新製品レビュー

FUJIFILM X-T100(外観・機能編)

サブ機にも好適な一眼レフスタイルのエントリー機

富士フイルムから6月21日に発売となるX-T100はEVF搭載の一眼レフカメラスタイルのエントリー機で、すでに発売済みのEVF非搭載機X-A5と同じ2,424万画素のAPS-CサイズCMOSセンサーを搭載するミラーレスカメラだ。

これまでXシリーズで一眼レフカメラスタイルのカメラはX-T20やX-T2など中~上級機のみのラインナップだったが、新たにT-3桁機としてエントリークラスのX-T100が加わった格好だ。

主なスペックは同じエントリークラスのX-A5に似ているところが多いが、連写や動画機能などでパワーアップしている点もある。

富士フイルムらしいクラシックなデザインでファインダーを覗いて本格的に写真を撮る楽しみが得られるモデルが低い価格帯に加わったことは、従来の一眼レフカメラユーザーにとっても喜ばしいことだ。

本記事では主にX-T100の外観や機能性を中心にレビューしていく。

ライバル

富士フイルムXシリーズの中では機能的にはEVF非搭載のX-A5に近いが、EVF搭載機としてみるとX-T100は新たな立ち位置となり、Xシリーズのラインナップが厚くなったと考えることができる。1つ上のクラスとなるのが2017年2月発売のX-T20だ。

他社製品まで広げるとAPS-Cサイズセンサーを搭載し、一眼レフカメラスタイルのミラーレスカメラは現状、X-TシリーズとキヤノンのEOS Mシリーズしかなく、キヤノンEOS Kiss Mが同じクラスのカメラになる。

また、センサーサイズは一回り小さくなるがOLYMPUS OM-D E-M10 Mark IIIもデザインや位置づけ的にライバルと考えることができるだろう。

ボディデザイン

ボディの外観は一見するとX-T20のようなクラシックなデザインだが、サイズ感やボタン、ダイヤルなどの操作系は従来のX-Tシリーズとは異なっている。

サイズ、重量は121×83×47.4mm(幅x高さx奥行き)、399g(バッテリー、カード含まず)で一眼レフエントリー機よりもずっとコンパクトで持ち出しやすいサイズ感だ。

ただし、上位機のX-T20(118.4×82.8×41.4mm、333g)と比べるとサイズ、重量ともにX-T100の方が大きくなっている点に注意しておこう。

ボディにはアルマイト加工がされており、高級感のあるしっかりとした造りだ。ボディカラーはダークシルバー・ブラック・シャンパンゴールドの3色がラインナップされる。

ボディ前面が平らで突起がないためややグリップしにくいが、本体も軽いため軽量なレンズとの組み合わせでは特に問題となることはない。

また、オプションでボディ前面に取り付けることができる拡張グリップも付属している。取り付けは側面の専用ネジ穴に取り付ける方式で、これを取り付けるとホールド性は格段に向上する。手の大きめな人や重量級レンズを使う場合は取り付けて使用した方が良いだろう。

ボディ底面の三脚穴は光軸から少しずれた場所に設置してある。

EVF部にはストロボも内蔵されており、ガイドナンバー約5(ISO100・m)のポップアップ式。上面左側の専用レバーでポップアップさせる。光量自体はあまり大きくないが近くの被写体を撮るのには十分な機能だ。

操作部

ボタン、ダイヤルなどの操作系は特に上面部は従来のX-Tシリーズとは異なり、X-A5の操作系を踏襲したような造りとなっている。

まず、上面右側をみてみるとXシリーズおなじみのシャッタースピードダイヤルはなく、X-A5と同じくモードダイヤル、メインコマンドダイヤル、シャッターボタン、ファンクションボタンという構成だ。これに動画撮影ボタンが1つ加わっている。一般的なデジタルカメラに近い操作系なので入門者には分かりやすい配置であると思う。

