交換レンズレビュー
フォクトレンダーHeliar 40mm F2.8
マウントアダプターと組み合わせて使うマニアックなレンズ
Reported by澤村徹(2014/10/10 08:00)
CP+2014のコシナのブースに一風変わったレンズが参考展示してあった。ニッケルショートエルマーのような丈の短い沈胴式で、奇妙なことにフォーカシングレバーがない。聞けば同社のVM-Eクローズフォーカスアダプターと併用して使うのだと言う。
見るからにプロトタイプっぽい外観ゆえに、本当に製品化されるのか微妙な印象を抱いた記憶がある。あのときのレンズが、ほぼそのままの姿で登場した。それが「ヘリアー40mm F2.8」である。
本製品はVM-Eクローズフォーカスアダプター専用レンズだ。VMマウント(ライカM互換)を採用しているがピントリングはなく、VM-Eクローズフォーカスアダプター側でピント調整する。コシナはすでにVM-Eクローズフォーカスアダプター専用のS/C→VMアダプターを発売しており、ヘリアー40mm F2.8はVM-Eクローズフォーカスアダプターを中核するレンズシステムの第2弾というわけだ。
本レンズはクラシカルなデザインが特徴的だ。ライカのエルマー5cm F3.5やズマール5cm F2のような、沈胴スタイルを採用している。エルマーやズマールは、ミラーレス機に付けて沈胴すると内部干渉してしまう。ヘリアー40mm F2.8はそうした心配がなく、沈胴してスマートなスタイルで携行可能だ。
外観面ではもうひとつ特徴がある。それはレンズフードだ。本製品はドーム型とストレート型、ふたつのレンズフードが付属する。実用面ではひとつあれば十分だが、あえてふたつ付属するところにこの製品の趣味性の高さをうかがい知ることができる。特にドーム型フードは通好みな人に人気のあるスタイルで、本製品を購入する動機のひとつになりそうだ。
操作性の良さも本レンズの利点のひとつだ。特に沈胴式のエルマー5cm F3.5と比較すると、本レンズの使い勝手の良さが浮き彫りになる。古いエルマーは絞りレバーがレンズ前面にあり、その都度フロント面を覗き込まなくてはならない。さらにフォーカシングレバーを動かすとレンズ鏡胴自体が回転するため、指標位置がぐるぐるとまわってしまう。
その点ヘリアー40mm F2.8は、レンズ先端が絞りリングになっているものの、刻印は側面にあり、速やかに絞り値を確認して調整できる。また、ピント調整はVM-Eクローズフォーカスアダプターが担っているため、レンズ鏡胴は回転しない。常にレンズ指標は真上を向いている。
沈胴式スタイルでありながら、絞り操作とピント操作を完全に独立した作業として行えるのだ。沈胴レンズの使いづらさを上手に解消した製品である。
レンズ構成は3群5枚で、1枚の非球面レンズを採用する。トリプレットタイプの発展形である3群5枚を、現代の技術で再構成したという。描写は堅実でありながらも硬くなりすぎず、オールドレンズファンが好みそうな描き方だ。
また、開放近辺ではほどよく周辺光量が落ち、ノスタルジックな描写も楽しめる。ボケ味はなだらかで、逆光性能も優秀だ。このあたりは現行レンズだけあって、破綻のない描写を見せてくれる。