新製品レビュー
Panasonic LUMIX GX7 Mark III(実写編)
新モノクロームモード「L.モノクロームD」がストリートスナップに好適
2018年4月3日 18:00
小型軽量のストリートフォトモデル、LUMIX GX7 Mark IIの後継機。デザインのイメージは踏襲しながら、チルト式のEVFを搭載。ファインダーを覗きながらローアングル撮影ができる。また独立した露出補正ダイヤルやフォーカスモードレバーなど、操作性も向上している。
撮像素子は2,030万画素Live MOSセンサー。上位機LUMIX GH5やLUMIX G9 Proと同じ高精細の解像力が得られる。そしてLUMIX GX7 Mark IIで好評だった本格的なモノクロモード「L.モノクローム」に、さらにハイライトとシャドーが強調される「L.モノクロームD」も追加された。
またフィルムのような粒状感が得られる3種類の粒状モードも選択可能。ストリートフォトモデルとして、より魅力を増したスペックに仕上がっている。
解像力
単焦点レンズキットのLEICA DG SUMMILUX 15mm / F1.7 ASPH.で撮影。コンパクトでGX7 Mark IIIにフィットする。35mm判換算すると30mm相当なので、街のスナップに使いやすいレンズだ。
撮像素子が光学ローパスフィルターレスの2,030万画素になり、細かい枝や小さな花びらもしっかり解像されている。また建物のレンガ状のパターンにも甘さがない。
ストリートフォトというと、画質よりシャッターチャンス優先のイメージもするが、高い解像力を狙ったシーンにも向く写りだ。
高感度
ISO感度はISO200~ISO25600。ISO200~ISO800までは仕上がりに大きな差はなく、常用域として使える。ISO1600から高感度らしさが感じられるが、ISO6400まではよほど拡大しなければ気にならないレベル。ISO12800とISO25600は緊急用という印象だ。
ここではISO6400に設定した。拡大するとノイズリダクションによるディテールの欠落が見られるものの、不自然さはない。夜間のストリートフォトでも活躍できるカメラだ。
手ブレ補正
レンズ内手ブレ補正を搭載したレンズを装着すると、ボディ内手ブレ補正の5軸と、レンズ内手ブレ補正の2軸を合わせたDual I.S.が可能。手ブレ補正効果は4.0段を実現している。
G9 Proの6.5段には届かないが、メカシャッターでもショックが少なく、街中で撮影していても手ブレが気になることはなかった。
この写真は焦点距離38mm付近でシャッター速度1/50秒。この程度なら、手ブレの不安は全くなく構図とシャッターを切ることに専念できる。
L.モノクロームD / L.モノクローム
GX7 Mark IIIで搭載された新モノクロームモード「L.モノクロームD」。あえてコントラストが高いシーンで撮影した。光が当たっている部分は明るく、シャドー部は落ちて、印象深い写真に仕上がった。
また粒状モードを最も強い「強」に設定。フィルムライクな雰囲気だ。高感度フィルムのざらっとした仕上がりが好きな人におすすめだ。
階段に貼られた金属の板の質感を重視するため「L.モノクロームD」に設定してハイライトを強調させた。粒状モードは最も弱い「弱」に設定。わずかに粒状がプラスされることで、ハイライトの階調がより伝わる仕上がりになった。
またデジタルのモノクロは無機的な印象になりやすいが、さり気なく粒状効果を加えると、見た目に自然な雰囲気に仕上がる。
建物に映る電柱の影に惹かれた。素直なモノクロームを意識したので、従来から搭載されている「L.モノクローム」を選択した。
また粒状モードは「中」に設定。「強」ほど粒状は目立たたないが、効果ははっきりわかる。モノクロフィルムのような雰囲気を重視したい人に向いている。
連写
AFSでは約9コマ/秒、AF追従のAFCでは約6コマ/秒の連写機能を持つ。ここでは走ってくる都電をAFCで連写した。レンズが15mmなので線路脇の柵ギリギリで狙う。
決して速い速度ではないが、それでもこれだけ近いと目の前を通り過ぎるのはあっという間だ。連写したうちの6コマを掲載した。つまり、これで1秒になる。ストリートフォトなら十分な連写速度だ。
タッチパッドAF
レンズを私物のLEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mm / F2.8-4.0 ASPH. / POWER O.I.S.に交換して、窓辺に置かれた人形と植木場を撮影した。15mmより大柄なレンズだがグリップに指がしっかり掛かり、安定して構えられた。
LEICA DG VARIO-ELMARIT 50-200mm / F2.8-4.0 ASPH. / POWER O.I.S.のような大口径望遠レンズを頻繁に使うなら、さらに別売のハンドグリップを装着するとホールド感がアップするだろう。
ピントは人形。ファインダーを覗きながら右手の親指でモニターをタッチして測距点を移動されるタッチパッドAFにより、カメラを構えたままスピーディーなピント合わせができる。
ずいぶん色褪せた年代物の車だと思ってよく見たら、タイヤは空気が抜けてぺしゃんこになっている。背面モニターをチルトさせて地面スレスレからローアングルで狙う。広角レンズらしい誇張された遠近感により、潰れたタイヤが強調できた。
タッチパネルなので、ピントを合わせたい部分にタッチするだけで測距点が選択でき、スムーズな撮影が可能だ。またボディ内手ブレ補正のおかげで、不安定な体制でも安心してシャッターが切れる。
キットレンズ
GX7 Mark IIIとLEICA DG SUMMILUX 15mm / F1.7 ASPH.の組み合わせは、レンズ交換式を感じさせないほど軽快に街を撮り歩ける。ここでも派手な人形を見つけてとっさに撮った。
絞りは開放にして背景をボカした。F1.7でも焦点距離15mmは大きなボケは得にくいものの、街の雰囲気が感じられる写真が撮れる。
街中に停めてあった自転車のハンドルをクローズアップ。ファインダーをチルトさせてウエストレベルで撮影している。絞りは開放のF1.7。
マイクロフォーサーズの広角レンズでも、被写体に迫ればボケを狙った写真も撮れる。また絞り開放で近接撮影しても甘さのない引き締まった写りだ。
動画
決して動画向きのカメラではないが、4K動画機能は搭載している。ただし60pではなく30pまで。とはいえ通常は4K30pまであれば、よほど動きの速い被写体を滑らかに捉えるのでなければ不満はないだろう。
また4K60pはデータも巨大になるので、相当なパワーを持つPCでなければ快適な編集作業はできない。旅先でストリートフォトの合間に動画で記録しておくのにちょうどいい動画機能と言えるだろう。
まとめ
コンパクトなボディに手ブレ補正やチルト式のファインダーやモニターを搭載し、軽快に撮れるGX7 Mark IIIはまさにストリートフォトに最適な仕上がりだ。
その中で、特に注目なのがモノクロモードの進化。従来からのL.モノクロームとL.モノクロームDが選択でき、さらに3種類の粒状モードも設定できるのは、まるでモノクロフィルムの選択のようだ。
欲を言えば、周辺光量の調節や、ハイライトシャドウ機能がフォトスタイルごとに設定できるとなお嬉しいが、このままでも十分モノクロの楽しさを堪能できるはず。街撮り派とモノクロ派には見逃せないカメラだと実感した。