上面左側には大きなファンクションダイヤルが新設されている。ここには任意の設定を割り当てることができ、カスタマイズして速写性を高めることが可能だ。ファンクションダイヤルについているレバーはストロボポップアップレバーだ。

背面右側には上部にクイックメニューボタンとサブコマンドダイヤルがあり、その下にメニューボタンとセレクターボタン、DISP/BACKボタンが配置されている。サブコマンドダイヤルは小さいが指掛かりの良い場所にありアクセス性は悪くない

再生ボタンはX-T20と同じ背面左側上部に設置され、再生、消去とボタンが分かれている。

撮像素子と画像処理関連

X-Tシリーズはこれまで独自のX-Trans CMOSセンサーを搭載していたが、X-T100に搭載されるのは一般的なデジカメに採用されるベイヤータイプのCMOSセンサーとなる。

ここが上位機との最も大きな違いとなるだろう。とは言っても世の中のほとんどのデジタルカメラはベイヤータイプのCMOSセンサーを搭載しているため、大きな心配はいらないはずだ。

有効画素数はX-A5と同じ2,424万画素で感度は常用でISO200~12800、拡張でISO100~51200となる。RAWは14bit記録に対応している。ボディ内手ブレ補正は非搭載のため、手ブレ対策は手ブレ補正対応のレンズによって行う。

富士フイルムXシリーズといえば、フィルムの色調を再現するフィルムシミュレーションが大きな強みだが、X-T100でもPROVIA(スタンダード)やVelvia(ビビッド)、ASTIA(ソフト)などを選ぶことができる。ただし、X-H1など上位機に搭載されるアクロスとエテルナには非対応である点に注意しておこう。

AF

AFはコントラスト式と像面位相差式のハイブリッドであるインテリジェントハイブリッドAFを採用。測距可能エリアは画面の隅の方まで広く7×13の91エリアに分かれている。

AFフレームはシングルポイント、ゾーン、ワイドの3つを使用でき、シングルポイントとゾーンはサイズ変更も可能だ。トラッキングAFにも対応し、入門機ながらAF関連機能は豊富。X-A5とほぼ同じスペックと考えて良い。

タッチフォーカスにも対応しており、ファインダーを覗きながら右手親指で画面をドラッグするとAFポイントを動かす事もでき操作性も良い。顔認識および瞳AFにも対応。瞳AFは右目と左目どちらを優先するか選択することも可能だ。
かつては苦手と言われたミラーレスカメラのAF機能も現在は既に成熟期に入り始めており、同クラスの一眼レフ機よりも機能は充実している。

連写性能

連写はミラーレス機としてはやや控えめな6コマ/秒だが、よほど速い動体を撮らない限り問題ない速度だ。連写速度もX-A5と同じであるが、連写可能枚数はX-T100が大幅に増えている。

X-T100は6コマ/秒時でJPEGが50枚、3コマ/秒時はカードフルまで途切れることなく連写可能だが、X-A5はそれぞれ、10枚、50枚だ。

ファインダー

ファインダーは一眼レフカメラと同じく光軸上に設置されており、X-T20と同じ0.39型有機EL約236万ドット。アイポイントは約17.5mmでファインダー倍率は0.62倍だ。

これまでのX-Tシリーズのファインダーの特徴を引き継ぎ、覗きやすい丸窓を採用している点も嬉しい。大きな視度調整ダイヤルやVIEW MODE ボタンも備える。

液晶モニター

背面の液晶モニターは標準的な3型の約104万ドットであるが、上下方向のチルトに加え横開きでセルフィ(自撮り)に対応している点が見逃せないポイントだ。

従来のX-Tシリーズは自撮りに対応していなかったが、X-T100はバリアングルモニターのように左側に180度開くことができる3方向チルト機構を採用している。

ただし、縦位置ローアングル撮影には非対応でX-T2やX-H1の3方向チルトモニターとは異なる点に注意したい(これらはモニターが右側に開く)。もちろんタッチ操作にも対応している。

