交換レンズレビュー
NIKKOR Z 600mm f/6.3 VR S
PFレンズ採用で小型軽量 望遠単焦点レンズを手軽に
2023年11月13日 07:00
ニコン Z マウントの超望遠レンズ「NIKKOR Z 600mm f/6.3 VR S」(以下600mm f/6.3)が、10月27日発売された。直販価格は79万2,000円(税込)。
製品名に“600mm”を含むZマウントレンズとしては、単焦点レンズの「NIKKOR Z 600mm f/4 TC VR S」と、ズームレンズの「NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR」がある。ここに本レンズが加わったことになる。
本レンズの特徴はまず、高度な光学性能を追求したS-Lineのひとつであること。そしてPF(位相フレネル)レンズの採用で小型・軽量な鏡筒を実現したことである。
外観・仕様
レンズ構成は14群21枚(EDレンズ2枚、SRレンズ1枚、PFレンズ1枚を含む)。防塵・防滴設計で、外形寸法は約φ106.5mm×278mm、質量は三脚座なしで約1,390gとなっている。
レンズ先端から装備を見ていこう。フード取り付け部→フィルター取り付け部(95mm径)→広目の滑り止めラバー→L-Fn2ボタン(上下左右に4か所)という配置。その後はコントロールリング→フォーカスリング→三脚座および止めネジ→L-Fnボタン・スイッチ類と続き、最後はレンズマウントに至る。
そしてスイッチ部の逆サイドには、レンズにピント位置を登録するときに使うメモリーセットボタンがある。
スイッチ部は上からオートフォーカス/マニュアルフォーカスの切り替えスイッチ、FULL(∞~4m)/∞〜10mのフォーカス制限切り換えスイッチとなっている。
三脚座は取り外し可能なので、手持ち撮影で少しでも軽くしたい時には外して使うことができる。三脚座を含めた質量は約1,470g。
レンズ最前面には汚れが付着しても簡単に落とせるフッ素コートが施されている。
テレコンバーターTC-1.4×とTC-2.0×にも対応。TC-1.4×を装着すると840mm F9、TC-2.0×装着すると1,200mm F13の超望遠レンズとして撮影できる。
軽々と扱える取り回しの良さ
「Z 9」に「600mm f/6.3」を取り付けて実写してきた。
先端部が軽く、レンズ重心部がカメラ側に寄っているためかバランスが良い。そのため手持ちで撮る際、飛行機が見えてからとっさに構えてもファインダー内に収めやすかった。
600mmの超望遠レンズでありながらも、「NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S」(約1,360g)ぐらいの重量感。飛行機をファインダー内で追いやすく、取り回しの良さを感じた。
S-Lineの優れた描写力
絞り開放から画面の隅々までシャープな写りだ。周辺光量の低下を感じたら、カメラ内メニューのヴィネットコントロールで補正が可能。今回の撮影ではすべて「標準」に設定している。
AFエリアモードはオートエリアAFを使用。フォーカスポイントが鳩の瞳をピンポイントで検出して、赤い目やくちばしのディテールがしっかり写し出された。
優れたAF追従性能
高速で向かってくる新幹線を約20コマ/秒の高速連写で撮影した。フォーカスモードはコンティニュアスAF、AFエリアモードは3D-トラッキングに設定している。金網越しに撮影しているが、「Z 9」と「600mm f/6.3」の組み合わせは、狙ったポイントを迷いなく追尾してピントを合わせ続けてくれた。
シンクロVR対応の手ブレ補正
本レンズの手ブレ補正効果は5.5段分、ボディ内手ブレ補正と合わせたシンクロVRは、対応カメラ(Z 9、Z 8、Z f)で6段分とされている。
手ブレ補正のON/OFFはボディ側でコントロールする。手ブレ補正モードとして「ノーマル」「スポーツ」「手ブレ補正なし」が選択可能。今回はすべて「スポーツ」設定で撮影している。
シャッタースピード1/15秒までは手ブレを止められる確率が高かった。それ以下は手ブレが多くなり、結果的に私が手ブレを止められる限界は1/6秒だった。
レンズとカメラの重心バランスが良いため、手ブレ補正をONにした流し撮りでも、レンズを平行に振る動きがしやすかった。ただし、夜間の滑走路など肉眼でも確認しづらい低照度下では、AFが迷ってピントが合わないこともあった。
フレア/ゴースト
太陽をバックに写したトンボ。ナノクリスタルコートの実力なのか、強い逆光でもゴーストやフレアは気にならなかった。
夜間タキシング中の飛行機を撮影。衝突防止の赤いフラッシュ灯が光ると、光源の周りに丸いフレアが発生する。PFレンズの特性上、画面内に強い光が入るとこのようなPFフレアと呼ばれるものが発生する。
DXクロップで野鳥撮影
軽量レンズなので、EVFをのぞいたまま鳥が飛び立つ瞬間を待ち続けるのも容易だった。なかなか近寄れない野鳥をもっと大きく撮りたい場合はテレコンバーターを使うか、撮像素子範囲をDXクロップにすると大きくとらえることができる。
「Z 9」の場合、DXクロップ(約1.5倍)にしても約1,936万画素(5,392×3,592ピクセル)を確保しているため、十分に画質の良さが感じられた。900mm相当の画角になるが、手ブレ補正の効果もあり飛んでいる鳥も追いかけやすかった。
撮影を終えて
S-Lineレンズに名を連ねるとあって、画質は優れている。「Z 9」の実力もあるが、感度を上げてもシャープでディテールが際立っている。また、F6.3の開放F値に不安を覚えるかもしれないが、「Z 9」の高感度画質が良いこともあり、そこまでデメリットに感じなかった。
さらに600mmの超望遠レンズなのに小型で軽量。すべて手持ちで撮影できた。この軽さと取り回しの良さは、今回撮影した野鳥、飛行機、鉄道はもちろん、モータースポーツ、動物撮影にも強い味方になるだろう。画質と取り回しの良さで、気軽に持ち出せる超望遠レンズだった。