交換レンズレビュー

SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG DN OS|Contemporary

富士フイルムユーザーに福音 あの「ライトバズーカ」がXマウントに参戦

シグマの「100-400mm F5-6.3 DG DN OS|Contemporary」は、35mmフルサイズのイメージのセンサーに対応したミラーレスカメラ用の超望遠ズームレンズ。2020年7月にライカLマウント用およびソニーEマウント用が発売されましたが、この度、新たに富士フイルムXマウント用が追加されました。

一眼レフカメラ用の同スペックレンズ「100-400mm F5-6.3 DG OS HSM|Contemporary」の頃から、「ライトバズーカ」と呼ばれ人気だったところ、ミラーレスカメラ版が登場し、さらにAPS-CサイズのXマウントに対応したものです。

Xマウント用ということで、この場合の焦点距離は35mm判換算で150-600mm相当になります。遠くの被写体を少しでも大きく写したい、野鳥やスポーツの撮影で活躍してくれそうです。

外観・操作性

外形寸法はφ86.0×199.5mm、質量は1,135gとなっています。対応するマウントによって微妙な差はありますが、焦点距離400mmまでカバーする超望遠ズームとしては驚きの小ささと軽さです。「ライトバズーカ」の異名は伊達ではありません。

インナーフォーカスではありませんので、テレ側にズームすると内筒がニョキニョキ伸びますが、そもそも軽いレンズですので大きくバランスを崩すようなことはありません。

専用のレンズフード「LH770-05」が付属していて、このレンズフードを掴んでズームを直進的に伸縮させられます。ズームリングを廻す一般的な方法と合わせてシグマでは「デュアルアクションズーム」と名付けており、従来のライトバズーカ愛用者にとってはお馴染みではないでしょうか。

直進式ズームですと移動中に鏡筒が伸長してしまい、ウッカリなにかにぶつけてしまう心配がありますが、ワイド端で伸縮を固定できる「ズームロックスイッチ」が備えられているので安心です。

スイッチ類は上から、「AFファンクション設定スイッチ」「フォーカスリミッター」「AFファンクションボタン」「OS(手ブレ補正機能)スイッチ」と、コンパクトなレンズボディながら非常に豪華です。

これらのうち「AFファンクション設定スイッチ」と「AFファンクションボタン」は、富士フイルムXマウント用に最適化されており、撮影時に「AFファンクションボタン」を押した場合の「AFファンクション設定スイッチ」の機能を選択できるようになっています。

「100-400mm」と書かれた鏡筒のゴムリングを外すと、別売りの三脚座を装着できます。「せっかくの小型レンズなのに三脚座が要るのか?」と思われるかもしれませんが、カメラボディの負担を考えると必要な時はやはり欲しくなるものです。カメラボディの三脚ネジ穴が、他のアクセサリーに占領されている時なども大変便利です。

作例

16群22枚のレンズ構成には、特殊低分散ガラスのFLDガラス1枚とSLD4枚を適切に配置し、諸収差を良好に補正しているとのことです。35mmフルサイズ版の本レンズ「100-400mm F5-6.3 DG DN OS」(ライカLマウントおよびソニーEマウント)でも、小型レンズとは思えない高い解像性能が好評でしたが、APS-CサイズのXマウント版では画角が狭くなる分さらに画質に磨きがかかったように感じられます。

X-H2S/SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG DN OS|Contemporary/400mm(600mm相当)/絞り優先AE(1/350秒、F11、−1.0EV)/ISO 400

ただ、手持ち撮影であまり手ブレ補正を効かせ過ぎると、やや周辺の解像が甘くなる印象がありました。軽快なハンドリングが特徴のライトバズーカではありますが、風景撮影など緻密な描写を求める場合は、やはり三脚を使用した方が安全だと思います。

しかし、本レンズのような超望遠ズームレンズでは、実際のところ、被写体を中心か少し離れたところに配置し、ピント面以外は大きくぼかしたい場合が多いのではないかと思います。そうなると周辺の解像性能はそれほど厳密でなくても良いことになります。


枝に止まるカワセミを1/100秒のスローシャッターで手持ち撮影しましたが、十分に納得できる高画質が得られました。約4段分の補正効果があるとされる手ブレ補正機構(OS)も本当に良く効いてくれるので、本レンズの持ち味を生かした手もち撮影が楽しくなります。

