横に新設された「カメラコントロール」ボタンはワンクリックでカメラ機能を立ち上げることができ(設定でダブルクリックに変更も可能)、さらに押し込めばシャッターを切ることができる。
そしてダブルクリックをすると、「露出」「被写界深度」「ズーム」「カメラ」「スタイル」「トーン」を呼び出せる。これがとてもやりづらいのだ。もちろん慣れもあると思うのだが、縦位置や横位置での操作性、感度(調整可能だが)がどうもイマイチだ。
もし、あなたの使っているレンズ交換式カメラのシャッターボタンがこの「カメラコントロール」だったらと想像してみてほしい。
シャッターボタンで撮影機能を呼び出して、機能を選択、調整し決定してからようやくシャッターレリーズ、という操作体系だったら……。
もちろん「iPhone 16 Pro」にはディスプレイ上にシャッターボタンがある。それを使うこともできるが、せっかく「マルチタッチ」ができる大きなディスプレイがあるので、空いた手で撮影機能の設定をして、右手ではシャッターを切る……となってくれたら、と感じてしまった。
「アクションボタン」もそうだったが、使用シーンを徹底的に想定せず、実装してしまったかのような印象を受ける。ただソフトウェア的にアップデートが可能なので、アップルの巻き返しに期待したい。
実写インプレッション
使い勝手が良くない「カメラコントロール」だが、カメラを高速起動できるのだけは進化点だ。飛来する航空機を発見し、瞬時に撮影体制に入り、数カット撮ることができた。
展望台から夕景を撮った。ゴーストやフレアが軽減される、という情報があったが劇的な進化は感じられなかった。大変残念である。
超広角カメラが4,800万画素化され、ピクセルビニングによる出力も描写がよくなった印象を受けた。ただこのようなマクロモードなどでは1,200万画素の出力になる。
「Pro Max」ではなく「Pro」モデルで5倍望遠を使えるようになった。裏原で捨てられているカップ類を撮ったが、ポートレートモードの「ストロー問題」は概ねクリアできているように思う。
5倍望遠カメラは楽しい。テーブルフォトなど身近な静物撮影では持て余すことが多いが、スナップショットでは役に立つ。このカットも自動でポートレートモードになった。やや切り抜きに不自然な点が残る
縦位置撮影での「カメラコントロール」はとてもやりづらい。このカットもそうだが結局は使用せずに、ディスプレイをタッチして露出補正などをしてしまうことがほとんどであった
広角カメラの描写は相変わらずなかなかいい。曇天下での難しいホワイトバランスや、壁のディテール、モーターサイクルの立体感などiPhoneらしい写りだ
夏が過ぎ去って夕焼けがキレイな季節になってきた。そんな美しいシーンも記憶色的な色再現性で「iPhone 16 Pro」は残してくれる。シャッターを押すだけで誰でも色鮮やかなカットを撮影可能である
懐かしい郵便ポストを撮った。濃厚な色合いと塗り重ねられたペイントのリアル感が伝わってくる。マクロモードの写りはかなり良くなった印象だ。
風景やナイトシーンなど、超広角カメラを使うとどうしても光源がフレーム内に入ってゴーストやフレアが発生してしまう。そういうときは構図を変更して逃げたりすることが必要だ。このカットは太陽周辺の色づきが気になった。
夜の渋谷を撮った。ビルの直線な感じやシャープネス、色合いともにやや派手めながらうまくまとまっていると感じる。ただ都心部は明るいのでなかなかナイトモードが発動しない。
「ROUTE 66」のサインを広角カメラの2倍で。うっすら汚れたそれと、かすれたペイント部の写りがなかなかである
まとめ
革新的な「カメラコントロール」が搭載された「iPhone 16 Pro」だが、写りは相変わらずいい。老若男女、誰がイージーに撮っても、そこそこキレイな写真が撮れる。
コンピュテーショナルフォトグラフィーの恩恵を受けて、構図とシャッターチャンスにさえ気を配れば失敗のないカットを簡単に手にすることが可能である。
ただ前述のように、残念ながら「カメラコントロール」の使い心地はいいとは言えない。見切り発車、という印象だ。多くのAndroid機並みに「カメラ」の起動が素早く簡単にようやくできるようになった、程度だろうか。
ただ「カメラコントロール」はアップデートが予定されているので、それによって操作性も向上する可能性もある。「Apple Intelligence」の日本語展開を含めて今後の進化が楽しみな端末だといえる。