新製品レビュー
パナソニック LUMIX G9PROII
新LEICAレンズ「35-100mm F2.8」「100-400mm F4.0-6.3 II」も実写で紹介
2023年10月16日 07:00
「LUMIX G9 PRO」(以下G9 PRO)の発売から5年、後継機となる「LUMIX G9PROII」(以下G9PROII)が10月27日に発売される。G9PROIIはマイクロフォーサーズの静止画フラッグシップ機として、新開発の2,521万画素Live MOSセンサーと、最新世代のヴィーナスエンジンを搭載。Gシリーズでは初となる像面位相差AFを採用し、進化したリアルタイム認識AFとともに決定的瞬間を写すための機能が盛り込まれたカメラとなっている。
外観
外形寸法は134.3×102.3×90.1mm、本体のみの質量は575g。動作環境は-10℃~40℃で、シャッター耐久は約20万回とされている。本体デザインはG9 PROから一新された。
G9PROIIは、今年2月に発売されたフルサイズミラーレスカメラ「LUMIX S5II」と同じ筐体を採用。センサーの違いなどで、ボディ質量はS5IIより82g軽い。S5IIとG9PROIIはカメラを使い分けても同じ操作性が得られるようになっている。
G9PROIIでは、G9 PROの上面にあったステータスLCDがなくなり、その場所には撮影モードダイヤルが位置している。
EVFは高精細な約368万ドットの有機ELディスプレイを採用。直感的に操作できるジョイスティックは、G9 PROでは4方向のみだったところG9PROIIでは8方向の移動ができるようになり、縦・横に加えて斜めの操作が可能になった。
背面モニターは3.0型で約184万ドットのフリーアングル式となっている。フィット感が良いアイカップに加え、コントロールダイヤルなど操作性に優れたボタンレイアウトになっている。
インターフェースは上からマイク(3.5mm)端子、ヘッドホン(3.5mm)端子、HDMI Type A端子、USB Type-C端子となっている。
シャッターボタン付近に3つのボタン(ホワイトバランス、ISO感度、露出補正)が並んで配置されている。よく使う設定ボタンなので、ファインダーをのぞきながらも右手で素早く操作しやすいのはありがたい。また、シャッターボタンの脇にはリモコンを付けられる端子がある。
メモリーカードスロットはデュアルタイプで、スロット1とスロット2のどちらにもカードアクセスランプが付いている。メモリーカードはSDXC/SDHC/SDに対応している。
縦位置撮影に便利なバッテリーグリップ「DGW-BG1」も用意されている。内部にはバッテリーを1個入れられる。DGW-BG1内のバッテリーだけでもカメラは動作するが、USB給電や充電をする場合はカメラボディ内にもバッテリーを入れないと機能しない。
縦位置撮影時にも、横位置撮影時と同様のボタン配置になる。ジョイスティックもカメラ本体と同様に8方向の操作に対応する。DGW-BG1はG9PROIIのほか、S5IIとS5IIXにも共用できる。
進化したAFと画質
G9PROIIの有効画素数は2,521万画素、G9 PROは2,033万画素だったので488万画素アップしている。
AFには、Gシリーズで初めて搭載された像面位相差AFと、G9 PROで使われていたコントラストAF+DFDテクノロジー(空間認識AF)が採用されている。AF測距点は像面位相差AFで779点、コントラストAFで315点と幅広いフォーカスエリアをカバーする。
LUMIX GH6にも搭載されていたダイナミックレンジブーストがG9PROIIにも搭載。明暗差の大きなシーンでも白トビや黒つぶれを抑えた階調の広い写真が撮れる。これまではISO 800以上の動画撮影に対応していたが、G9PROIIではISO 100から、しかも静止画にも対応している。特にRAWデータの暗部階調が豊かになる効果があるという。メニュー画面などでの切替の必要はないが、SH連写時は駆動しない。
手持ち撮影の幅が広がる手ブレ補正機能
ボディ内手ブレ補正は、最大でシャッター速度8段分の補正効果をもつ。対応するレンズとの協調制御「Dual I.S.2」では、最大でシャッター速度7.5段分の補正効果が得られる。
