交換レンズレビュー

TAMRON 70-180mm F/2.8 Di III VC VXD G2

第2世代に進化 サイズ控え目な大口径望遠ズームレンズ

タムロン「70-180mm F/2.8 Di III VC VXD G2」は、ソニーEマウント対応の望遠ズームレンズです。第2世代を意味する「G2」が名称末尾に付されていることからも分かるように、2020年5月に発売された「70-180mm F/2.8 Di III VXD」の後継モデルにあたります。

クラス最小最軽量を誇るサイズ感はそのままに、光学設計を一新するとともに、新たに手ブレ補正機構が搭載されました。

外観・機能

本レンズ「70-180mm F/2.8 Di III VC VXD G2」の長さは156.5mmで、質量が855gとなっています。前モデル「70-180mm F/2.8 Di III VXD」の長さは149mmで、質量が810gでしたので、比べてみれば大きく重くなっていることが分かります。

とはいっても、本レンズは前モデルでは非搭載だった手ブレ補正機構を搭載していますので、それを考えれば今回のサイズと質量の増加は非常にわずかに抑えられていると言ってよいと思います。事実、タムロンは「手ブレ補正機構搭載フルサイズミラーレス用大口径F2.8望遠ズームレンズにおいて」クラス最小・最軽量を謳っています。

テレ端にズームするに従い内筒が伸長しますが、伸びる長さはわずかですので、使用上不便を感じるようなことはありませんでした。

レンズ鏡筒左側面には「カスタムスイッチ」と「フォーカスセットボタン」が縦並びに搭載されています。「カスタムスイッチ」には、それぞれ用意された好みの機能を割り当てることができます。前モデルにはスイッチやボタン類が搭載されていませんでしたので、ここは新型になった進化を分かりやすく感じられるところです。

その「カスタムスイッチ」に機能を割り当てることができるのが、鏡筒基部に設けられたUSB Type-Cのコネクターポートになります。

無料でダウンロードできる「TAMRON Lens Utility」をPCまたはスマートフォンなどの端末に、USBケーブルで接続することで、「カスタムスイッチ(1/2/3)」に「カメラボディ機能割り当て」、「フォーカスプリセット」、「A-Bフォーカス」、「フォーカス/絞りリング機能切り替え」などの機能を割り当てられるという仕様です。

TAMRON Lens Utilityで機能割り当てなどの設定が可能

レンズ鏡筒右側には、「ズームロックスイッチ」が備えられており、ズーム位置をワイド端で固定することが可能。移動や収納時などに、意図せず鏡筒が伸長してしまうことを防げるので便利です。

レンズフード「HA065」が同梱されています。

作例(絞り開放での解像力)

ワイド端70mm、絞り開放のF2.8で解像性能を見てみました。四隅でわずかに像が甘くなる部分もありますが、全体的に解像感は高く維持されており、非常に均質性が高く安定した画像を得られています。

カリカリとした写りではありませんが、細かいところまでよく描き分けられており、鮮鋭ながらもどこか優しさを感じるタムロンらしさがあるように思えます。

α7 IV/70-180mm F/2.8 Di III VC VXD G2/70mm/絞り優先AE(1/2,000秒、F2.8、±0.0EV)/ISO 100

つづいてテレ端180mm、絞り開放F2.8の画像です。焦点距離180mmで絞りF2.8と浅い被写界深度から外れた背景ビル群を別とすれば、ワイド端時よりかなり四隅の像の甘さも軽減されています。絞り開放でこの描写でしたら、大変優秀な解像性能と言って問題ないかと思います。

α7 IV/70-180mm F/2.8 Di III VC VXD G2/180mm/絞り優先AE(1/1,250秒、F2.8、±0.0EV)/ISO 100

光学性能を一新したとのことですが、確かにF2.8通しの望遠ズームレンズとしては非常にレベルの高い解像性能といえるでしょう。ワイド端では四隅にやや甘さが残りますが、それも1段絞ればほとんど解消されてしまう程度のことです。こうした解像性能の高さは、暗いシーンで平面的な被写体を撮ることもある風景撮影などで威力を発揮してくれることと思います。

作例(ポートレート撮影)

今回は、大口径望遠ズームレンズでの利用も多いポートレートの撮影をしてみました。

ワイド端70mmでの撮影です。少し絞ってF5.6で撮影したことで、画面全体の描写はさらに安定しました。絞ってもカリカリするようなことはなく、ポートレートに適した柔らかさが維持されているところが好印象です。

α7 IV/70-180mm F/2.8 Di III VC VXD G2/70mm/絞り優先AE(1/160秒、F5.6、−0.3EV)/ISO 400

少しズームして焦点距離100mm前後(98mm)での撮影です。1/50秒と、手持ちで動きながらの撮影でしたので、手ブレが心配になるシャッター速度でしたが、ブレずに綺麗に写すことができました。ボディ側にも手ブレ補正機構があるとはいえ、やはりレンズ内に光学式手ブレ補正機構が搭載されたことで、いざというときの安心感が高くなりました。

