クルマとカメラ、車中泊

小さくて可愛い相棒!TTArtisan ミニフラッシュ&ミニLEDで写真表現を広げよう

今回の1枚

久しぶりに都内で飲んだ帰りのスナップ。八丁堀付近。いや〜電飾が点いて師走であることをヒシヒシと感じますなあ。しばし見惚れてしまいました。

かつては毎晩のように見ていた風景ですが、田舎暮らしにはこうした風景はないので、懐かしくさえ感じてしまいます。この日は中学・高校の同窓会だったんで、参加者全員出会ってから50年ですw 中学、高校一緒の男子校だったので、おっさんしかいない地獄絵図。もとい! 気を使わず楽しい同窓会でした。

50年付き合いの途切れなかった友人、高校卒業以降付き合いのなかった友人、そこにはムラはあるんだけど50年前のあの日に戻るのは一瞬でした。いろいろな懐かしさに包まれる夜でしたなあ。

デイライトシンクロで花を生き生きと表現

今回のベストショットはこれ。デイライトシンクロでの1枚です。デイライトシンクロとはなんぞ? と思った方もいるでしょう。最近の一眼デジタルカメラにはフラッシュが付いてませんからね。

かつては、ファインダーの上あたりに収納式のフラッシュが搭載されていたもんですが、いまは高感度の画質が良くなったせいか、この数年のカメラではフラッシュを搭載した機種がほとんどなくなっちゃいましたからね。

本来、フラッシュは暗いところで光を補うためのものですが、それを明るい日中に光らせるとこんな写真が撮れるんです。逆光に向かうとコスモスの花びらは影になってしまうはずですが、それをフラッシュで明るくしてやってるんです。

花びらが生き生きと、いやむしろナマナマしく表現できてるでしょ。何しろ日中だからこれをLEDでやろうとするとものすごく明るいLEDが必要になってしまうけど、フラッシュは一瞬のうちに強い光を出すので小さな機材なのに使い勝手がいいんです。

使ったのはこちら。TTArtisan ミニフラッシュです。

TTArtisan ミニフラッシュを使った作例。遅い午後、逆光のコスモスをフラッシュで浮き上がらせた

フイルム風デザインが愛らしいTTArtisan ミニフラッシュ

かつての35mm判フイルムの形をしていてとてもキッチュで可愛らしいフラッシュです。小さいのでカメラバックに忍ばせておくといいよね。電池式ではなくてUSB Type-Cで充電して使う充電式です。

フイルムのような外観が愛らしい。実際のフイルムより少し大きい

カメラのホットシューに差し込んで使うんです。シャッターを切るとその一瞬だけ光ります。その一瞬光ってる時間を閃光時間ていうんですが、残念ながらカタログや取説に記載されていなかったので、正確なところはわからないんですが、一般的に数百分の1秒〜数千分の1秒といったごくごく短い時間で光るので、動きを止める写真にもよく使われます。

TTArtisan ミニフラッシュは光量の小さなフラッシュなので閃光時間はおそらく数千分の1秒だと想像してます。

カメラのホットシューに差し込んで使う。レンズと距離を取らないとレンズの影が写ってしまうので全長の短いレンズと組み合わせると良い

フラッシュの仕組みとガイドナンバーの計算方法

ところで、僕はフラッシュと書きましたが、ほかにもストロボやスピードライトなんて言い方があります。いずれにしても一瞬だけ光るという点では同じモノです。iPhoneなどスマホにもフラッシュが付いてますが、こっちはLEDをシャッターが開いている時間だけ点灯させているので、機構的にも役割的にもちがうもので、動きを止める効果はありません。

ここで書いているフラッシュはキセノンガスを封入したガラス管にコンデンサに貯めた電力を一気に流し、放電現象によって発光してるんです。なのでカメラのシャッター速度に関係なく、ほんの一瞬、数千分の1秒で光ります。

一瞬だけ光るので適正露光を事前に知りにくいのがフラッシュの特徴でもあるんですが、Amazonの解説にはGN12って書いてあるでしょ? これガイドナンバーといって、光量の目安なんです。計算は簡単で感度がISO 100のとき、GN÷被写体までの距離=必要な絞り値です。あるいはGN÷設定した絞り値=適正露光となる被写体までの距離になります。

