Leofoto FIELD REPORT 三脚のある美しい写真

ワンタッチで雲台の交換が完了……“クイックリンクセット”で2つの撮影技法を三脚1本でカバー

茂手木秀行さんが語る「G4+QS-60」

北極星を中心におおぐま座、カシオペア座を配した北天全景。赤道儀を使い60秒露光とした。14mmでこの露光なら、星も点に地上もシャープに写し止めることができる
D810A / AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED / 14mm / マニュアル露出(F2.8、60秒) / ISO 3200 / WB:白熱電球 / 赤道儀を使用

撮影ジャンルや撮影の意図に合わせ、プロは三脚・雲台を吟味します。近年は三脚・雲台も多様化し、様々なニーズをフォローできるようになりました。

この連載ではプロの写真家に、使用しているレオフォトブランドの三脚・雲台について紹介いただいています。

今回寄稿いただいた茂手木秀行さんには、ギア雲台のG4と、素早い雲台の着脱を実現する「QS-60」について説明してもらいました。

茂手木秀行

東京都生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、マガジンハウスに入社して各種雑誌の撮影を担当。2010年よりフリーランスとなる。1990年よりデジタルフォトに取り組み黎明期からデジタルでの表現を取り入れた制作を続ける。星景写真は少年期から40年を越える趣味であり、ライフワークとなっている

※本企画はデジタルカメラマガジン2022年3月号より転載・加筆したものです。


◇   ◇   ◇

星景写真の撮影手法は大別すると2つだ。星を止めて点として写すか、星の光跡を線として写すかだ。

どちらも合成をして作る手法は今は簡単だが、写真は時間の記録であり、撮影者が存在した時間と空間、そしてそこから得られた感情の記録である。それゆえに単一の露光によって得られた画像であることを大切にしたいと常に考えている。

そこから紐解かれる撮影技法は、星を点として写す場合には赤道儀を使って星の動きを追いかけること、そして星の光跡を写すには長い露光をすることだ。そのどちらにも頑丈な三脚が必要なことは言うまでもない。

西の海に光跡を引くカシオペア座とペルセウス座。星は1時間で15°動く。この写真では40分露光したので10°だ。40分間の長時間露光で構図をキープし続けるために、頑丈で固定力の強い三脚・雲台が必要だ
D500 / AF-S DX NIKKOR 16-80mm f/2.8-4E ED VR / 16mm(24mm相当) / マニュアル露出(F5.6、2,373秒) / ISO 400 / WB:白熱電球

しかしながら、赤道儀を使う場合とただ長時間露光をする場合とでは要求する雲台の仕様が違う。赤道儀を使う場合は極軸合わせといって、赤道儀の回転軸を正確に北極星に向ける作業が必要なのだが、その際はギア雲台G4のような微動機構のある雲台でないと手早く合わせることができない。自由雲台などではかえって時間がかかってしまう作業なのだ。

一方、長時間露光をする場合は固定力が強く、それでいて自由な方向に向けられる自由雲台が良い。赤道儀にはそうした要求を満たす、専用の三脚もあるので解決策は2本の三脚を使えば良いということになる。

しかしそれはすなわち、移動に制約を受けるということだ。よく晴れた一晩のうちに場所を変えながら、そしてその場所で感じた感情を点で写すか、光跡で写すか、その技法の差異によって表現するからこそ写真なのである。

移動の制約から逃れるための良い解決策は、三脚は1本、雲台を2種というのが1つの結論だ。だが、雲台の付け替えには落下のリスクと相応の時間が必要だ。暗闇の中でネジ込み作業をしなければならないからだ。

そこでイチオシはクイックリンクセットQS-60だ。ほぼワンタッチで雲台の付け替えが完了する。こうしたアクセサリーがあることで、システムの広がりが一段と大きくなるものだ。自分の撮影分野から要求される仕様にしっかりと合わせ込めることがシステムであることの魅力である。

G4+QS-60
ギア雲台のG4にクイックリンクセットQS-60を組み合わせる。QS-60により、ワンタッチで別の雲台に切り替えることが可能だ
G4
価格:8万300円(税込)/高さ:108mm/ベース径:60mm/素材:超々ジュラルミン/付属プレート:NP-60/カメラ取付ネジ:1/4インチ(細ネジ)/三脚取り付けネジ:3/8インチ(太ネジ)/耐荷重:20kg/質量:690g

QS-60
価格:13,750円(税込)/直径:60mm/材質:アルミニウム合金/プレート側取付ネジ:3/8インチ(太ネジ)/ベース側ネジ穴:3/8インチ(太ネジ)/質量:106g

レオフォトの精度の高さ、仕上げの良さはヨーロッパ製の三脚にも比肩し得るものであることはよく知られるようになってきたが、こうしたシステマティックな広がりにおいては一歩先んじていることも知っておいてほしい。このような製品を開発し続ける姿勢そのものが「表現」と言えるものであるからだ。

西の空に傾くおうし座とプレアデス。赤道儀で星の動きを止め、地上はブレでシャープさが失われないうちに露光を切り上げる。21mm相当なので30秒程度が頃合いだ
D500 / AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED / 14mm(21mm相当) / マニュアル露出(F2.8、30秒) / ISO 5000 / WB:白熱電球 / 赤道儀を使用


◇   ◇   ◇

雲台を素早く着脱できるクイックリンクシステム

G4はギアのかみ合わせでカメラを動かすので重いカメラや望遠でも精密にフレーミングできるのが特徴。一般的な雲台にありがちな固定ノブの締め込み時に動いてしまう現象がないことも大きなメリットだ。回転軸は4つだがカメラの前後左右の傾き調整が微動ギア付きとなっている。

QS-60はワンタッチで雲台と三脚を脱着できる便利アイテムで雲台を速やかに交換できる。

雲台をワンタッチで着脱可能に

QS-60はバヨネットを大型化したような構造でベースを三脚に、ツメが付いたプレートを雲台に取り付ける。ツメを合わせてリングを回せば固定できる。

QS-60はベースとプレートで構成される
三脚に装着したベースと雲台に装着したプレートのツメを合わせるように取り付ける
ベース側のリングを回転させるとロックされ、強固に雲台が固定される

雲台交換が撮影を確実にする

撮影方法によって最適な雲台は異なる。最適な雲台に迅速に交換できることは撮影の確実性は上がり、何より撮影が楽しくなるのだ。また雲台を別にすることで収納も楽になる。

ギア雲台G4+QS-60装着例。赤道儀を使用する際にギア雲台を使用している
自由雲台LH-55+QS-60装着例。通常の長時間露光時などは自由雲台が便利だ

制作協力:株式会社ワイドトレード

1962年東京生まれ。日本大学写真学科卒。ドローン空撮を含めて広告撮影の仕事の傍ら、風景・星景写真の作品制作を続けている。