新製品レビュー

Panasonic LUMIX GX7 Mark III (外観・機能編)

基本機能がグッと充実 ストリートフォト「GX」シリーズの最新モデル

LUMIX G9 PRO、LUMIX GH5sと立て続けにハイエンドクラスのニューモデルを投入しているパナソニック。

そして、ストリートフォトモデルのGXシリーズにも、ニューモデルとなるLUMIX GX7 Mark IIIが登場した。小型軽量でボディ内5軸手ブレ補正機構も搭載し、高い機動力を誇るLUMIX GX7 Mark IIの後継機になる。

ボディデザイン

外観デザインもLUMIX GX7 Mark IIを踏襲。シンプルでやや地味な印象も受けるが、街中で目立たない、いかにもストリートフォトモデルらしい形とも言える。

ここでは「単焦点ライカDGレンズキット」に含まれるLEICA DG SUMMILUX 15mm / F1.7 ASPH.を装着。小型でLUMIX GX7 Mark IIIとマッチするレンズだ。

手にした印象もLUMIX GX7 Mark IIに近く、大型のグリップを持つ機種とは異なる、手のひらに収まる感覚が心地いい。

操作部

上面で大きく変わったのが、独立した露出補正ダイヤルが採用されたことだ。LUMIX GX7 Mark IIまでは、後ろダイヤルを押し込むと露出補正が行えた。ダイヤルを少なくできるのはメリットだが、とっさのときに戸惑うこともある。

LUMIX GX7 Mark IIIは、モードダイヤルと同軸に露出補正ダイヤルを設置することで、省スペースと使いやすさを両立させた。なおLUMIX GX7 Mark IIでは露出補正と同軸だった電源スイッチは、動画ボタン側に移動し、視認性も高くなった。

背面のレイアウトはLUMIX GX7 Mark IIとほぼ同じ。十字ボタンは、それぞれISO、WB、ドライブ、AFモードのボタンも兼ねていて、スピーディーに設定の変更が行える。

またフォーカスセレクトボタンとQ.MENUボタンはファンクションボタンにもなっていて、別の機能の割り当てが可能だ。ボタンはLUMIX GX7 Mark IIより大きくなり、より押しやすくなったのもポイントだ。

背面部のモニターの上は、新たにフォーカスモードレバーが設置された。これは上位機のGH5やG9 PROと同じだ。AFS/AFF、AFC、MFがレバー操作で瞬時に変更できるため、撮影条件に応じて確実な対応ができる。

また、4Kフォトボタンは省略された。そしてLVFボタンはファインダーの切り替え以外にも、ファンクションボタンとして他の機能に変更もできる。

撮像素子と画像処理関連

撮像素子はLUMIX GX7 Mark IIの1,600万画素Live MOSセンサーから、2,030万画素Live MOSセンサーになり、GH5やG9 PROと同等の解像力が得られるようになった。

さらに注目はモノクロモードだ。LUMIX GX7 Mark IIでは、本格的なモノクロ写真が撮れる「L.モノクローム」が搭載されたことでも話題になったが、LUMIX GX7 Mark IIIでは、L.モノクロームに加え、ハイライトとシャドーを強調しながらディテールも残す「L.モノクロームD」を新搭載した。

しかも粒状機能も搭載され、弱、中、強の3段階のコントロールが可能。フィルムを思わせる仕上がりが楽しめる。この粒状機能は、従来のL.モノクロームにも使用可能だ。モノクロ機能と粒状機能を組み合わせることにより、好みのモノクロ表現に追い込めるようになった。

AF

AFはLUMIX GX7 Mark IIと同じコントラスト検出の49点測距だ。検出輝度範囲は-4~18EV。AF速度は0.07秒だ。G9 PROの0.04秒には届かないが、G9 PROのアルゴリズムを採用したことで、連写時の追従性が向上した。ストリートでは十分高いレベルのAFと言える。

しかも空間認識AF(DFDテクノロジー)も採用されているので、一瞬のチャンスにも強い。

またパナソニック製以外のマイクロフォーサーズレンズでも、DFDテクノロジーの一部を活用した高い精度の測距が可能。マウントが共通のマイクロフォーサーズのメリットが感じられるAFシステムだ。

手ブレ補正

手ブレ補正は、ボディ内手ブレ補正機構を搭載。光学手ブレ補正機構搭載のレンズと組み合わせれば、ボディ側5軸、レンズ側2軸のDual I.S.が可能になる。

手ブレ補正効果は4段分。夕暮れや夜間、屋内の撮影に威力を発揮する。スナップは表現によってはブレも作品のテイストになるが、通常は手ブレを抑えて撮りたいもの。Dual I.S.はありがたい存在だ。

