新製品レビュー
NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S
ニコン伝統のマイクロ105mmがZマウントに
2022年7月4日 07:00
ニコンの中望遠マイクロレンズといえば105mmが伝統的で、Fマウントのユーザーも馴染み深い焦点距離のはず。本レンズは等倍での撮影が可能、そして開放F2.8という王道の105mmマイクロレンズだ。
中望遠マイクロレンズ(他メーカーではマクロレンズと表記)は、50mmクラスの標準マイクロレンズよりも離れた場所から被写体を大きく写せると同時に、背景を整理してスッキリさせるのが得意。ボケも大きく、花のクローズアップをするとき使いやすいレンズだ。レンズラインナップになくてはならないレンズといえる。
外観・操作性
幅が広いピントリングの動きは滑らかで、繰り出しがないIF(インターナルフォーカス)式を採用する。
最短撮影距離は0.29m、最大撮影倍率は等倍。バラの中心部だけを切り取ったり、小さな花も大きく写すことができる。今回の撮影ではピント合わせにほとんどAFを使用しているが、最短撮影距離付近の被写体でもピント合わせの迷いは少なかった。
クローズアップ撮影は拡大率が高くなるぶん、ブレが目立ちやすい。シャープでない画像はピントのずれというより、ブレだったりすることが結構ある。このレンズは光学式のVR機構を内蔵しており、その補正効果は4.5段分。ボディ内手ブレ補正との協調動作もあり、撮影中、かなり手ブレを防いでくれている印象だった。
最前面のレンズには汚れが付着しにくいフッ素コートが施されている。菜の花などを撮影していると、うっかりレンズ表面に花粉をつけてしまうことがある。ついてしまった時に拭き取りやすい防汚性能があるのはうれしい。
側面にはフォーカス制限切り換えスイッチが備わり、無限遠までピントが合う「FULL」と、ピントを合わせる範囲を限定する「0.29〜0.5m」の2つに切り替えが可能だ。
またNIKKOR Zレンズらしく、鏡筒上部に絞り値・撮影倍率・撮影距離を示す表示窓があり、DISPボタンで切り替えることができる。三脚を使ってクローズアップするときなど、撮影しながら倍率を知ることができるのは便利だ。
その他、L-Fnボタン、コントロールリングといったNIKKOR Zレンズ共通の装備を利用できる。コントロールリングには絞り・ISO感度・露出補正のいずれかを割り当てられる。
画質
マイクロレンズということで、気になるのはやはり近接時の画質だ。まずは花のしべ先端の粒々、茎の毛状の部分など、クローズアップしたときに見られる被写体の緻密さに驚かされた。それでいてピント面から外れていくほどに、自然になだらかにボケていく。ニコンが「NIKKOR史上最高画質のマイクロレンズ」と謳うのも納得だ。
絞り羽根は9枚で、円形絞りを採用。木漏れ日のボケを写してみたところ、開放は丸みがあり、絞りF8ぐらいに絞るとやや角が見え始める。絞り開放時の四隅のボケはややレモン型だが、ボケが滑らかなのであまり気にならなかった。
作品
蝶の胸部を拡大してみると細かい毛がとても緻密に解像されている。どの写真を見ても画質の良さを感じ、撮っていて気持ちがいい。
バラの花芯を等倍付近までクローズアップしたもの。シベの先にある細かい凹凸もはっきりわかる。倍率が高くなるとAFに少し時間がかかるが、迷って合わないということはほとんどなかった。
シャープ感は高いが、けっしてガチガチではなく自然な写り。花の質感、葉の質感がリアルに再現されている。背景のボケも滑らかで美しい。
絞り開放で撮ると画面四隅の玉ボケはレモン型に写るが、この写真は少し絞ったので丸く見えている。F5.6ぐらいからわずかにボケに角が出始めるが、F4前後なら全体的に丸い形になる。
手持ち撮影でシャッター速度1/40秒という条件。今回はほとんどのカットを手持ちで撮影したが、手ブレ補正がしっかり効いていて、ブレが気になることがほとんどなかった。
まとめ
焦点距離105mm・等倍・絞り開放F2.8という中望遠マイクロレンズはやはり使い勝手が良い。高画質で手ブレ補正もよく効き、操作もしやすく撮っていて気持ちよさを感じるほど。Nikon Zユーザーで花を撮りたいなら、ぜひ持っておきたいレンズだと感じた。