新製品レビュー

f-stop Tilopa

機材にあわせてカメラ収納部を交換できるバックパック

当たり前だがカメラバッグはカメラを入れるためのものだ。しかし、写真を撮影するためにはカメラだけで事足りるわけではなく、フォトグラファーはカメラ以外の物をたくさん持ち歩くことになる。それは防寒着や雨具だったり、ライティング機材だったり水中ハウジング、スキーやスノーシューかもしれない。

そうした大量の荷物を持ち運ぶのに、自分の使っているカメラバッグでカメラ以外の荷物が全然入らない、と思ったことはないだろうか? カメラ収納部分に荷物を入れられないこともないが、仕切りなどがジャマで大きな荷物は入らないだろう。

ニーズに合わせて変化するカメラバッグ

f-stop(エフストップ)の大容量バックパック「Tilopa(ティロッパ)」は、そんな悩みを解決してくれるかもしれない。このTilopa、使うユーザーに合わせてバッグ内のカメラ収納部を変更することができるのだ。

画期的なインターナルカメラユニット

さて、大容量と言っておいていきなりぺたんこになったバッグの画像が出てきて驚いたかもしれない。

筆者も初めて見たときは驚いた。しかし、もちろん50リットルの大容量を誇るTilopaがこんなに薄い訳がない。実はこのTilopa、カメラ収納部分が“別売”なのだ。

カメラバッグなのにカメラの収納部分が別売というのは珍しい。だが、それこそがTilopaの画期的な構造を支えている。インターナルカメラユニット(以下、ICU)と呼ばれるカメラ収納部分をバッグ内にセットすることで、はじめてカメラバッグとして完成する構造となっているのだ。

XL Pro ICU m241(左)とTilopa(右)

ICUは収納する機材の量で選ぶことができる。株式会社テイクが扱っているICUは、「XL Pro ICU m241」「Large Pro ICU m231」「Medium Slope ICU m285」「Medium Shallow ICU m226」の4種類だ。

左からXL Pro ICU m241、Large Pro ICU m231、Medium Slope ICU m285、Medium Shallow ICU m226

MediumサイズのICUが2種類あるが、これは奥行きの違いによるもの。Slopeの方は上部から底面側に向かって奥行きが深くなっており、少し容量が大きくなっている。

左からMedium Slope ICU m285、Medium Shallow ICU m226

これら4種類のICUから、自身の使用するカメラ機材とのバランスを考えてセレクトをすることになる。

ここで気をつけたいのは大は小を兼ねると思って大きなICUを無理に選択しないことだ。というのも、サイズ次第でカメラ収納部分以外のスペースが決まるからだ。下の画像のように「XL Pro ICU」を入れた場合は上部のスペースがほとんどなくなっていることがわかるだろう。

XL Pro ICU m241を入れたところ
Large Pro ICU m231を入れたところ

Medium Slope ICU m285を入れたところ
Medium Shallow ICU m226を入れたところ

「Large Pro ICU m231」でも収納力はなかなかで、試しに中判デジタルカメラとAPS-Cセンサーのミラーレスカメラのシステムを入れてみたところ、しっかりと収まった。筆者的にはICUはこれくらいのサイズに留めて、上部に防寒着などを入れる使い方が良さそうだと感じた。

ちなみに「XL Pro ICU m241」と「Large Pro ICU m231」では奥行きが16.5cmあるため、大きめの望遠レンズなども入るだろう。

なお、カメラの取り出しは背面側から行うスタイルのため、バッグを地面に下ろさなくてもレンズ交換が可能な点も筆者的に好感を得たポイントだった。素早くレンズ交換が行うことができ、かつ地面に置いてバッグが汚れることもない。

大容量でも使用感良し

50リットルの大容量バックパックなので、ICUを入れた見た目はけっこう大柄になる。だが、背負ってみると金属フレーム入りの背面と丈夫に作り込まれたショルダーハーネス、ウエストベルトがしっかりと背中をホールドしてくれるのでバランスがいい。重たい機材を入れても重心がブレることはなさそうだ。

下の画像は身長165cmの筆者が背負ったところ。やや大きめではあるが背中にきちんとフィットしている。

太いショルダーハーネスにより、重たい荷物でも肩に食い込まない。

ダブルベルトで腰にフィットするウエストベルト。機材の重量が肩だけでなく腰に分散されることで、重さが軽減して感じられる。

背面には金属フレームが入っている。これによりバッグ全体がヨレることなく、重量バランスを背中に保持しやすくなっている。

バッグの外側にはスノーシューを取り付けられるベルトがある。ほかにも、スキー板を取りつけることができるベルトが両側面に装備されている。

生地は耐候性に優れたナイロン。スレや水濡れから機材を守ってくれる。また、歩きながら水分補給できるハイドレーションにも対応している。

ユーザーそれぞれのカスタマイズに応じる

カメラバッグはユーザーそれぞれのスタイルにあったものを使うべきだ。市場にはたくさんのバッグがあり、選びたい放題でなにかしら自分にあったものが見つかりそうなものだが、案外自分の欲しているスタイルとどこかしら違ったりするもの。

Tilopaは、はじめからカスタマイズを前提に作られているため、自分好みのスタイルに近づけることができる。ICUも1つと決めず、撮影環境や季節に合わせて入れ替えていくのも楽しそうだ。

カラーも今回はブラックのみを紹介したが、オレンジとアロエの3色で展開されており、4種類のICUとの組み合わせによるパターンは、合計で12通りとなる。1つのカメラバッグとして、これほどカスタマイズのバリエーションを持った製品は他にないだろう。ぜひ読者諸兄にも自分好みの組み合わせを探して撮影をより快適に楽しんでほしい。

今浦友喜

1986年埼玉県生まれ。風景写真家。雑誌『風景写真』の編集を経てフリーランスになる。日本各地の自然風景、生き物の姿を精力的に撮影。雑誌への執筆や写真講師として活動している。