ミニレポート
SIGMA fp用にFotodioxのEFマウントアダプターを購入
シグマ純正と迷ったポイントや、実際のAF動作を紹介
2020年8月18日 00:00
「世界最小・最軽量」と聞くと、どんなものでもつい欲しくなってしまうのが人情というものだが、シグマが2019年10月に発売した「SIGMA fp」は、フルサイズセンサーを搭載したミラーレスカメラとして世界最小・最軽量だ。これはもう買うしかない。
……と、思っていたのだが、結局ズルズルと購入をためらっていたのは、マウントがガラリと変わってしまうからだ。それまで使っていたのはマイクロフォーサーズ。SIGMA fpはLマウントで、もちろん互換性はない。しかし、キャッシュレス決済で購入金額の5%を還元するという国策がこの6月で終了するのを前に、思わず手が伸びてしまったのだった。勢い余った、とも言う。
購入したのはSIGMA 45mm F2.8 DG DN | Contemporaryとのセット。Lマウントは初なので、当然手元にほかのレンズはない。続くレンズはどうするかと悩んでいるのだが、いかんせん、そうそう手が出るものではない。
そこでふと思ったのが、さらに以前に使っていたキヤノンEFマウントレンズの存在だ。まずはマウントアダプターで手持ちのレンズを使いつつ、少しずつ買い足していこう……そう考えたわけだ。
どのアダプターを選ぶか
マウントアダプターは、Lマウント向けにはシグマ自身が「MC-21」を用意している。ただ、公式には「シグマ製EFマウントレンズ」用のマウントコンバーターとされている。基本的に使えないという理由はないと思うのだが、サポート面での制限もあるだろう。店頭で試用した限りはキヤノンのEFマウントレンズも使えるようだし、APS-C用のEF-Sレンズが使えたという声もある。
そうした中、FotodioxがEFレンズ用のマウントアダプター「EF-LT-FSN」を発表。EF/EF-Sレンズへの対応を公式に謳っている点に加え、実売でもMC-21より少し安いということから、これを試してみることにして購入。ちなみに、日本向けには焦点工房が販売をしている。
さて、というわけでEF-LT-FSNである。木箱に収められたボディは、全て金属製でしっかりとしている。EFマウントレンズの装着は、レンズによっては硬めだが、ボディ側は滑らかに装着できる。しっかりと装着でき、精度も問題ない印象で、全体的に不安はない。長さは29mm、重さは119gとなかなかのサイズ。EFレンズに装着すると、それだけで大きく重くなってしまうが、しばらくは目をつぶっておきたい。
アダプターには赤と白の指標があり、EFマウントとEF-Sマウントのレンズにそれぞれ対応していることが明示されている。もちろん、手元のレンズで試した限りはどちらも装着できた。電子接点も備えており、AFや手ブレ補正の動作にも対応している。
手元にはキヤノン製とシグマ製のレンズしかなかったため、タムロンなどのほかのレンズメーカーのレンズは試せていない。Fotodioxによれば古いキヤノンレンズ、シグマやタムロン、トキナーといったサードパーティ製のレンズでAFが効かない場合があるほか、いくつかの問題があるレンズもあるという。
まあ、もともとメインの撮影機材でバリバリと使いこなそう、というスタンスではなかったため、ある程度は許容できる。仕事用ではなくプライベート用のつもりでもあり、それほど過酷な環境での撮影は想定していないので、MFでもいい、という程度の考えだ。
手持ちレンズのAF動作は?
