ライカレンズの美学

LEICA SUMMICRON-TL F2/23mm ASPH.

35mm好きにお勧めの高性能レンズ

ライカレンズの魅力をお伝えする本連載。今月はライカTLやライカCL用のAPS-Cフォーマットモデル用単焦点レンズ、SUMMICRON-TL F2/23mm ASPH.を取り上げよう。

本レンズは2014年5月、Tシリーズのデビューと同時に登場。当初は「SUMMICRON-T」銘であったが、2015年にライカSLが登場すると、同じライカLバヨネットマウントのライカSL用フルサイズ対応レンズと明確に区別するためAPS-C用レンズはその後「TLレンズ」と呼ぶようになり、本レンズも「SUMMICRON-TL」に改称された経緯がある。レンズそのものはまったく同じである。

APS-Cサイズで23mmという実焦点距離は、35mmフルサイズ換算では35mm相当となる。フィルター径は52mm(ライカの呼称ではE52)、重さはレンズのみ154g、付属フード込みで186gで、どうしても大きくなりがちなデジタル時代のレンズとしては小型軽量な設計になっている。レンズ構成は6群9枚で、もっとも撮像素子に近い後玉の両面が非球面となっている。

最短撮影距離は35cmだが、面白いのは絞り優先AEもしくはマニュアル露出で絞りをF2開放に設定していても、撮影距離が50cmより短くなると、それに応じて絞りがF2.2→F2.5→F2.8と自動的に絞り込まれる「マクロモード」と呼ばれる仕組みになっていることだ(近接に伴って実効F値が低下するのではなく、物理的に絞り込まれる)。近距離になるほど増える収差に対応するためと思われるが、ライカらしい真面目な機能といえるだろう。なおインナーフォーカスなのでピント合わせに伴う鏡胴の伸縮はない。

絞り羽根は9枚。写真はF4の状態だが比較的円形に絞られている。

前述したとおり、本レンズはTシリーズのデビューと同時に登場したこともあって、同カメラとの組み合わせではかなり使用したことがあるのだが、今回ライカCLに装着してみると、レンズとボディのマッチングがデザイン的にもサイズ的にも非常にいいことに感動した。鏡胴はフォーカスリングを含めてアルミ製で、小さく軽いレンズだが、質感はライカの名に恥じないハイレベル。この位のサイズのレンズだと総樹脂製で作られてしまうことも珍しくないけれど、手にした時の高品位な感触はやっぱり金属の方が優れていると実感できる。作動にバックラッシュをまったく伴わない、ウルトラスムースに動くフォーカスリングの作り込みも流石だ。

付属のフードは有効長が深く、ライカらしいかなりシッカリとしたもの。
フードを逆付けすると鏡胴がすっぽりとカバーされる。

付属のレンズフードは十分な有効長のある実用性の高いもので、他のTLレンズと同様にフード本体は樹脂製だが、基部のみ金属製になっている。フード有効長はレンズ鏡胴と同じくらいあるので、逆付けするとレンズケースのような体裁となってコンパクトに収まる。

画角的に肉眼で見た印象に近く、パースの掛かり方も穏やかなので使いやすい。ライカCL / ISO100 / F5.6 / 1/640秒 / WB:オート
絞り開放で撮影。前ボケ、後ボケ共に非常に素直な描写。ピントの立ち上がりも見事。ライカCL / ISO100 / F2.0 / 1/4,000秒 / WB:オート
キレのある写りは被写体を選ばない。遠景の解像感も驚くほど高い。ライカCL / ISO100 / F5.6 / 1/250秒 / WB:オート
解像感が高いのはもちろん、画面全体の均質性もすこぶる優秀だ。ライカCL / ISO100 / F8 / 1/500秒 / WB:オート
比較的寄りの撮影だが、解像感は揺るぎない。ライカCL / ISO100 / F8 / 1/125秒 / WB:晴天

写りはデジタル時代の単焦点レンズに求められる解像性能とコントラスト再現、そして耐逆光性能を満たしており、ポートレートのような優しげな被写体から都市景観のようなハードな被写体まで、あらゆる用途で満足できる結果を得られると感じた。よくできた単焦点レンズだけが持つ、クセのないアウトフォーカス描写も魅力的だ。

35mm相当の画角はライカユーザーにとっては50mm標準レンズと並んで定番的な焦点距離であり、それだけに写りに対する期待値はいやが上にも高くなってしまうわけだが、使ってみた感想は期待以上。小型軽量による機動性の高さも含め、完成度の高いレンズと言えるだろう。

広すぎない35mm相当の画角は汎用性が高く、1本でいろいろな被写体に対応できる。ライカCL / ISO100 / F5.6 / 1/500秒 / WB:オート
この日は自転車で海沿いに移動したが、ライカCLを含め小型軽量なので軽快にライドできた。自転車乗りにもお勧めだ。ライカCL / ISO100 / F8 / 1/250秒 / WB:オート
質感描写は高く、木製の枕木と塗装された鉄、そして錆びのディテールを的確に描き分けている。ライカCL / ISO100 / F5.6 / 1/160秒 / WB:オート
コントラストの高い被写体だが、まったく破綻無く描写することができた。ライカCL / ISO100 / F5.6 / 1/400秒 / WB:オート
カーブミラーがかなり反射しているのだが、コントラストの高いヌケのいい写りがキープされている。ライカCL / ISO100 / F8 / 1/250秒 / WB:オート
繊細さと力強さを兼ね備えた、古くからあるズミクロンのイメージに違わない質実剛健な写りだと思う。ライカCL / ISO100 / F8 / 1/125秒 / WB:オート
本文にも書いたが、ライカCLとの組み合わせはデザイン的にもサイズ的にも抜群だ。ライカCL / ISO100 / F8 / 1/125秒 / WB:晴天

協力:ライカカメラジャパン株式会社

河田一規

(かわだ かずのり)1961年、神奈川県横浜市生まれ。結婚式場のスタッフカメラマン、写真家助手を経て1997年よりフリー。雑誌等での人物撮影の他、写真雑誌にハウツー記事、カメラ・レンズのレビュー記事を執筆中。クラカメからデジタルまでカメラなら何でも好き。ライカは80年代後半から愛用し、現在も銀塩・デジタルを問わず撮影に持ち出している。