以下の写真は京王線飛田給駅前から駅舎を撮影したところ。シャッター速度1秒では余裕で手ブレを防ぐことができた。1/3段ずつシャッター速度を落として撮影したところ、2秒でも手ブレを防ぐことができた。2秒以上もチャレンジしたが私にはなかなか止めることができなかった。しかし、シャッター速度2秒で止めることができるとは驚きの結果だった。
羽田空港で駐機している飛行機をテレ端で撮影。少し風も吹いていてなかなか安定した構えができなかったが、シャッター速度1/10秒まではブレを抑えることができた。
SHプリ連写記録
SHプリ連写記録は、シャッターボタンを半押しするとカメラ内で事前に記録を開始するというもの。シャッターボタンを全押しした時点で、さかのぼってカード内に記録される。
さかのぼれる時間は1.5秒、1.0秒、0.5秒が設定可能。シャッターボタンを全押しした後も離すまで連写が続けられる。SHプリ連写速度はAF固定で約75コマ/秒、AF追従で約60コマ/秒もしくは約20コマ/秒。RAW+JEPGでも最大200コマの連写に耐えるバッファ容量を備えている。
G9 PROにもプリ連写機能はついていたがシャッター全押し前の0.4秒前までしかさかのぼれず、AF固定で最大24枚、AF追従で8枚までしか記録できなかった。
下の写真では、シャッター半押し状態でスズメが飛び立つ瞬間を待っていた。ファインダー内でスズメが飛び立つ瞬間にシャッターボタンを全押ししたが撮れた感触はなかった。しかし、撮影画像を確認するとスズメが飛び立つ84コマ前から記録されていた。
電子シャッターの高速連写性能
連写性能は電子シャッターで約60コマ/秒、メカシャッターでは約10コマ/秒のAF-C撮影が可能。G9 PROでは電子シャッターで約20コマ/秒、メカシャッターで約9コマ/秒だったので、AF追従連写がより高速に進化したことになる。
高速で通過する新幹線の撮影には高速連写性能が求められるところだ。以下の画像では、新幹線がフレームインしてきたときに運転席部分でAF追尾を開始。約60コマ/秒で連写したところ、AF測距枠は運転席がフレームアウトするまで追尾し続けた。
対応被写体が追加されたリアルタイム認識AF
G9 PROでは被写体認識で「人物」「動物」が選べたが、G9PROIIには「車」「バイク」「動物瞳」認識が加わった。車とバイクの被写体認識は主にモータースポーツ用途となっている。
動物の瞳認識を試すため野鳥を撮影してみた。ダイサギが小魚を求めて動きまわっているところに遭遇したのでカメラを向けると、AF測距枠がダイサギの瞳をピンポイントで認識した。カメラが自動でダイサギの瞳を捉え続けてくれるため、動きに合わせてフレーミングに集中することができた。
突然目の前に現れたアゲハチョウ。すぐにカメラを向けたところ、素早くリアルタイム認識AF(動物瞳認識)がアゲハチョウをとらえた。ピントが合った瞬間にシャッターを押した1枚目の写真。この後すぐに飛んで行ってしまい見失ってしまった。アゲハチョウの小さな瞳にもピントを合わせてくれた。
今回は認識被写体にはない飛行機、鉄道も撮影してみた。両方とも認識被写体を「車」にして撮影してみたが自動認識の精度は低かった。飛行機撮影では、機首部分にAFを合わせたい場面でエンジン付近にAF測距枠が乗り移ることや、背景にピントが合うこともあった。
被写体を自動認識にして追尾AFで鉄道を撮影したところ、車両の先頭部分で追尾を開始。しかし、先頭部と車両側面が同系色だったため、車両側面にAFポイントが乗り移ることもあった。自動認識に対応してない被写体の場合は、自動認識をOFFにして狙うのも良いだろう。
約1億画素の手持ち撮影が可能なハイレゾモード
ハイレゾモード撮影は、センサーをシフトさせながら8回連続で自動撮影した画像をカメラ内で自動合成するもの。それにより最大約1億画素相当の高解像写真が生成される。
手持ち撮影にも対応。手持ち撮影機能をONにすることで合成ズレがなく、細かなディテールまで写し出すことができた。
ちなみに手持ち撮影OFFで撮影した場合、合成画像が乱れてしまい一度も成功しなかった。
同時発表の新レンズ2本も試用
LEICA DG VARIO-ELMARIT 35-100mm / F2.8 / POWER O.I.S.
