フィルター活用術
中西敏貴さんが解説!マルミ光機「マグネットホルダーM100」で風景写真をアップデートしよう
2020年12月25日 07:00
角型フィルターはフィルムカメラ時代から存在する撮影アイテムですが、ここ数年続いているSNSへの投稿熱や絶景写真への志向もあり、安定した注目を集めています。それらを受け、毎月のように新製品が世に出ていることも理由でしょう。
今年7月に公開した「フィルター活用術」で紹介したマルミ光機「マグネットホルダーM100」もそのひとつです。
【フィルター活用術】中西敏貴さんによる“GNDフィルター”3タイプの作品を紹介!
https://dc.watch.impress.co.jp/docs/review/marumi/1256504.html
「マグネットホルダーM100」は、これまではレンズ前に装着したフィルターホルダーのスリットに差し込むことで装着していた角型フィルターを、フィルターホルダー前面にマグネットで取り付け可能にしたものです。これにより、角型フィルターを使用することが今までより格段に容易になりました。
このページでは前回に続き、中西さんがマルミ光機の「マグネットM100ホルダー」を使って撮影した作品を紹介します。角型フィルターを使うことでどんな作品を撮ることができるのか、じっくり鑑賞いただければと思います。(編集部)
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改めて…マグネットM100ホルダーの何が新しいのか
ありのままの自然を写すだけではなく、自分が思い描いた光景を描き出すために活用しているのが角形フィルター。大きな輝度差をカバーしたり、目には見えない時間を長秒露光で描いたりとその応用範囲は広い。
刻々と変化する光に対応するためには素早いフィルター交換が必要だが、従来の差し込み式タイプの場合、抜き差しに少し手間取ることが多く面倒なこともあった。
「マグネットM100ホルダー」を使って思うのは、フィルターをスリットに沿わせて挿入するという一手間がないだけで、操作性は劇的に向上すること。フィルターをケースから取り出しホルダーに合わせるだけでピタリと貼り付いてくれるため、グローブなどをすることの多い冬にはさらに利便性が向上する。重ねて使用する場合にもフィルターとフィルターに隙間ができないため、光の乱反射も起きにくようだ。
GND(グラデーションND)の種類
角型フィルターの主役といえばGND(グラデーションND)フィルターだ。前回と同じく、基本的なGNDの使用例を紹介しよう。
一般的な丸型フィルターでNDフィルターを使ったことがある方は多いだろう。このNDフィルターの減光効果を、画面の約半分に適用するのがGNDフィルターの役割だ。GNDフィルターを上下にずらしたり上下を反転させることで、減光効果を与える場所を調整できる。
GNDフィルターのハード、ソフトそれぞれの違いは、減光効果が生じる境目のなだらかさ。リーバスはハードと同じようななだらかさで、かつ端に行くに従い濃度が薄くなる。
そしてこの冬、「マグネットM100ホルダー」システムに新しくセンターGNDフィルターが加わった。これはフィルター中央帯の濃度を特に高めたタイプになる。
GNDフィルターはシーンによって種類を使い分けることをお勧めしたい。効果を得たい場所の濃度や割合によって、ハード、ソフト、リバースを使い分けてみよう。
ハードGNDフィルター
ハードGNDフィルターは、輝度差の大きなシーンかつ、境目の比較的はっきりした場面で使うといいだろう。特に朝夕の太陽をフレーム内に入れたようなシーンでは最も効果を発揮する。
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満開のジャガイモの花を夕日が輝かせているシーン。空の部分の露出を抑えるためにハードGNDをセットして輝度差を整えた。
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ソフトGNDフィルター
一般的に、減光効果のあるエリアとそうでないエリアとの境目をなだらかにして、目立たなくしたい場合に使うのがソフトGNDフィルターだ。
また、太陽が高くなった時間帯で、空が白っぽくなってしまうような場面ではトーンを引き出すためにを使ってみるといいだろう。
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日の出からしばらく経ち、地上には十分な光が回っているが、まだ逆光のために空がやや白く飛び気味だった。そこでソフトGNDフィルターを装着し濃度を引き出すことにした。
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新製品のセンターGNDフィルターを試す
「マグネットM100ホルダー」システムに新しく追加された「100×150 Center GND」は、ハード、ソフト、リバースのいずれとも性格の異なるGNDフィルターだ。減光範囲を中央帯の狭いエリアに限定し、減光範囲とそれ以外の境目はハードGNDフィルターの仕様に近く比較的はっきりとしたキャラクターになっている。もちろんマグネット式でフィルターホルダーにワンタッチで取り付けられる。
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雪原に沈みゆく夕日を狙う。太陽の周りの色を引き出しつつ雪原や上部のトーンは暗くしたくなかったため、センターGNDフィルターを使い露出を整えた。
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PLフィルターも使える
「マグネットM100ホルダー」システムでは、GNDフィルターと併用してNDフィルターやPLフィルターが使用可能だ。
NDフィルターは角型で提供され、GNDフィルターと同様に取り付けられる。
一方PLフィルターは「マグネットM100ホルダー」専用の「Circular PL for M100」が利用できる。PLフィルターは角型ではなく丸型で、「マグネットM100ホルダー」に備え付けられているホルダーリングに装着する。
GNDフィルターに組み合わせてNDフィルターやPLフィルターが使えるとなると、反射をコントロールしつつ、露光時間や輝度差の調整ができるのでさらに表現の幅が広がるだろう。
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雲のメリハリを引き出すためにPL効果によってコントラストを高めつつ、長秒露光をおこなうために高濃度NDを同時に装着して流れ行く雲を描いた。
キャリングポーチについて
角型フィルターは1枚だけ持っていればいいというものではなく、複数枚合わせて使うことで最大の効果を発揮する。そのため、何枚かを同時に収納できるフィルターケースは必ず用意したいところ。マルミ光機では「マグネットM100ホルダー」システムのために純正キャリングポーチを用意しているので試してみた。
フィルターを引き出す際にストラップを引くだけでフィルターが出てくる方式はとても便利。使い手のことをよく考えた設計に感心する。6枚も収納できるので大抵のシーンには事足りるだろう。
まとめ
改めてマグネット式の優位性を実感したテストとなった。固定力に若干の不安を覚える方もいるかもしれないが、実際に使用中、落下する事もなく問題は感じられなかった。
それよりも、着脱や微調整のしやすさという利便性に魅力を感じざるを得ない。画質に関しても申し分のない性能で、逆光のシーンでも躊躇なく使うことができた。
以前より身近なアイテムとなった角型フィルター。とはいえ角型フィルターの中でもGNDフィルターの効果は使ってみないとわかりづらい。また、撮影前の煩雑なセッティングのため、角型フィルターから遠ざかっていた方もいるだろう。「マグネットM100ホルダー」はそうした使いにくさを軽減してくれるので、ぜひ挑戦してみてはいかがだろうか。
協力:マルミ光機株式会社