例えば、1m先にある被写体で適正露光を得るためには絞り値をF12にすればいいということになります。現実的にはF11でいいでしょう。この計算は暗所での計算なのでシャッター速度は無視されています。

日中に使う時は日光による露光量が設定されるシャッター速度によって加味されてくるので、作例のようなデイライトシンクロの場合、まずカメラをマニュアル露光に設定し、構図を決めたら露光を図ります。カメラの指示よりも2段から3段くらいアンダーになるように設定してから、シャッターを切ってフラッシュを光らせるという流れになります。あとは何枚か設定を変えて撮って一番好みにあったカットを選びましょう。

フラッシュなし

ちなみに、ガイドナンバー通りの計算で設定すると出来上がりはちょっと暗いかなあ、と思うはずです。カメラの適正露光にはフイルム時代から続く物性としての基準があるんですが、この基準通りだと人間が心理的に感じる明るさよりも暗く感じてしまうんです。まあ、そういうモノなので、暗いなと思ったら絞りを1段開けるか、感度を1段高く設定して自分の好みの明るさに合わせて撮り直してください。

フラッシュあり

シンクロ速度を理解しよう

あいや〜、蘊蓄が長くなってきましたねえ。でも、もう少し蘊蓄聞いてください。

カメラのシャッターはビトウィンレンズシャッターという形式とフォーカルプレーンシャッターという2つの形式に大別されているんですが、一眼カメラで採用されているのはフォーカルプレーンシャッターの方でレンズから入った光をセンサー直前に置かれたシャッター幕で遮っているという構造です。カメラには1/8,000秒なんて高速なシャッター速度が搭載されていますが、実際にその速度でシャッター幕が動くわけではありません。

ある速度から遅いシャッター速度の場合はシャッター先幕がまず開き、設定したシャッター速度の時間が経過したらシャッター後幕が閉じて露光を完了させます。つまりシャッターが全開になる時間があるんです。それに対して1/8,000秒などの高速シャッターではシャッター先幕が開ききらないうち、正しくはセンサー終端に達しないうちにシャッター後幕が動き出します。つまり、シャッター先幕とシャッター後幕で形成されるスリットによって1/8,000秒に相当する露光量を得ているわけです。

シンクロ速度より速いシャッター速度では、先幕と後幕の間にできるスリットで露光される

で、この高速シャッターを使っているときにフラッシュを光らせてしまうと、画像にはシャッター幕の影が写っちゃうんですね〜。スリットを通しているから当然ですね。カメラメーカー純正のフラッシュでは発光時間を長くするなどの工夫で高速シャッターを使う時もシャッター幕の影が写らないように工夫されています。ハイスピードシンクロなどと呼ばれているものです。ですが、今回のTTArtisan ミニフラッシュのような小型のサードパーティ製ではそのような機構はなく、シャッターの影が写ってしまいます。

そこで、あるシャッター速度、シャッターが全開になる速度ですね。それよりも遅いシャッター速度を使わねばならないと言った制約が生まれてくるわけです。その、ある速度というは具体的には1/200秒〜1/250秒です。この時のシャッター速度をシンクロ速度と呼んでいます。

幅があるのはカメラのシャッターが実際にどのくらいの速さで動いているかに依存するからですが、一般に普及機と言われる機種では1/200秒、中級機・高級機では1/250秒です。ただし10年前くらいの古い機種だと1/125秒のものもあるし、フイルム1眼レフの場合は1/60秒のものもあったりしますよ。

シンクロ速度より遅ければ、先幕が完全に開いてから後幕がスタートするのでシャッターは全開になる

実写で確認するシンクロ速度の違い

つまり、TTArtisan ミニフラッシュのようなハイスピードシンクロ対応ではないフラッシュを使うときに大切なのはシャッター速度の設定なのです。実際にどう写るか、壁を撮ってみましたよ。使ったカメラはソニーα7C。位置付け的には普及機という認識で良いでしょう。

