交換レンズレビュー

SIGMA 17mm F4 DG DN | Contemporary

手のひらにのる超広角レンズ 高品位な外装・操作感も魅力

シグマが4月21日、Iシリーズに属する新レンズを発売した。「SIGMA 17mm F4 DG DN | Contemporary」と「SIGMA 50mm F2 DG DN | Contemporary」だ。高い工作精度と充実した使用感を誇る同シリーズもこれで9本を数えることとなった。

今回はこのうち、超広角プライムレンズ「SIGMA 17mm F4 DG DN | Contemporary」をインプレッションしたい。ソニーEマウントとLマウント版が用意されている。

特徴・サイズ感

「SIGMA 17mm F4 DG DN | Contemporary」は小さくて軽い。第一印象でいうと「SIGMA fp」と同時に発表された「SIGMA 45mm F2.8 DG DN | Contemporary」と似たサイズ感である。

外観寸法はφ64.0×48.8mmで重量は225gと、常にカメラに装着しておける感じがいい。今回使用した小型フルサイズ機ソニー「α7C」にもピッタリであった。気軽に超広角スナップ撮影を楽しむことが可能である。

α7Cとの組み合わせ例

気になる光学系は、フルサイズミラーレス機に最適化された設計になっている。SLDガラス2枚、非球面レンズ3枚を採用し、前玉だけでなくセンサーに一番近い後玉にも非球面レンズを配することにより、外形寸法を抑制しながら各種収差を抑えることに成功している。

超広角レンズというと前玉が大きく湾曲した「出目金」レンズを想像するが、このレンズはフィルター径φ55mmで、ねじ込み式フロントフィルターの装着が可能な点もポイントが高い。

また最短撮影距離が12cmというところも特徴だ。被写体に肉薄し、超広角レンズならではのパース感を出した演出ができるのである。

シグマのIシリーズといえば存在感のある金属製外装で名高い。切削アルミニウムによるレンズ外装はヒンヤリとした質感と高い剛性感、耐久性を誇る。本レンズもそのシリーズ伝統を受け継ぎ、美しく高品位な佇まいを有している。メタル製レンズフードの造形は惚れ惚れするほどである。

操作感

使用感も上々だ。節度感のある絞りリングはもちろん、ON/OFFしやすいフォーカス切り替えスイッチもなど、つい動かしてみたくなってしまう。

ユニークなムービーで話題を呼んだマグネット式メタルキャップももちろん付属している。

作例

今回はこのソニー製フルサイズミラーレスカメラ「α7C」に装着して撮影した。とても軽快で持ち運びに苦もなく、あちこちをブラブラと歩いて撮影を楽しむことができた。


河川敷にある井戸のポンプに迫った。超広角の単焦点レンズ、かつ開放値F4という本製品だが、被写体に寄ることによってワイド感を出しながら背景をぼかすことが可能だ。ピント面のシャープさがシグマレンズらしい。

α7C/SIGMA 17mm F4 DG DN | Contemporary/絞り優先AE(1/800秒・F4.0・+0.3EV)/ISO 100

グランドのスコアボードにも接近してみた。スカッとしたヌケ感と優しいボケ味がいい。オートフォーカスのスピードも良好だ。ステッピングモーターを採用しているので動作音も静か。「e」の字にスッと合焦した。ムービー撮影でも安心して使用できそうだ。

α7C/SIGMA 17mm F4 DG DN | Contemporary/絞り優先AE(1/800秒・F4.0・+0.3EV)/ISO 100

山あいにある店の看板をあおって撮影。木漏れ日に当たるそれをメリハリ豊かに、ディテール感高くこのレンズは写しとってくれた。ハイライト部のトーンとシャドウ部の粘り感もよく、17mmという超広角レンズのワイド感を出すことができた。

α7C/SIGMA 17mm F4 DG DN | Contemporary/絞り優先AE(1/125秒・F4.0・-0.3EV)/ISO 100

寂れたドライブイン的なところにある自動販売機たち。手前の「¥120」ボタンにフォーカスしてF4でシャッターを切った。後ボケはもちろん前ボケも自然で優しく、積極的にボケを楽しめるレンズだということを実感した。

α7C/SIGMA 17mm F4 DG DN | Contemporary/絞り優先AE(1/250秒・F4.0・+0.3EV)/ISO 100

渓谷の流れを橋の上からワイド感が出るように見下ろして撮影した。グッとF11に絞ったが、飛沫含めて濡れた岩の解像感も高くとても満足した写りになった。画面の四隅も良好な描写で、このような風景から建築、ドキュメンタリー撮影で活躍しそうなレンズだと思った。

α7C/SIGMA 17mm F4 DG DN | Contemporary/絞り優先AE(1/250秒・F11.0・±0.0EV)/ISO 100

「17mm」という非日常的な画角では、太陽や照明などの強烈な点光源がフレーム内に入ってしまうことが多い。だいたいの場合フレアやゴーストに悩まされるのだが、このレンズにその心配はない。シグマの対策チーム、通称「ゴーストバスターズ」が徹底的に検証してレンズ設計を行っているためだ。そのおかげで川べりに立つ新緑とさわやかな日射しをスッキリとした印象で撮影できた。

α7C/SIGMA 17mm F4 DG DN | Contemporary/絞り優先AE(1/320秒・F8.0・±0.3EV)/ISO 100

そろそろゴールデンウィークだ。ちょうどその直前に発売される本レンズは、きっと全国各地で多くの鯉のぼりを青空とともに写しとることだろう。「カチカチ」とIシリーズならではの絞りリング操作とともにクリーンな描写を堪能してほしいと思う。

α7C/SIGMA 17mm F4 DG DN | Contemporary/絞り優先AE(1/200秒・F8.0・±1.7EV)/ISO 100

鎮座している蒸気機関車を真正面から狙った。銘板部はもとより周囲の経年変化を感じさせるその様を、「SIGMA 17mm F4 DG DN | Contemporary」は確実にセンサーへと届けてくれた。軽量コンパクトなので撮影でアチコチをガシガシ歩いても疲れ知らずなのがうれしい。

α7C/SIGMA 17mm F4 DG DN | Contemporary/絞り優先AE(1/125秒・F5.6・-0.7EV)/ISO 100

まとめ

非日常的な「17mm」という画角を、常にカメラに装着して日常的なものにしてくれた「SIGMA 17mm F4 DG DN | Contemporary」。

このレンズはシグマIシリーズ特有のビルドクオリティと操作感、逆光に強いという高い描写力、そして軽くて小さいというサイズ感、三拍子揃った希有な超広角レンズだと言えるだろう。24-70mmなど一般的な標準ズームレンズよりもうちょっとワイド感が欲しい、というフォトグラファーに試してもらいたいレンズに仕上がっている。

1966年神奈川県生まれ。新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。雑誌、広告、Web、ストックフォト、ムービー、執筆、セミナー、コンサルティングなどで活躍中。有限会社サスラウ代表。著書にはiPhoneで撮影した写真集「iPhonegrapherー写真を撮り、歩き続けるための80の言葉(雷鳥社)」、「iPhone フォトグラフィックメソッド(翔泳社)」などがある。公式サイト:http://www.sasurau.com