新製品レビュー

FUJIFILM X-T20(外観・機能編)

フラッグシップ機に迫る充実の中身をチェック!

富士フイルムXシリーズはスタイリッシュなレンジファインダーカメラ風スタイルのFUJIFILM X-Pro2と、汎用性とタフネスのセンターファインダースタイルのFUJIFILM X-T2のダブルフラッグシップをラインアップしているが、今回紹介するFUJIFILM X-T20はX-T2の弟分に位置するカメラだ。

だが弟分と書いたものの、X-T20は前モデルのX-T10から大きく進化を遂げ、場面によってはX-T2を凌ぐほどの“汎用性”を手にしたモデルと言えるだろう。

デザイン

デザインはX-T10から大きな変更はなく、平面と曲面のバランスの良いシャープなデザインは個人的にはX-T2よりも好みだ。X-T10とのデザイン上の違いをあえて挙げるとするならば、シルバーモデルの前後コマンドダイヤルが黒からシルバーに変更され、より一層デザインが洗練されている点だ。

重さは383gと非常に軽く、507gのX-T2と比べると明らかに軽量であることが手に持った瞬間にわかる。グリップは小さめでボディの高さも低めのため、握ると小指がはみ出てしまうが、軽量なボディと背面のサムグリップのおかげでグリップ感は悪くない。

ボタン類

ボディ上面に配置されたダイヤル類の豊富さがX-Tシリーズの特徴だ。X-T20のダイヤルは適度な間隔とサイズ感で並んでおり直感的に操作がしやすい。

露出補正ダイヤルは目盛りが切ってあるのは±3EVまで。さらに「C」ポジションに回すと±5EVまでの大胆な露出補正が可能になる。

また、スライドさせるだけで撮影モードを「アドバンストSRオート」に変える「オートモード切替レバー」も前モデルから踏襲。瞬時に設定変更できない場面や、ミラーレス入門者にうれしい仕様だ。

X-T10とのダイヤル・ボタン類の違いはボディ背面右下にあったファンクションボタンがシャッターボタン横にあった動画ボタンの位置へ移動になり、動画ボタンは上面左側のドライブダイヤル内に移動した。ボディ右下のやや押しにくかったボタンが省略されて全体的に押しやすいボタン配置に改善されたかたちだ。

X-T20はX-T2よりもダイヤル類が簡略化はされているが、むしろ良いこともある。ISOダイヤルがないためドライブダイヤルの項目が増え、ブラケットが2つ配置されているなど便利な機能がより使いやすくなっている。

ブラケット1にフィルムシミュレーションブラケット、ブラケット2にホワイトバランスブラケットを登録するのがお気に入りだ。

X-T2との大きな違いは内蔵ストロボを有していることだろう。ファインダー部に内蔵されたポップアップストロボの開口部は、隙間がほとんど見られず実に精巧に作り込まれている。富士フイルムの「スーパーiフラッシュ」は“内蔵ストロボ”と馬鹿にできないほど極めて上手く制御された光をまわしてくれるのでこの搭載はうれしい。

撮像素子

内部ハード面はというと、イメージセンサーにはX-Trans CMOS III、プロセッサにはX-Processor Proを搭載。そう、これはご存知の通りX-T2やX-Pro2に搭載されているものが贅沢にもそのまま使用されているのだ。連写もメカシャッターで約8コマ/秒、電子シャッターでは約14コマ/秒の高速連写を実現している。

有効画素数は6,000×4,000の2,430万画素。X-T10の1,630万画素から約1.5倍の画素数となった。ベイヤーセンサーとは異なるカラーフィルター配列のX-Trans CMOS IIIセンサーはAPS-Cサイズながらも高い解像力と色再現性を持っているため大伸ばしにも期待が持てる。

富士フイルム独自のフィルムシミュレーションはX-Processor Proの搭載により、さらに階調深く鮮やかな写真を描き出すことができるようになった。また、フィルム時代に始まりデジタルではX-Pro2、X-T2に入ったことでさらに多くのカメラマンを魅了しているモノクロのフィルムシミュレーション「ACROS」も楽しむことができる。

