新製品レビュー
FUJIFILM X-T50
“丸みを帯びた”新規デザイン採用のミドルクラスモデル
2024年5月29日 07:00
5月16日(木)のX Summit 2024 Sydneyで、「FUJIFILM X-T50」が発表された。本機はX-T10からはじまった、Xシリーズのミドルクラスに位置づけられた“X-T2桁番台”の最新モデル。2022年に登場したX-H2やX-T5と同じく、Xシリーズ第5世代となる裏面照射型・約4,020万画素のイメージセンサー「X-Trans CMOS 5 HR」と、最新の画像処理エンジン「X-Processor 5」を搭載する。
しかも従来機のX-T30 IIでは搭載していなかったボディ内手ブレ補正(以下、IBIS)を搭載し、5軸7.0段(XF35mmF1.4R装着時)の補正効果が得られるとアピール。従来機からわずか60gのエクストラで、強力なIBISを搭載してきた事は驚異的だ。
基本性能
X-Processor 5の搭載からも察せられる通り、AIによる被写体検出AFを搭載。動物、鳥、車、バイク&自転車、飛行機、電車、昆虫、ドローンの検出に対応している(昆虫の場合は「鳥」、ドローンの場合は「飛行機」に設定)。またGFX100 IIや100S II、X100VIに採用されているフィルムシミュレーション「REALA ACE」をレンズ交換式のXシリーズとしてはいち早く楽しむ事ができる。
背面モニターが約162万ドットから約184万ドットのものへと更新され、SDカードがUHS-II対応となった事は嬉しいポイント。
バッテリーは引き続きNP-W126S(X-T30 IIやX100VIなどと同じ)を採用しているので、予備バッテリーを幾つか持っていて従来機からの買い替えや買い増しを検討しているユーザーにとっては、優しい配慮といえるかも知れない。
EVFについても従来機やX-S20と同じスペックの約236万ドットとなる点については、大きく跳ね上がった国内価格からすると眉を顰めてしまいそうになるが、冷静に1,399USドルという販売価格をチェックしてみると、妥当な装備であると(渋々ではあるけれど)納得出来てしまうので、感情の置きどころが難しい。
従来機のX-T30 IIと言えば、コンパクトなボディが個人的に気に入っている機種だったので、そろそろ購入しようかと思っていたら、登場から1年を待たずしてディスコンになってしまっていた。ところが、Amazonでは現在でも普通に手に入るだけでなく、かなり売れているようでどうにも釈然としないが、これは筆者の考えが凝り固まっているせいだろうか。
コンセプトが変わった外観デザイン
X-T10からキープコンセプトだった外観デザインは、今回全く新しいデザインへと生まれ変わった。両肩が丸みを帯びた様子は、どこかペンタックスのMZ-Sのような雰囲気があり、グリップ部とアナログダイヤルの感じと、主張のあるペンタ部に注目してみればCONTAX Ariaの面影を見るようでもある。
従来機のシャープなデザインも好みだったが、本機と暫く触れ合っている内に可愛く見えてきてなかなか良い。
左肩にフィルムシミュレーションダイヤルが配置され、ダイレクトにフィルムシミュレーションを選択できるようになったことが新しい。
実写
まず、いつもの様に連続4時間ほどグリップしたままスナップ撮影を敢行したが、軽量コンパクトとグリップ性を両立出来ていて、さらにダイヤル類の操作性がより自然になったことが好感触だった。
同一世代かつ同クラスのカメラということで言えば、X-S20の方がグリップは良いが、Voigtlander(フォクトレンダー)ULTRON 27mm F2などのいわゆるパンケーキレンズと組み合わせる場合には、コンパクトサイズに大型グリップを組み合わせたことが災いして、レンズ操作が窮屈になってしまっていた。本機はグリップが控えめなので薄型レンズと組み合わせても操作性は保たれる。
基本的な挙動や撮影性能は筆者のメイン機材であるX-T5とほぼ同等だろうと予想していた。しかし試用機材のステータスが量産試作機であり、製品ファームではないことが影響しているのか、筆者のX-T5と比べて特にAFの精度と追従性には差が感じられた。例えばトラッキング時の挙動に引っかかりがあったり、高周波成分の多い対象にAFさせた場合にピンボケになりやすかった。
その他では、起動時間や操作に対するレスポンスもX-T5と比べてモッサリしているなど、全体的にベータ機らしさが残っていたので踏み込んだ検証を避け、フィルムシミュレーションダイヤルが搭載されていることに注目してフィルムシミュレーションを積極的に切り替えて撮影してみた。
ダイヤル操作でフィルムシミュレーションを遷移させた場合、あらかじめ設定してあるハイライトトーンやシャドートーン、カラーといった設定は引き継がれる。Qボタンメニューからフィルムシミュレーションを変更すれば従来機でも同様の事ができるけれど、直感的にパッとワンアクションで選択できるのはやはり気持ち良い。
XF23mmF2R WRやXF35mmF1.4Rなどの比較的軽量コンパクトなレンズとの組み合わせでは、非常にフットワーク軽く撮影が楽しめた。
まとめ
やはり軽量コンパクトなカメラは疲労感が少なく、周囲への威圧感も少ないので撮影がよりカジュアルだ。
しかもこのサイズ感の筐体にX-T5に迫る撮影性能が凝縮されているので、魅力的でないハズがない。「国内価格を無視すれば」という注釈は付くが、それが正直な感想だ。
国内価格に対してカメラの仕上がりが妥当か? という視点では、筆者の感覚ではハッキリと否である。撮影感触はほぼ同じ価格帯になってしまったX-T5の方が明確に優れていて心地良く、EVFの覗き心地やシャッターのフィーリング、操作感、レスポンス、グリップ性など、ほぼ全ての項目で本機は後塵を拝しているなど、価格設定に大人の事情を色濃く感じさせて来られるのは嬉しくはない。
比較的コンパクトなAPS-C機という枠で見てみると、α6700がライバル筆頭になるだろう。撮影性能で評価するならα6700の方が間違いなく良い。特にAF性能と連写性能で大きな隔たりがある、というのがレビュー等を通して触れてみたリアルな印象だ。
レンズの選択肢もEマウントレンズの方が遥かに多いが、大口径レンズをしゃぶり尽くすという意図があるなら、電子シャッター1/8,000秒より高速なシャッター速度の選択が出来るXシリーズが良い。
25万円以下の機種という選び方をすると、LUMIX S5IIや最近登場したLUMIX S9などフルサイズ機が守備範囲になる。個人的にはAPS-C機がベストバランスであると考えているけれど、同じ予算でとりあえずフルサイズ機が選べるならソチラをオススメします。
ということで、近い価格帯に性能や満足度で上位互換となりそうな機種が多数存在することが、このカメラの最大のネックとなっている。