新製品レビュー

ZÜCA NAVIGATOR + ZÜCA Professional Organizer

アメリカからやってきた〇〇って休めるカメラバッグ

カメラマンは現場で最良の結果が得られるよう、さまざまな状況に対応するためにも、とても多くの撮影機材を持ち運ぶ。カメラ、レンズ、三脚にライティング機材……。さらに出張であれば着替えや雨具なども。となれば自然と荷物は多く重たくなるため、ザックで背負うのではなくキャスター付きカメラバッグで転がしながら運びたくなるものだ。

さて、今回紹介するのはそんなキャスター付きカメラバッグに登場した興味深い新製品「ZÜCA(ズーカ)NAVIGATOR + ZÜCA Professional Organizer」だ。

2004年にアメリカで誕生

ZÜCAというブランドを初めて耳にする人も多いのではないだろうか。いやなに、筆者もこの製品で初めて知った。ZÜCAは2004年にアメリカで誕生したブランドで旅行や出張、スポーツやアウトドア、メイクアップアーティストに向けた製品などを作ってきた。そのZÜCAが本製品でカメラバッグ業界に進出してきたというわけだ。

ZÜCA製品は、子どもたちが重たい教材を入れたリュックで通学しているのを心配した主婦が「腰に負担なく荷物を運べる」「荷物の出し入れがしやすい」「ひと休みしたいときに座れる」というコンセプトのもと誕生した。

この記事を執筆している時点で、本製品の取り扱いは直営店のみでの販売となっているそうだ。

……ん? と思った方、鋭い。そう、ZÜCAのキャスター付きカメラバッグは"座れる"のだ。

たぶん多くの人がキャスター付きカメラバッグに対して思ったことがあるだろう、「座れればいいのに」と。

出張や旅行で少し疲れたときイスに座りたいと思っても席が埋まっていたりそもそもイスがなかったり。地べたに座るわけにもいかず、立ち続けて家につく頃には足が棒のよう……。手元には手頃なサイズのキャスター付きカメラバッグを転がしていても少し腰掛けてみれば「ベコッ」などといって壊れそうな音がする。

そんなフラストレーションから開放してくれるのが本製品だ。コロコロと小気味よく転がしていたキャスター付きカメラバッグをスッと直立させた途端、簡易イスに早変わり。街を歩き倒した足に休息タイム。体の疲れを軽減してくれる優れものだ。

そんな座っちゃって強度は大丈夫なのかと心配されるかもしれないが、まったく問題ない。太めのアルミ合金のフレームは座ってみてもヨレなどが一切なく堅牢そのもの。カタログスペックとしては驚きの136kgまでOKということだから、ちょっとやそっと大きめの人でも大丈夫だろう。さすがはアメリカン仕様といったところか。座面も適度な広さで座り心地は良い。

ホイールは大型で、直径約10cmのものを2輪備える。少し弾性のあるポリウレタン製で、振動も最小限に抑えられている。転がしてみた感触はスゥーッコトコトコトと音も振動も少なく、すこぶる良好。重たい機材でも疲れにくそうだ。

キャスター付きカメラバッグはザックタイプと違い、どうしても微振動が発生するが、弾性のある大型ホイールと厚手の間仕切りのおかげで機材へのダメージは極めて少なそうだ。

滑りのいい大型のホイール2輪を備えていることから、座る際に後ろ側にツルリと滑りそうで不安に思うかもしれないが、本製品は座ることを前提に設計されているので安心してほしい。キャリーバッグを立てたときだけ、ホイールよりも出っ張るように追加の2本足がセットされているのだ。そのため立てた状態では4本足で直立でき、ホイールは地面と接地しないため、まったく滑ることがない。電車などでもバッグが横滑りする事態を防止できていい。

カメラ収納部は大容量

カメラ収納部は前面の蓋を開くタイプ。蓋部分が片扉のように開く構造だ。裏には細かなメッシュポケットが多く付いているので、メモリーカードやバッテリーなどの小物を整理しやすい。カメラ収納部には細かな間仕切りの他、落下防止用のバンドも付属している。

とはいえ、バッグを立てた状態ではレンズなどが転げ落ちてくる可能性もあるので機材を出し入れする際はバッグを倒したほうがいいだろう。

ちなみに、カメラ収納部である「ZÜCA Professional Organizer」は取り外すことができる。付属のショルダーストラップを取り付ければ、単体でカメラバッグとしても使える。

試しに中判ミラーレスカメラ+中判レンズ2本+APS-Cミラーレスカメラ+APS-Cレンズ5本を収納してみたが、まだだいぶ余裕がある印象。他にもクリップオンストロボなどのカメラアクセサリーを追加で入れられそうだ。

インナーバッグの外寸は17×43×31.5cm。間仕切り(小)が8枚も付属しており、かなり細かく収納スペースを調整できる。

ノートパソコンを入れるための専用スペースは残念ながらないが、内蓋の外側に広めのポケットがあるのでそこに差し込んでおけば良さそうだ。

13インチのノートパソコンを入れると半分はみ出たような状態になるが、実用上は問題ない。タブレットなどジャストサイズで収まるだろう。なお、この状態からさらに外蓋を閉めるためパソコンが落ちる心配はない。

ちなみにキャリーバッグ本体「ZÜCA NAVIGATOR」は、インナーバッグの「ZÜCA Professional Organizer」を取り外してカメラバッグとしてだけではなく、旅行用の"座れる"キャリーバッグとしても重宝しそうだ。

また、同社にはZÜCA NAVIGATORと同じフレームを採用する「ZÜCA FLYER Artist」と「ZÜCA FLYER Travel」というモデルがある。インナーバッグの「ZÜCA Professional Organizer」は、これらのモデルにも合う設計となっているとのことだ。

まとめ

以前、筆者は出張の疲れから電車の中でセミハードのキャスター付きカメラバッグに腰掛けていたら天面がベコッとなって転げそうになったことがある(危ないのでまねしないでください)。

でもやっぱり疲れていれば座りたくなってしまうのは仕方のないこと。そんな疲れている状態のとき、それまでコロコロと機材を運んでくれていたキャスター付きカメラバッグが「どうぞお座りください」といってくれるこの「ZÜCA NAVIGATOR + ZÜCA Professional Organizer」がなんと頼もしいことか。

機材収納力、快適な転がり具合、しっかりとした座り心地。キャスター付きカメラバッグに非常に良い選択肢が登場した。

今浦友喜

1986年埼玉県生まれ。風景写真家。雑誌『風景写真』の編集を経てフリーランスになる。日本各地の自然風景、生き物の姿を精力的に撮影。雑誌への執筆や写真講師として活動している。