新しいセンサーとプロセッサの採用は高感度画質でも大きな恩恵がある。X-T10での常用感度はISO200~6400だったが、X-T20ではISO200~12800となり1段分の高感度化を実現している。小型軽量で手ブレ補正付きのキットレンズ「XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS」とあわせれば暗い室内や夜間でも手持ち撮影にチャレンジできそうだ。

動画性能もX-T2と同じく4K動画に対応している。ACROSやVelviaなどのフィルムシミュレーションを使用した映像を撮影できる。なお、X-T2が採用しているF-Log記録は非対応だ。

AFおよびレスポンス

測距点カバー範囲の広さはミラーレスカメラの大きなメリットの1つだ。X-T20では画面の広範囲をAFポイントとして選択できる。測距点数は通常の91点から最大325点まで増やすことが可能。また像面位相差AFは画面横方向50%、縦方向75%の面積をカバーし高速で高精度のAF動作を可能にしている。

AF-CのモードもX-T2譲りで、被写体の動きや障害物へのピント移動特性などから5種のカスタム設定から選択できる。高速連写時のブラックアウト時間が短縮されたファインダー性能とともに動体撮影がとても快適になっている。

X-T10から個人的にもっともうれしい進化のポイントは、背面液晶が静電式タッチパネルディスプレイになったことだ。タッチ操作を「ショット」に設定しておけば、これまでにないようなスピードでAFポイントの変更&撮影ができる。この点においてはX-T2やX-Pro2以上の速写力があると言っていい。

またタッチパネルのメリットは撮影時だけではなく、画像再生時のピント・ブレの確認作業を極めて快適に行えることだ。再生画面をダブルタップすればピント位置を拡大してくれるし、ピンチアウトすれば拡大率も自由に変更でき、そのままスライドさせれば拡大位置をすばやく移動させられる。これは撮影のスピードアップに非常に役立つ。

EVF

ファインダーは約236万ドットEVFだ。発色と黒の締りが良い有機ELパネルを採用しているので野外でも非常に見やすい。表示タイムラグは0.005秒で像の遅れなどの不自然さは微塵も感じられない。

また電源をONした直後のEVF表示切替スピード(赤外線式アイセンサーによる背面液晶との自動切り替え)はX-T2やX-Pro2よりも早く安定しているように感じた。

通信機能

昨今、デジタルカメラのWi-Fi機能の搭載は当たり前となってきているがX-T20ももちろんぬかりない。フィルムシミュレーションによって撮影時に色が完成しているXシリーズはSNSにも向いていると感じており、Wi-Fi機能は重宝する。

端子類

各種端子は左側面にまとめられている。2.5mm径のマイク/リモートレリーズ端子とHDMIマイクロ端子、マイクロUSB端子を備える。ただしUSBは2.0でUSB3.0には対応していない。

記録メディアスロットとバッテリー室

記録メディアはSDカードでUHS-I対応。バッテリーは4K動画の熱対策が施されたNP-W126Sが付属している(NP-W126も使用可能)。標準撮影枚数は約350枚でX-T10と変わっていないが、高画素センサーと非常に多処理のプロセッサを稼働してなお同じ枚数なのだからなにも文句はない。なお同条件でX-T2は約340枚、X-Pro2は約250枚だ。

まとめ

現在、大手量販店でボディのみ約10万円、18-55レンズキットで約14万円。安い買い物ではないが決して高いとは思わない。なぜなら、X-T2と同等の高画質と高速性能に加え、さらに小さく軽いボディ、タッチシャッター、内蔵ストロボ、そしてどんな人でも撮影を楽しめる豊富なオート機能とまさに全部入りだからだ。

こんなに魅力的なカメラを僕はX-T2の下位のカメラだとはまったく思わない。ただの入門用カメラでもなければサブカメラでもなく、X-T20はまさしくメインカメラになりえる可能性を秘めたカメラだ。

今浦友喜

(いまうらゆうき) 1986年埼玉県生まれ。風景写真家。雑誌『風景写真』の編集を経てフリーランスになる。日本各地の自然風景、生き物の姿を精力的に撮影。雑誌への執筆や写真講師として活動している。

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