写真①:1/200秒
写真②:1/500秒

写真①は1/200秒。写真②は1/500秒です。1/500秒でははっきりとシャッターの影が写っていますね。これ1/1,000秒にすると明るい部分はさらに半分になります。一方1/200秒では全面に光があたっています。1/200秒以下、つまり1/125秒や1/60秒でも同じように全面にフラッシュの光を捉えることができます。

α7Cではシンクロ速度が1/200秒ということですね。先にも書いた通り中級機以上ではシンクロ速度は1/250秒になるので、自分のカメラにつけて試してみてね。このように壁を撮ると違いがわかりやすいのです。

ちなみに写真下の方に円の一部のような影が写っていますが、これはレンズの影。TTArtisan ミニフラッシュは小さいが故にレンズの影も写ってしまいがち。そこでレンズもズームじゃなくて、いわゆるパンケーキレンズと呼ばれるような薄いレンズを使うのがおすすめです。

あとTTArtisan ミニフラッシュは4段階の出力調整ができるので、撮影距離によって適宜出力を変えてください。いろいろ制約があるので難しそうに聞こえたかも知れないけど、2〜3枚実践してみればすぐにコツは掴めます。写真も変わるし、小さいのでいつもカメラバックに忍ばせておけるいい機材ですよ!

フイルム風デザインのミニLEDライトも登場

フラッシュの話で長くなっちゃったけど、TTArtisan ミニフラッシュのシリーズにはLEDもあります。LEDのほうは定常光、つまり一瞬だけ光るんじゃなくてずっと点いてる光です。LEDもフイルム風でいいですね。

右手前がミニフラッシュ、後ろ二つはLED。LEDの方がリアルなフイルムの大きに近い

製品パッケージもフイルム風です。黄色い方(コダック風味w)は白色メインで色温度を変更できるもの。緑色の方(フジフイルム風味w)はRGBカラーでいろんな色合いに変化するモノ。どちらも出力調整は付いていないシンプル構成です。

黒い部分がカメラへ取り付けるためのシュー。ミニフラッシュ(右)には発光させるための接点が見えている。固定式でフラッシュの向きは変えられない。対してLEDのシューはマグネット式。カメラに取り付けると向きを変えることができる

黄色いコダック風はこんなふうに3段階に色温度を変更できます。小さい割には明るくて懐中電灯代わりにもグッドな感じ。

約6,000K
約4,000K
約2,800K

緑色のフジフイルム風はこんなふうに色合いが変化します。ボタンを押している間に連続的に変化してゆくので何回も正確に同じ色を再現するのは難しいかも。

LEDライトで背景を自在にコントロール

LEDも使ってみようってことで、こんな風にセットして作例を撮ってみました。ガラス皿に野の花(雑草笑)を乗せて、ガラス皿をRGBカラー(フジフイルム風)で照明し背景を作ります。白色光(コダック風)で花の前面を照明してメインの被写体である花のディテールを描出しています。

LEDで照明する時は周りを暗くする。撮影は夜におこなった

できた写真がこちら。アングルは全部同じ、花を描出している白色光は全て6,000K。背景の色合いだけを変えてみました。雰囲気に合わせて、露光とライトの位置をすこーしずつ変えています。どうです? 同じ被写体だけど背景の色合いによって、朝に見えたり、昼下がり、夕方、深夜に見えますよね。RGBライトで背景を作るとさまざまに変化を楽しめちゃうわけです。

以上、TTArtisan ミニフラッシュとミニライトを紹介しましたが、どちらの製品もシンプルな機能でリーズナブルです。

その分、使いこなしにちょっと工夫が必要かも知れないけど、多機能すぎて使い方自体が難しいものより、使う機会が多くなりそうですよ。だって、デジタルカメラなら何度か撮り直せばいいんだもん。使う度に毎回、取扱説明書を読むよりも早いと思う次第であります。

1962年東京生まれ。日本大学芸術学部卒業後、出版社マガジンハウス入社。社員カメラマンを経て2010年にフリーランスとなる。主に風景・星景を撮影し、星空の撮影は中学校で天文部に入部した頃からのライフワーク。ニコンカレッジで、星景写真講座を担当。星空に興味ある方は「こちら」へ