実際にレンズを装着して試してみる。まずは一番期待している「EF17-40mm F4L USM」。超広角から標準域までカバーし、標準レンズの45mm F2.8と2本で組み合わせた際の相性もいい。AFは小刻みに動いてピント合わせが行われるが、静かな方だろう。速くもないが、十分許容範囲。一昔前(EOS 40Dあたり)のキヤノンの一眼レフカメラでのライブビューよりも快適だ。
カメラ側の機能も問題なさそう。個人的な操作カスタマイズで、AF合焦時にピント位置を自動拡大、OKボタンでAFエリア拡大を割り当てているが、どちらも動作した。カメラのダイヤルを回せば絞り値も変化する。AFだけでなくMFももちろん問題なし。ただ、AF-Cに関しては微妙。レンズによっては頻繁にウォブリングが発生する。
筆者の使い方としてはAF-Cをそれほど重視しておらず、それよりも顔認識AFや瞳AFがきちんと動作するのを嬉しく感じている。合焦速度は決して速くはないが便利だ。今年に入って話題となったオンライン会議用のWebカメラとする用途でも、きちんと瞳を追うようだ。もちろん、AF速度はそれなりに遅い。とはいえ画角を変えながらWebカメラとして使えるのは素直に嬉しい。
レンズ側の機能としては、フォーカスモードスイッチをMFに切り替えてのMF操作、光学式の手ブレ補正も問題なく動作する。試した限りは、EF24-105mm F4L IS USM、17-70mm F2.8-4 DC MACRO OS HSM、EF70-200mm F2.8L IS II USMの3本のレンズで動作した。
EF-Sレンズも問題なし。試したのはEF-S10-22mm F3.5-4.5 USM。SIGMA fpには「DCクロップ」機能もあり、APS-Cセンサー向けに設計したレンズを使用するモードを搭載している。EF-Sレンズの場合、そのままだとAPS-Cのイメージサークル外にケラレが発生するので、このDCクロップを「入」にすれば中央部分がクロップされてケラレが解消する。「17-70mm F2.8-4 DC MACRO OS HSM / DC MACRO HSM」や「30mm F1.4 EX DC HSM / EX DC」のような、シグマ製のDCレンズも同様だ。ただし、どのレンズでもDCクロップの「オート」は動作しなかった。そのため、手動で「入」に設定する必要がある。
いずれにしても撮影後の画像を見てみると、Exifにきちんとレンズ名が記録されている。これも嬉しい点だ。
ちなみに、EF-LT-FSNにはFnボタンがあり、これを押しながらSIGMA fpの電源スイッチをオンにすると、電子接点が無効の状態で起動する。AF、絞り、Exifへの記録といった情報伝達はなくなるが、そのままでは動作しないレンズがあった場合は試してみるといいだろう。
実際に撮影してみた
SIGMA fp+Fotodiox EF-LT-FSNを使って、手持ちのEFレンズで実際に撮影してみた。また、あくまで参考として、手元に残していたEOSデジタル一眼レフ(15年前のEOS 30D)でも同じ場所から撮影してみた。
総括
というわけで、EFマウントレンズを装着してSIGMA fpでAF撮影する、という動作自体にはほとんど問題を感じなかった。
まあ、とはいえ、全体的にMC-21でも大きな違いはなさそうで、さらに実売価格でもそれほど差がないため、どちらを選ぶかは難しいところではある。全体的に、ピント精度が心配な部分で、AFが抜けてしまう例も少なくない。拡大機能を使えば撮影前にピントが合っているかは分かるので、致命的ではないと思うが、基本的には風景などの撮影はMFを駆使する方が安全かもしれない。それを除けば、これといった不具合は今のところないため、選択肢としては問題なさそうだ。
ところで、個人的にはSIGMA fpはできるだけコンパクトに使いたいと思っている。マイクロフォーサーズで「LUMIX DMC-GM1」を購入したときと同じ感覚だ。毎日持ち歩くようなスナップカメラとして、コンパクトで使いやすい画角のレンズが欲しいが、当然すぐには買えない。
しかし、レンズ代金が貯まるまでレンズを諦めていては、撮れる写真も撮れなくなってしまう。そんな時に役立つのが、こうしたマウントアダプターだろう。SIGMA fpで70-200mm F2.8クラスのレンズを使いたいかといわれると微妙だが、いざという時でも手持ちのレンズである程度の代用ができるというのは心強い。しばらくはレンズキットの45mm F2.8と愛蔵のEFレンズを使い分ける日々が続きそうだ。