α7 IV/70-180mm F/2.8 Di III VC VXD G2/98mm/絞り優先AE(1/50秒、F2.8、+0.7EV)/ISO 100

さらにズームして焦点距離150mm前後(148mm)での撮影。背景の形が残る程度にぼかそうと、絞りをF4にしています。上の作例を撮っている時から、前後のボケ味が綺麗なことは認識していましたが、絞って撮っても美しさは変わりませんでした。柔らかく自然で望遠レンズを使う醍醐味を感じさせてくれます。

α7 IV/70-180mm F/2.8 Di III VC VXD G2/148mm/絞り優先AE(1/80秒、F4.0、+0.7EV)/ISO 100

同じく焦点距離150mm前後(159mm)での撮影。今回のポートレート撮影は、すべてボディ側の被写体検出機能である「瞳AF」で撮影しています。正確に人物の瞳を捕捉しつづけてくれるので、ピントの心配をせずに構図や露出の調整に専念できます。前モデルもリニアモーター機構VXDを2基搭載して非常に高速高精度なAFが可能でしたが、本レンズのAF性能はそれをさらに上回っている印象です。

α7 IV/70-180mm F/2.8 Di III VC VXD G2/159mm/絞り優先AE(1/640秒、F4.0、±0.0EV)/ISO 400

テレ端180mmでの撮影です。180mmともなると被写界深度は相応に浅くなるため、独特の印象的なポートレートになります。被写体を大きく浮かび上がらせたいときに最適ですね。大口径望遠ズームレンズをここまで手軽に扱えるのは、小型軽量な本レンズならではの特徴といえるでしょう。しかも光学式手ブレ補正搭載の安心感。

α7 IV/70-180mm F/2.8 Di III VC VXD G2/180mm/絞り優先AE(1/500秒、F2.8、±0.0EV)/ISO 400

作例(最短撮影距離付近)

前モデル「70-180mm F/2.8 Di III VXD」は、ズーム全域で最短撮影距離が0.85mとなっており、大口径望遠ズームレンズとしてはなかなか高い撮影倍率でした。

テレ端180mmでの最大撮影倍率は1:4.6(約0.22倍)でしたが、本レンズでは最短撮影距離こそ変わらないものの、最大撮影倍率は1:4.7(約0.21倍)と少しだけ下がっています。とはいっても、本当に少しだけですのでテレ端での近接撮影性能はほぼ同等と考えて問題ないと思います。

α7 IV/70-180mm F/2.8 Di III VC VXD G2/180mm/絞り優先AE(1/1,250秒、F2.8、−0.7EV)/ISO 400

大きく進化したのはワイド端70mmでの最短撮影距離がAF時でも0.3mに短縮され、最大撮影倍率も1:2.6(約0.38倍)と大幅に大きく写せるようになったことです。

α7 IV/70-180mm F/2.8 Di III VC VXD G2/70mm/絞り優先AE(1/1,000秒、F2.8、−0.3EV)/ISO 400

また、前モデルはワイド端でフォーカスモードをMFにした場合に限って、の最短撮影距離が0.27mとなり、最大で1:2(0.5倍)のハーフマクロ撮影が可能になる機能がありましたが、本レンズでは特にそうした特殊な機能は設定されていないようです。

ただ、実際に本レンズをMFにして使うと、AF時よりワイド端での最短撮影距離がいくらか短くなることが分かります。撮影倍率も少し大きくなりますので、少しでも大きく写したいときには試してみるのも良いでしょう。

α7 IV/70-180mm F/2.8 Di III VC VXD G2/70mm/絞り優先AE(1/1,000秒、F2.8、−0.3EV)/ISO 400

まとめ

第2世代に進化した本レンズを試写していて素直に感じたことは、とてもフレキシブルに使える取り回しの良さでした。わずかに大きくなったとはいっても、クラス最小・最軽量の謳い文句は伊達ではありません。

α7 IV/70-180mm F/2.8 Di III VC VXD G2/99mm/絞り優先AE(1/8,000秒、F2.8、−0.3EV)/ISO 100

わずかに大きくなったのは、光学式手ブレ補正機構を新搭載したためかと思われますが、手ブレ補正による安心感がプラスされたことを考えると、逆に使い勝手は良くなったと感じました。「フォーカスセットボタン」や「カスタムスイッチ」が装備されたことも、操作性の向上を大きく助けています。

なにより、ワイド端70mmでの最短撮影距離が0.3mに短縮されたことが、個人的には嬉しいところ。AFでテンポよく次々に撮影したいときなど、実際に使ってみると、この進化には大きなメリットを感じます。

あらゆる面で前モデルから大きく進化した本レンズ。いわゆる大三元の一角を担うのに十分すぎるほど高いポテンシャルがあるレンズです。

モデル:ユキ

曽根原昇

(そねはら のぼる)信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌等で執筆もしている。写真展に「イスタンブルの壁のなか」(オリンパスギャラリー)など。