デジカメアイテム丼

レンズ型センサークリーナー「FUJIN」

本当にゴミがとれるの?使って大丈夫?メーカーに聞いてみた

 ippが8月に発売した、世界初という一眼レフ専用のレンズ形クリーナー「FUJIN」はテレビでも採り上げられるなど大きな話題となっている。弊誌の記事もTwitterで話題を呼び、リツイート数が400に迫る勢いで大きな反響を呼んだ。形のおもしろさもあるが、やはりセンサーのゴミ問題を気にしている人が多いという証でもあろう。

FUJIN。現在はキヤノンEF(EF-S)マウント用のみのラインナップ。価格は税別7,000円

 そこで今回、FUJINを開発した背景や動作の原理を販売元のippに伺った。

渦を作り出してクリーニング効果を上げる

 このクリーナーを簡単に説明すると、本体のファンによって空気を吸い込み、ゴミとともに排気することでセンサークリーニングを行う仕組みだ。

EOS 5D Mark IIに装着したところ

 気になるのは、本当にゴミが取れるのかということだろう。ippによると「ほぼ取れます。先行販売で購入したユーザーの中には全部取れたという人もいます。ただし、ゴミを100%取るのは難しいですね。内部のグリスが付着したものなど、ブロアーでも取れないゴミは取れません」とのこと。

 こう聞くとブロアーと同じなのかと思うが、FUJINでは吸い込む空気がPM2.5も遮断できるフィルターを通った綺麗な空気のため、ブロアーのように空気中のゴミを吸って吹き付ける心配が無い。これがブロアーとの大きな違いといえる。

側面にON/OFFスイッチがある
単4電池×4本で動作する

 つまり、FUJINを使うことでミラーボックス内のホコリを排出できるということだ。そのためippでは、FUJINによる“ゴミ付着の予防”も提案する。

 ブロアーなどでセンサーだけを綺麗にしても、ミラーボックス内にあるホコリがミラー動作で舞い、センサーに付着することがある。FUJINは、ミラーボックス内の空気をかき混ぜてゴミを排出するため、ゴミの再付着が防げるというわけだ。

 そのため、ippではブロアーとの併用も効果的だとする。ブロアーで吹き、最後にFUJINを使うと残ったホコリを排出できるそうだ。

 いま「ミラーボックス内の空気をかき混ぜる」と書いたが、これがクリーニング効果を高めるFUJINのキモの技術になっている。下の動画を見て頂ければわかるとおり、FUJINが吸い込んだ空気は渦となってミラーボックスのホコリを取り、排出する。



【気流を説明するためのデモ。内部で羽根が回転し、渦が発生しているのがわかる】

「敢えてホコリが舞う状態を作り、吸い出すのがFUJINの強みです。ゴミの付着を未然に防ぐということですね」(ipp)。FUJINは、センサークリーナーであると同時に“ミラーボックスクリーナー”と言うことができよう。

 この渦を作る秘密は内部に設けたダクトや風が出る部分のフィン形状がポイントで、試行錯誤を繰り返したという。通常、ファンの風は拡散して弱まってしまうが、渦にすることでクリーニングの効果を高めた。こうしたパーツの形状は微妙なため、EF(EF-S)マウントでは正常に使えるが、EOS Mにマウントアダプターを介してFUJINを装着した場合、想定した効果は得られないのだという。

内部のダクトやフィンの形状も工夫のポイント

 ファンは直径4cmのタイプだが、FUJINのために開発したオリジナルファンとなっている。パソコンなどで使われる同径のファンより風量が多くなるよう羽根の形状などを工夫した。

オリジナルのファンが見える。動作音はさほど大きなものではない

金型メーカーの強みを活かしてコストダウン

 使い方としては、ファンを動作させながら連写する。こうすることで可動部分に着いたゴミを浮かせて排出する。具体的にには1分ほどファンを回す中で、まずセンサー振動によるクリーニング、続いて5秒間程度の連写を2~3セット行うと良いという。シャッター速度は変化した方が効果的とのことで、露出ブラケットで連写するのも良い方法とのこと。



【クリーニングを行ってみた。掛かる時間は1分ほどだ。実際はゴミがより取れやすくするため、マウントを真下に向けると良い】

 FUJINは東京の「スタジオエビス」の備品としても使われているそうだが、使用したプロカメラマンにも好評とのことだ。

サイズは実在のレンズに合わせたわけでは無く、空気の流れを検討した結果、これ以上小さくできないサイズという

 さてFUJINのマウント部分は一見プラスチックに見え、削れてゴミが出るのではと心配する向きもあるかもしれない。実はマウント部は硬質のナイロンを採用しており、通常の使用で削りカスが出ないように配慮してある。

マウント部分は削れにくいよう工夫した

 なお、FUJINのデザインはキヤノンのレンズに形が似ているが、ippでは特許権や意匠権についてはクリアしているとのことだ。

 ところでippは日新精工グループであり、FUJINの製造元は日新精工となっている。日新精工はいわゆる金型屋さんで、今回のFUJINは開発から製品化までグループ内でまかなったとのこと。FUJINは9個の金型を必要とするが、グループ内で調達できたことで製品のコストダウンに繋がったという。「一般的な外注方式ではもっと高価になってたと思います」(ipp)。

パッケージには“Made in Japan”。開発から梱包まで日本で行った

 ippのカメラ好きの社員の考案で開発が始まったというFUJIN。製造で外注が無いため、発案から1年ほどで製品化できたとのことだ。2014年内に2万台の販売を目指している。

検品や梱包はクリーンルームで行っている

 現在はEF(EF-S)マウント用のみだが、遠くないうちにマルチマウント対応モデルも計画しているという。ニコンFマウントやFUJIFILM Xマウントに対応する予定とのことだ。

本誌:武石修