X-H2S/SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG DN OS|Contemporary/400mm(600mm相当)/絞り優先AE(1/100秒、F6.3、−0.7EV)/ISO 400

テレ端400mm(600mm相当)だけでなく、ワイド端100mm(150mm相当)の描写性能も万全です。ワイド端といっても十分に望遠域に入るので、大きなボケの中に小さなミソハギの花をクッキリと浮き上がらせることができました。ボケ味も柔らかくて綺麗です。

X-H2S/SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG DN OS|Contemporary/100mm(150mm相当)/絞り優先AE(1/60秒、F5.6、+1.3EV)/ISO 160

オニバスの花が咲いていました。イイ感じの構図となるようにズーミングしながら選んだ焦点距離は155mm(233mm相当)。テレ端やワイド端だけでなく、ズーム全域で安定した高画質が得られるところは、本レンズの長所のひとつと言えるでしょう。

X-H2S/SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG DN OS|Contemporary/155mm(233mm相当)/絞り優先AE(1/60秒、F5.6、+1.3EV)/ISO 160

AF駆動には、高速かつ高精度なステッピングモーターが採用されています。野鳥撮影でのいわゆる「飛びもの」を撮ってみましたが、かなりの高確率でミユビシギの瞳を正確に捉えてくれました(X-H2Sの「被写体検出設定」を「鳥」にして撮影)。

もちろん全コマでジャスピン、というわけにはいきませんが、実戦では十分に通用するといった印象。レンズのクラスを考えると、これ以上は、ボディ側のAF性能や設定の問題が影響してくるのではないかと思います。

X-H2S/SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG DN OS|Contemporary/400mm(600mm相当)/絞り優先AE(1/3,200秒、F6.3、−0.3EV)/ISO 1000

カワセミの飛び立ちを捉えました。テレ端の開放F値がやや暗めなため、日中晴天下でもないと、どうしても高いISO感度に頼ることになります。しかし、そうした場合でもAFは変わらず速く正確に動作してくれました。森林下など、さらに暗い条件ではさすがに厳しいこともありましたが、そうした場合でもいわゆる「とまりもの」でしたら問題なく撮影できています。こうしたところは、いかに本レンズを使いこなしていくかという話になるのでしょう。

X-H2S/SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG DN OS|Contemporary/400mm(600mm相当)/絞り優先AE(1/2,000秒、F6.3、−0.7EV)/ISO 2500

テレ端400mm(600mm相当)で撮影倍率は1:4.1(0.24倍)と最大になり、この時の最短撮影距離は160cmになります。ワーキングディスタンスを長く保ちながら、被写体を大きく写せるので小動物の撮影などではとても重宝します。超望遠ならではの強烈な圧縮効果もプラスされるところは、本レンズならではの醍醐味と言えるでしょう。

X-H2S/SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG DN OS|Contemporary/400mm(600mm相当)/絞り優先AE(1/100秒、F6.3、±0.0EV)/ISO 160

まとめ

超望遠ズームレンズながらも小さく軽い「ライトバズーカ」に、富士フイルムXマウント用が追加された、というのが今回一番の話題です。おかげで、Xマウントユーザーも600mm相当の超望遠世界を気軽に楽しめるようになりました。

X-H2S/SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG DN OS|Contemporary/280.4mm(421mm相当)/絞り優先AE(1/3,200秒、F6.3、−0.7EV)/ISO 640

先に、ライカLマウント用やソニーEマウント用が発売されていましたので、すでにご存じの方も多いかと思いますが、描写性能は高く、使い勝手は抜群によいレンズです。野生生物やスポーツ、ネイチャーといった分野に最適なレンズですので、4,000万画素の「X-T5」や「X-H2」、または積層型センサーを採用した「X-H2S」などといった、富士フイルムのXシリーズカメラボディでこのレンズが使えるようになったことはとても喜ばしく感じます。

富士フイルムのXシリーズには、比較的よく似たスペックの超望遠ズームとして「XF100-400mmF4.5-5.6 R LM OIS WR」がありますが、サイズや開放F値の違い、はたまた価格を考えると、おのずとターゲットユーザーも異なるでしょう。より気軽に楽しく、でも本格的な超望遠の世界を味わいたいという人には、まさにうって付けのレンズではないでしょうか。

曽根原昇

(そねはら のぼる)信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌等で執筆もしている。写真展に「イスタンブルの壁のなか」(オリンパスギャラリー)など。