動画機能

動画機能も同じエントリークラスのX-A5から強化が図られたポイントだ。撮影画質はフルHD/60pのほか、4K/15pにも対応し、撮影可能時間が一般のデジカメが撮影できる30分となっておりX-A5よりも伸びている。

解像度は1,280x720に落ちてしまうが4倍までのハイスピード撮影にも対応している。

通信機能

本機はスマートフォンとの連携が可能な高度な通信機能を備えているのもポイント。Bluetooth low energyによる常時接続に対応しているため、あらかじめペアリングしておけばカメラ側を操作することなくスマートフォンだけでカメラ内の画像にアクセスすることが可能。撮影画像の常時転送にも対応している。

旅先で撮影してすぐにスマホへ転送してSNS投稿といった使い方が簡単に行えるので、InstagramやTwitterなどSNSを積極的に使っているユーザーには嬉しい機能だ。

専用のスマホアプリと連携したリモート撮影機能も豊富で、F値やISO感度の設定変更のほか、スマホ側からライブビューを見てAFを操作することも可能である。

端子類

外部入出力端子はグリップ側側面にmicro USBとmicro HDMI(Type D)が配置されている。反対側の側面には2.5mmのレリーズ端子が備えられている。

写真撮影に必要な端子は一通り備えるが、ヘッドホン端子やマイク端子はないため動画用途に使う場合は注意しておこう。

記録メディア

記録メディアはUHS-IのSDカードに対応。シングルスロットで、メディアスロットはバッテリー室と共用になっている。

バッテリー

付属するバッテリーはXシリーズで共通して使えるNP-W126S。富士フイルムの他のカメラを持っているならバッテリーの使い回しが可能なので便利だ。撮影可能枚数は430枚となる。

カメラ本体でのUSB充電に対応するため、モバイルバッテリーがあれば旅先での電池切れの不安も少なくなる。なお、充電器はオプションとなっている。

充電器はオプション

充実のセルフタイマー

本機は3方向チルトモニター採用によってセルフィに対応しているが、それだけでなく自撮り向けのセルフタイマー機能も豊富だ。

例えば、フェイス・オート・シャッターを使うと、シャッターボタンを押さずともカメラが顔を認識したタイミングで自動撮影してくれたり、カップルタイマー撮影では指定した距離に顔が近づくと自動でシャッターが切れると言ったユニークな機能も搭載している。

不安定な状態でシャッターボタンを押す必要がなく、より積極的なアングルでセルフィを楽しめる。

まとめ

以上、FUJIFILM X-T100の外観、機能の詳細についてお伝えした。今回は試作機を使用したため実写評価は行っていないが、しっかりしたファインダーを搭載しながら、入門機に必要とされるスペックはほぼ搭載されており、操作系や基本的なメニューの中身も使いやすく配慮されている。

価格もレンズキットで10万円を切っており非常にバランスがよいモデルであると感じた。同じ入門機のX-A5の弱点であった連写時の連続撮影枚数も大幅に伸び、動体への対応力も向上している点もポイントだ。

外観も「カメラらしい」デザインであるため、入門者でなく今まで一眼レフカメラで撮影を楽しんでいた中~上級者のサブカメラに使ってみるのも良さそうだ。

あえて不安点を挙げるとすれば上位機との操作系の違いになるだろう。Xシリーズの上位機種には一般のデジカメに搭載されるモードダイヤルがなく、初めての人にはやや慣れが必要になる。そのため、X-T100の操作に慣れてもステップアップする段階で操作系がガラッと変わることには注意しておこう。

次回は実写可能機を使って実写を通してのレビューを行っていく予定だ。

中原一雄

1982年北海道生まれ。化学メーカー勤務を経て写真の道へ。バンタンデザイン研究所フォトグラフィ専攻卒業。広告写真撮影の傍ら写真ワーク ショップやセミナー講師として活動。写真情報サイトstudio9を主催 。