35mm判換算で焦点距離70-200mm相当の画角が得られるズームレンズ。
レンズ構成は13群18枚(UEDレンズ1枚、EDレンズ2枚含む)を採用。最短撮影距離は0.85m、フィルター径58mm。外形寸法は67.4×99.9mm、質量は約360g。
夕日に照らされた航跡波が美しい。開放F2.8の撮影でも描写力が優れたレンズで、逆光に対してもゴーストやフレアを感じることはなかった。
フリーアングルモニターを使い、ローポジションでモニターを見ながら前ボケと背景の空を意識してフレーミングした。
暗がりの中、近づいてくる電車にも素早く狙ったポイントでAF追従してくれた。電子シャッターの約60コマ/秒で撮影。
電車がホームから離れていくところをシャッタースピード1.6秒で手持ち撮影。テールライトが綺麗に流れていった。
LEICA DG VARIO-ELMAR 100-400mm / F4.0-6.3 II ASPH. / POWER O.I.S
35mm判換算で200-800mm相当の画角が得られる超望遠ズームレンズ。1.4倍と2倍のテレコンバーターの装着にも対応する。
レンズ構成は13群20枚(非球面EDレンズ1枚、UEDレンズ1枚、EDレンズ2枚含む)を採用。外形寸法は83×171.5mm、質量は約985g、最短撮影距離は1.3m、フィルター径は72mmとなっている。
三脚座の着脱に対応。手持ち撮影の時にこの三脚座を付けておくと、先端部の角がとがっているためレンズを支える左手に食い込んで痛い。手持ち撮影の時は外しておくのが良いだろう。
スイッチ部は上から∞~5.0mと∞~1.3mの切り替えができるフォーカススイッチ、AF/MFの切り替えスイッチ、手ブレ補正のPOWER O.I.S.スイッチとなっている。そのほか、持ち運び時にレンズが繰り出さないようにするズームロックリングが付いている。
ボディとレンズの協調手ブレ補正「Dual I.S.2」があるので、迫ってくる電車をシャッター速度1/60秒で止めることができた。手ブレ補正の効果により構図に集中でき、フレーミングも安定した。
超望遠レンズの圧縮効果で約12km先にある東京タワーが大きく写りこんだ。
羽田空港を離陸する飛行機。779点の像面位相差AFにより自由なフレーミングで撮影できる。
テレコンバーター「DMW-TC20A」
焦点距離を2倍に伸ばすことが出来るテレコンバーター。「LEICA DG VARIO-ELMAR 100-400mm / F4.0-6.3 II ASPH. / POWER O.I.S」と組み合わせた場合、最大で焦点距離1,600mm相当の画角が得られる。ただしその組み合わせの場合、使用可能範囲は210~400mm(840-1,600mm相当)になる。
焦点距離1,600mm相当で迫力ある離陸シーンが狙える。2倍のテレコンバーターを付けると開放F値がF6.3から2段暗いF13となる。そのためISO感度を上げて撮影した。
まとめ
今回はG9PROII(バッテリーグリップ付き)1台+レンズ3本+2倍テレコンバーターを持って撮影してきた。これだけの機材でもレンズは小型軽量なので、バックパックタイプのカメラバッグに余裕で収まり、余分なスペースもできるほど。おかげで1日撮影していても疲労感がなく、機動力が増した印象だ。
動く被写体に電子シャッターが使いやすく、被写体に合わせたカメラ設定を選択することでイメージ通りの写真を撮ることもできた。また、強力な手ブレ補正機能のおかげで超望遠レンズを使った時も安定した撮影も可能だ。電子シャッターのローリングシャッター歪みも軽減されている。
撮影中は風が強い場所などでレンズ交換を頻繁に行っていたので、センサーへのゴミ付着が気になったが撮影した写真にゴミが写りこんでいることはなかった。
AF追従超高速連写をはじめ、バッファメモリの拡大でシャッターのレスポンスも良く、決定的瞬間が撮れるカメラだと思う。