また、マウントアダプターでオールドレンズを装着して楽しみたい人にも、ボディ内手ブレ補正が搭載されているのは嬉しい。

連写性能

連写はメカシャッターも電子シャッターも最高約9コマ/秒(AFS、フォーカス固定)。画素数はアップしながら、LUMIX GX7 Mark IIの約8コマ/秒より高速化された。なおAFC(フォーカス追従)では約6コマ/秒になる。

もちろんLUMIXお馴染みの4Kフォトも搭載。4K動画機能を活用し、約800万画素で30コマ/秒の連写が可能だ。また4Kフォトを応用し、撮影後にピント位置が変更できるフォーカスセレクトや、深い被写界深度が得られるフォーカス合成も可能となっている。

ファインダー

EVFは、約276万ドット相当のLCD。35mm判換算すると倍率0.7倍、0.38型だ。ここまではLUMIX GX7 Mark IIと同じだが、LUMIX GX7 Mark IIIでは初代GX7で採用されていた90度チルト機構が復活した。

LUMIX GX7 Mark IIIはボディサイズがLUMIX GX7 Mark IIからわずかに大きくなっているが、それでもファインダーの性能は落とさずにチルト機構が搭載できたのは驚きだ。

もちろん背面モニターで撮影しても構わないが、明るい屋外や被写体に集中したい場合はファインダーを覗いた方が撮りやすい。ローアングルだけでなく、ウエストレベルで構えても、通常のアイレベルとは異なる視点の写真が楽しめる。

オプションの大型アイカップ、DMW-EC5を装着すると、遮光性がさらにアップする

液晶モニター

LUMIX GX7 Mark IIに続き、チルト式の背面モニターを採用。解像度が約104万ドットから約124万ドットにアップし、視認性がより高くなっている。

当然タッチパネルなので、AF測距点のタッチ選択やピンチイン/ピンチアウト、タッチシャッターなどが可能。ファインダーを覗きながらモニターを指でなぞって測距点を移動させるタッチパッドAFも備えている。

動画機能

動画は上位機のような4K/60pではなく、最大4K/30pだが、フルHDでは60pも可能というもの。GH5/GH5sのAFアルゴリズムを採用し、動画撮影時の被写体追従性が向上した。

本格的な動画撮影よりもストリートフォトを重視したモデルだが、旅先などで綺麗な動画も撮影したい状況に対応できる。

通信機能

スマートフォンの連携が強化されたのもLUMIX GX7 Mark IIIの特徴だ。これまでのWi-Fiによる接続だけでなく、Bluetoothによるペアリングも可能になった。

省電力のBluetoothでスマートフォンと常時接続し、撮影すると転送速度が速いWi-Fiに自動で切り替わる。BluetoothとWi-Fiの両方のメリットを活かしたシステムだ。これにより、撮影してすぐSNSなどへのアップロードがスムーズにできる。

またリモート撮影でも常時接続のBluetoothはタイムラグが少なく、快適な撮影が可能だ。

端子類

端子は上がHDMI(micro HDMI TypeD)、下がUSB(Micro B)。USBケーブルによる充電も可能だ。

端子カバーは開けるとカバーが一瞬で本体内に隠れるのがユニーク。カバーに邪魔されることなくケーブルの接続ができる。

記録メディアスロット

SDカードスロットは、バッテリー室側に装備する。SDカードはUHS-I対応だが、UHS-IIには対応していないのが残念だ。UHS-IIだとカードスロットが大きくなるので、コンパクトなボディには収まらなかったのかもしれない。

とはいえ、高速連写や4K動画を頻繁に使う人がターゲットのカメラではないので、書き込みが遅いと感じることはないだろう。なお4K動画撮影やRAWで高速連写をする場合は、UHSスピードクラス3(U3)のSDカードがおすすめだ。

バッテリー

バッテリーは7.2Vのバッテリーパックが付属。USBケーブルとACアダプターも同梱され、本体のUSB端子から充電する。

バッテリーはCIPA規格で背面モニター時は約260枚、ファインダー時は約250枚の撮影が可能だ。

まとめ

LUMIX GX7 Mark IIIは、LUMIX GX7 Mark IIのコンパクトなボディを継承しながら、画素数のアップやL.モノクロームDの搭載、チルト式のファインダーや背面モニター、さらにBluetoohの採用など、機能が大きくアップしたモデルだ。特にモノクロで街のスナップや旅写真を撮りたい人に注目のカメラだと感じた。

実勢価格は本体のみで税込11万円前後、単焦点レンズキットで15万円前後。決して安価とは言えないものの、機能を見れば十分納得だ。

それでは実際にどんな写りをするのか、それは次回の「実写編」でお届けする。

藤井智弘

(ふじいともひろ)1968年、東京生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業。1996年、コニカプラザで写真展「PEOPLE」を開催後フリー写真家になり、カメラ専門誌を中心に活動。公益社団法人日本写真家協会(JPS)会員。