交換レンズレビュー

FE 16-35mm F2.8 GM II

小型・軽量化した全域F2.8の超広角ズームレンズ

ソニーの超広角ズームレンズ「FE 16-35mm F2.8 GM」が第2世代に切り替わり、「FE 16-35mm F2.8 GM II」が発売されました。大柄なイメージのあるF2.8通しのズームレンズですが、本機は従来機よりも約20%軽量化され、全長も約1cm短くなっています。

外観・機能

外観上の特徴は、まず大幅に小型化したことでしょう。発売済みの「FE 24-70mm F2.8 GM II」「FE 70-200mm F2.8 GM OSS II」とあわせ、いわゆる大三元レンズのすべてが小型化されました。

左がII型のFE 16-35mm F2.8 GM II、右が従来機のFE 16-35mm F2.8 GM

また、前モデルのI型にはなかった絞りリングがついています。絞りはこの絞りリングで設定するほか、アイリスロックスイッチをAに合わせれば、カメラ側でダイヤル操作することもできます。

AFは静かでスムーズ。近接撮影時もピント合わせで迷うことがほとんどなく、MFで撮影しなければ合わないようなシーンはありませんでした。MF時のピントリングのフィーリングも滑らか。接写時の細かなピント合わせがしやすく、高品質なEVFもあって、ピントの山を掴みやすかったです。

本体にあわせてレンズフードも小さくなりました。

作例

ズーム全域で中央部の画質はシャープ。被写体が近距離から中距離の場合、広角側で周辺で歪んだような流れが見られますが、超広角レンズとして考えると、比較的自然な写りといえます。色収差の補正も問題ありません。

広角端16mmで撮影した藤棚です。画角が広いため、下から見上げたときの広がりがあるので、画面に迫力が出ますね。これくらいの距離の被写体だと画面の隅は流れたように感じますが、逆光でもあまり色収差が感じられず良好に補正されていると思います。

α7R V/FE 16-35mm F2.8 GM II/16mm/絞り優先AE(1/30秒、F8.0、+1.0EV)/ISO 640

I型よりも近接撮影能力が高まり、被写体に近づいて遠近感をつけた表現ができるのも魅力のひとつです。最短撮影距離はズーム全域で0.22m。広角ズームなのに、ここまで寄れるのかと驚くことでしょう。開放F2.8ということで、被写体に寄った時のボケもそれなりに大きく満足できます。

ワイド側でバラに迫りました。16mmでここまで寄れるのかという感覚が私には新鮮でした。広角特有の遠近感を活かしながらのクローズアップは、花が生き生きとした雰囲気に写ります。

α7R V/FE 16-35mm F2.8 GM II/17mm/絞り優先AE(1/320秒、F5.6、+1.0EV)/ISO 100

望遠端35mmで撮影しました。ケーキの表面の艶を感じる仕上がりです。ピントを合わせた部分(ナッツのあたり)はシャープ感があります。広角ズームレンズとはいえ容易に寄れる上、絞り開放で撮影すると極めて被写界深度が浅くなります。

α7R V/FE 16-35mm F2.8 GM II/35mm/絞り優先AE(1/60秒、F2.8、+1.7EV)/ISO 100

広角端16mmで撮影。隅に建物があるのでその写りをチェックしてみましょう。広角なので歪みはしますが、F8まで絞っているので結構シャープに写っていますね。超広角は広がりを出せるので空や海を入れた風景を撮る時に欲しくなります。

α7R V/FE 16-35mm F2.8 GM II/16mm/絞り優先AE(1/320秒、F8.0、+0.3EV)/ISO 100

中央のジョウロにピントを合わせていますが、金属的な質感がシャープに描写されています。壁面のつぶつぶも細やかな描写。I型よりも小型軽量化されたことで持ち運びしやすく、街スナップも気軽に楽しめるようになりました。

α7R V/FE 16-35mm F2.8 GM II/35mm/絞り優先AE(1/160秒、F5.6、+0.3EV)/ISO 100

まとめ

改めて強調したいのは、なんといっても前モデルから小型・軽量化されたこと。大きさ・重さを気にしてズーム全域F4の広角ズームレンズを選ぶ方も多いでしょうが、このレンズなら思い切ってF2.8通しにチャレンジしてみても悪くないでしょう。

焦点距離16mmのワイド感は自然風景、街風景ともに欲しい画角ですし、最短撮影距離の短さから広角特有の遠近感を活かした花やスナップにも使えます。もちろんF2.8通しなのでボケ表現も作りやすい。今回の撮影はこのレンズ1本だけを持って出かけたのですが、いろいろな撮り方ができるので楽しかったです。

吉住志穂

1979年東京生まれ。高校入学後から本格的に撮影を始める。2001年日本写真芸術専門学校を卒業後、写真家の竹内敏信氏に師事。自然の「こころ」をテーマに、主に花のクローズアップを撮影している。2016年には和紙にプリントし、掛軸に仕立てた展示「花時間」を開催し、好評を博す。また各地での講演会や写真誌での執筆を行う。公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員。